第10話 魔王と最初の失恋
俺が、学校の廊下の窓から外の景色を眺めていると、振り向くとそこにはガイコツの被り物のような物を身に付けていて、マントをまとい悪魔のような角が生えた、魔王が立っていた。
「勇者よ……汝……そなたは、何故人間を助けるのか」
「はあ?」
俺は、突然そんなことを言われてしまったためか、魔王ダグネスローダスの言ってる意味が全く分からなかった。
それは当然だ、いきなりこんな質問投げかけたら誰だって答えられるはずない。
「貴様は……人間を憎んでいるのではないのか?」
「それは、違うぜ……人を信用してないだけだ……」
「何故……信用しないのだ?」
それにしても、何で魔王は俺にこんな無駄な話をしてくるのか分からない、なにか意図でもあるのか……。
それとも、何かとんでもない企みでもあるのだろうか。
「信用したら……最後、裏切られて酷い目に合う。それだけだからな……」
「貴様に何があったのだ?」
俺は、魔王のその問いに嫌な中学の過去を思い出して、必死に答えようとした直後。
ブレイが、現れたためか魔王は魔法を使って姿を消す。
「どうしたの? 平二?」
「何でもない……今日も、魔王に闇に染められた。人でも探しに行こう」
そう言うと、俺は廊下をブレイと一緒に走り、その場を後にして色々な所を巡るが、どこも手がかりはなくその日は終える。
そして、放課後また教室のそばで廊下魔王と出会う。
ブレイは、たまたま用事があったので今回は行動を共にしていなかったが、たとえそこにいたとしても、魔王が姿を現さなかったと思うので、どのみち居ても無駄。
「貴様に、問おう……こちら側に来ないか? 我は、この世界を征服するために、貴様の力が必要だ……」
正直言って、俺はその提案に乗りたかった。
だけど、ブレイ達のために断ることにした。
「断るよ……確かに、俺はこの世界が大嫌いだ……だが……ブレイ達を悲しませたくない……」
「そうか……なら! 他の者に、協力してもらおう……」
魔王は、マントをたなびかせてさっそうと歩いていった。
それから、伊藤、天音、瀬里崎、尾張と皆集まってきたのだが、浮かない顔をしている。
「何だか……嫌な予感がします……」
伊藤は、険しい顔をして魔王の歩いていった方向を見ながらいう、それに影響を受けたのか他の3人も黙って、そちらの方を同じように見ている。
とてもじゃないが、異常な状況だ。
何時もなら、ただ喧嘩して言い争ったりするような関係が、全くそんな行動もとらないでいる……。
「ところで……大城……現愛は、どこにいった……」
「知らないですよ……」
俺は、その尾張の言葉で魔王が言っていた『他の者に協力してもらう』という物が連想はれた。
何だか、とてつもない嫌な予感がした俺は、一人教室へと向かいかけだす。
着いたら、そこにはやはり現愛の姿があったが、顔がうつ向いて暗い表情をしながら立っていた、後ろのカーテンはたなびき、夕日が彼女を薄暗く照らして不気味に演出している。
「私ね……あんたが好きなの……」
「はあ?」
俺は、そんな現愛の意味不明な告白に困惑する。
それは、この雰囲気でそう言うことを言ったことではなく、この女からとても出てきそうにない発言をされたことに。
「大体……現愛が、俺の告白を断ったんじゃないのか!? それが、今頃なんで……」
そうだ、現愛は俺が始めて告白した相手、中一の頃に屋上で好きだと言った……それで、振られた……諦めて別の相手と付き合ったんだ。
それが、何故今になって突然言い始めたのか。
「俺は……現愛! お前に、振られたんだぞ!? それで……あんなことに……」
俺の言葉に、反応したのか顔を上げてこちらを睨み付けて、険しい顔をする。
「分かってる! だけど……好きなのよ……あんたのことが! どうしても、好きで、好きで、たまらないのよ!!」
現愛がそう叫ぶと、周りに黒いオーラのような物が出てくる、やはりもう闇に染められていたのか魔王に。
それから、ブレイと4人の女達がその気配を聞き付けていたのか、ドアから入ってくる。
「これは……どういうことですか!? 大城くん!!」
「……」
俺は、何も答えることはできなかった、いや……答えたくなかった。
あの、嫌な中二の事件を思い出したくなかったから。
「平二……やはり、君は魔王と合っていたんだね……」
「どういうことですか!?」
伊藤は、そう問い詰めるも何も答えなかった俺に、諦めたのかその話をしなくなる。
「もういいですよ……ですけど、この状態をどうにかしてくださいね。あなたの、責任なんですから」
「ああ……」
俺は、手から剣を出現させて構える。
ブレイも、剣を取り出して構えるが、現愛の作った闇の魔物の出す風は、半端じゃないくらい強く立っているのがやっとだ……。
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