第2話 委員長と二次元コンプレックス勇者
俺は、あの後勇者ブレイに魔王が言っていた闇について聞いていた。
それは、心の闇すなわち人の負の感情に反応して、魔物が作られるということ。
つまり、闇が深ければ深いほど強い魔物をあの魔王は産み出せるみたいだ。
「それより……ちょっといいかな?」
深刻そうに、ブレイはこっちを見ながら聞いてくるので、一ファンの俺はその要望に応えてるしかなかった。
「何だよ? 言ってみろよ。俺は、ブレイ達のことなら何でもきくぜ! 何せ、二次元に命をかけてる男だからな!」
その発言に、幼馴染み現愛はドン引きしていたが、俺はそんなことはお構い無しに、堂々とした姿勢で発言する。
「本当に、あんたは変人なんだから! 普通に、こんなこと真に受けるのも可笑しいのよ! その点、分かってるんでしょうね!」
俺は、そんな幼馴染みの暴言にめげずに、さっきブレイが言いそうになっていたことを聞く。
「僕たちが来たのは、別に魔物退治だけではないんだ」
俺は、そのことが分からないから、どういうことなんだよと思った。
だって、ブレイ達は魔王を倒しにきたんだろ、明らかにそれ以外考えられない。
「この世界にも、勇者の力を持つものがいると言うことが分かってね。だから、その人を探すことも目的なんだよ」
「なるほどな……」
俺は、全く信じてはいなかった。
別に、ブレイ達が信用できないわけではない。
どうしても、そのような人物がこの現実世界にいることに、納得がいかないのだから。
こんな、どうしようもない世界に勇者のように強くて、正義感溢れるものがいるわけない!
それは、俺が人との関わりがないとか、地方などから出てないからではなく。
単に、リアルだろうがネットだろうがそのようなものに、該当する人物がいないということだけ。
だから、信じられなかった……。
それだけだ……。
「流石に、ブレイが言ってることでも。俺は、この世界に勇者になれるような人間はいないと思う……」
「何で君は、そう思うの?」
ブレイが、突然答えにくいを質問してきた。
俺は、正直いって応えたいとは思ったが、こたえることは出来ないんだ!
それは、別に答えを知らないとか、言われたら困るということではない。
単純に、そのことを言うと俺は中学の時の嫌な思い出をおもいださなきゃならない。
あの最悪な、一生忘れられないような思い出を……。
本当に、トラウマだ。
「ごめん……それだけはこたえられないんだ……だけど、勇者探しは協力するよ」
「別にいいさ。言いたくないことは、誰にでもあるものだから……それより、勇者を探してくれるのを手伝ってもらえて、良かったよ」
ブレイは、そう言いながらこうかくを上げて微笑む。
その時の笑顔は、何だか俺には眩しすぎた。
まるで、朝日を浴びてる時のような、そんな感覚に襲われる。
そんなこんなで、暫くそのような人物を探すが、全くもって見付からない。
まあ、当然といえば当然で、それだけの手がかりで人探しをするのは到底無理なこと。
その他にも、ブレイに勇者である人の特徴を教えてはみたものの。
体が、神々しく光ってるなどのよく分からないことを言われた為か、半日探しても結局手がかりすら掴めないままだ。
俺は、悩みながら手を顎に当てて考えながら廊下を歩いていると、クラス委員長である
俺は、気付かない振りをして、通りすぎようかと思ったのだが。
何故か、伊藤は俺の方へ向かって歩いてきた。
しかも、そのまま話しかけてくる。
「ところで、大城くんは何でこんなところにいるの?」
その、真面目そうな質問には応えたくない俺は、面倒なのではぐらかす。
「あ~、ちょっと転校生のブレイに、学校の案内をしてたんだよ」
俺は、最もらしい言い訳をして、何とか適当に誤魔化そうとするが、伊藤にはどうやら通じないみたいだ。
「え? さっき、何か悩んでそうに見えたけど? 明らかに、道案内してるように全く見えなかったよ?」
伊藤が言ってることは、もっともだが。
俺は、伊藤と出来るだけ関わりたくない。
それは、決して伊藤が不良とかヤバい人間という理由では決してない。
むしろ、優等生でスクールカースト上位の女で、皆から頼りにされている。
なおかつ、顔も目がパッチリとしていて、二重のうえに鼻が高いといった容姿も完璧な美少女。
その為、クラスの誰もが付き合いたいと思ってる。
ただ、まあ悪いところをしいて上げたら眼鏡をかけてるところくらい。
それも、そういうマニアには人気があるらしいので、そこの界隈では絶大な支持を得ている。
だがしかし、俺にとってそんなことは関係ない!
そういう連中は、不良よりも厄介な存在だからな。
不良は、危険な者の為か皆が関わらなくていいという、理由がつくのからまだいいんだよ……。
だけど、優等生は違う!
自然と、そういう雰囲気を醸し出してきて、俺の大切な二次元の時間を奪っていく。
それに加えて、体力、精神力、好きなものを考える時間も無くなり、自分の人生を台無しにすると言った、クソみたいなオマケもついてくる。
これらのこともあり、伊藤みたいな人種には関わりたくないんだ。
どのみち、俺みたいなオタクとは住む世界が違うし、それにもしも親しくしようものなら、クラス中から、グチグチ言ってきてあることないこと言われながら、ろくでもない噂が流されるだろうな。
そんな厄介ごとは、こっちから願い下げだ!
俺は出来るだけ、伊藤と関わるのだけは避けなくてはならない。
クラスの連中にとっては、良いものかもしれないが、俺とっては厄災と変わらないからな。
「ちょっと、二次元のキャラのことを考えててな~。いや~やっぱり女の子キャラは最高だぜ!」
よし!
これで、俺は伊藤から逃れることができるな。
何せ、こういう話題はスクールカースト上位の連中が一番嫌がると分かっているからな。
俺は、心の中でガッツポーズをしながら、その発言に唖然としている伊藤から離れようと、全速力歩いていくこれなら大丈夫だろう。
そう、その場を後にしようとした瞬間。
伊藤は、俺の方へと顔を向けてきて目線を外さない。
普通は、こんな発言をすると大抵の場合引くのだが、この時の伊藤はどちらかと言うと、ずっとこちらを見てくる。
しかも、不気味な笑顔を向けて。
「二次元キャラ……羨ましい……自由で……」
その笑顔が、とてもじゃないが普段の伊藤の表情とは違う感じがして、嫌な予感がとてつもなくしてくる。
まるで、悪霊に取り憑かれてるみたいな。
そんな感じが……。
伊藤を見ていた俺だったが、ブレイがそんな状況をみてか、いきなり大声をだして鞘から剣を取り出す。
「これは……もう……闇の心で魔物が出来上がってきている……離れて! 平二!!」
ブレイは、いきなり俺を突き飛ばす。
何だと思い、俺は倒れていた体を起こして周りを見て回ると、伊藤の横に黒いオーラのようなものがあり、それはやがて塊なっていく。
そして、そのまま何か生き物ような形に、生成されていく。
「はあ!? どうなってんだ! ブレイこれわ!」
「ごめん……もう、魔王が仕掛けていたみたいた……闇を……」
「そんな……まだ、俺達は勇者を探してすら、いないのに……」
俺は、正直言ってすぐに勇者が見付かると思っていて、油断していた。
こういうものは、大体その前に戦い方などの説明がされるものだからゲームでは。
だけど、俺は何の武器さえも持ってない。
そんな状態で、こんな化け物みたいな奴と戦わなきゃならない。
無理だ……そう思ったとき!
ブレイは、襲ってきた魔物の爪を剣で防ぎ、俺を守ってくれた。
「大丈夫かい……はあ……はあ……」
「どうして……」
「ギチギチ……何でだろうね……何だか、君を助けなきゃいけないような気がするんだ……」
俺は、自分が情けなく思い。
その化け物の、脇腹目掛けて殴り付ける。
「ガハハハ! 無駄だ……もう、諦めて。勇者と一緒に死ぬがいい」
どうやら、この魔物は喋れるらしい。
だが、そんなこと今はどうでもいい……。
俺は、それよりブレイを助けたい……助けなきゃいけない!
そう思いながら、何度も殴るが全く魔物には効いてない、しかも余裕そうな表情も浮かべる。
「クソ! クソ! クソぉぉぉ!!」
「もう止めてくれ! 君の手から血が出ててる!」
ブレイがそう言ってるように、俺の魔物を殴っている右手からは、血が大量に流れていた。
手が真っ赤に染まるぐらい。
「止めてくれ……止めてくれよ!!」
「ガハハハ! 所詮は、ただの人間。我を傷付けることはできんよ!」
そう魔物が言った、その瞬間だった……。
俺の右手が光りだし、その光がやがてブレイが持っているような剣の形に変わっていた。
俺は、そんなあり得ない現象に驚き、動きを止めて事態を把握しようとする。
「はあ!? どうなってんだ……これは……」
「君が、魔王を倒す……伝説の、勇者だったとはね……そんなことはいい! その剣をその魔王に突き刺して!」
俺は、ブレイに言われるがまま、一か八か魔王に向かって剣を突き刺す。
すると、魔物はその攻撃が効いたのか、額に冷や汗をかき苦しそうに、体に突き刺さった剣をおもいっきり手で引き抜く。
しかし、剣を触った手からは煙が出ていて、どうやらヤケドのように赤くなっていて、とても痛そうにしている。
だが、魔物は伊藤の黒いオーラみたいなのを吸収して、すぐに傷が回復していく。
「無駄だ……この女の、心の闇が有る限り。我は、無敵なのだ!」
「どういうことだよ! これで、終わりじゃないのかよ!」
ブレイは、そんな俺の発言を聞くや、その言葉をすぐさま否定する。
更に俺にとっては、最悪な事実を述べる。
「まだ……終わりじゃないよ……だって、この魔物は彼女の闇から作られているからね。あの子の闇が有る限り、無限に体を回復させられるから……」
「そんなの……どうにも、出来ないじゃないか!」
俺は、その現実に落胆してしまい、ひざまずく。
そして、俺達がいる廊下からは、魔王の高笑いだけが響き渡る。
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