俺は二次元コンプレックス

黒金 影輝

第1話 俺はやっぱり二次元が好き!

 俺は、放課後二次元研究会へと、はせさんじた。

 そんな姿を見て、幼馴染みの平田現愛ひらたありあは呆れてため息をついていた。

 その表情からは、何時ものことかと半ばあきらめているそんなふうに思えた。

 だけど、俺にはそんな物は関係ない。

 だって、二次元の女の子以外は全く興味がないからだ。

 それは、決してモテないとか、現実の女の子に相手にされないからつい、二次元に走ってしまったとかではなく。

 単に、リアル女とは反りがあわない、それだけのこと。

 だが、そんな自分を嫌いだと思わないどころか、どこか誇らしいとさえ思えてくる。

 

 そして、二次元研究会の教室へ入り、会議が開かれる。

 お題は、推しの良いところを言い合って、それぞれのキャラクターを知ろうということ。

 当然、俺の推しの信条しんじょうマリアちゃんを知らない物は居ないと思う。

 このキャラは、主人公に優しくて時には励まして、一緒にあらゆる戦いを潜り抜けてきた最高な嫁だ。

 絶対に、皆分かってくれると、そう思ってはいたが何故か一斉に、マリアちゃんの悪いところを言ってきた。


「マリア氏は、天然の度がすぎますぞ」


「それに、戦ってるとは言っても、ほとんど観戦してるだけで何もしない時の方が多いしな」


「後、何故か周りはそんな彼女を褒めていて、何もしないのがイラつきますな~」


 俺の推しキャラ、マリアはボコボコに言い負かされていた。

 だけど、俺はめげない!

 だって、嫁のためならなんでもするから。


「皆は間違ってる! どんなキャラでも、二次元であれば素晴らしいよ!!」


 だが、この言葉は誰の心にも響かなかったのか、教室は静まりかえる。

 この空気は、全体へと充満して重い雰囲気が漂う。

 そして、一人の部員が話題をきりかえて、何故か関係者の俺は、かやのそとの状態で話を進める。

 

 その後、部活は終わり何時ものように、幼馴染みの現愛と帰る。


平二へいじ、何かあったの?」


「いや……別に……何もねぇよ」


 俺は、現愛に無理をして平然を装うが、それは当の本人には見抜かれているらしく。

 妙な、笑顔をこちらに向けてくる。


「まあ、いいんだけど……私とってはあんたのことなんて興味ないしね」


 そう言いながら、何処か気にはなってる現愛は、頬を紅色に赤めて照れながら、指を顔に擦る。

 まあ、この女が俺の事を好きなのは分かってはいる。

 だけど、俺はリアルの女は信用できない。

 特に、中学の頃の同級生で知り合いの女は。



 いつの間にか、気が付くと教室にいたみたいだ。

 何故か、もう他の生徒もいた。

 悪友の、難破恋路なんぱこいじの姿もそこにはあった。

 恋路は、俺の方を見るや声をかけてきた。

 それも、俺が最も興味がないリアルの女の話をしてきたので、とりあえず無視。

 何度も、しつこかったので俺は止めろと言おうとした瞬間。


「皆さん! 僕達は、この世界と別の世界からきました!」


 何だか、聞き覚えがある声をしてるなと、顔をそっちの方へと向けると。

 目の前には、俺が好きなゲームの主人公とヒロインがそこにはいた。

 何が何やら分からない俺は、気でも狂ったのかと思い、頭を抱える。

 目などを擦って、幻覚でも見てるのかと思いもう何度も確認するも、何処からどうみてもその光景は変わらない。

 皆は、そんな俺が見えていないかのように、その不思議な人物達の自己紹介を聞いていた。


「僕は、勇者アリクス・ブレイ!」


「私は、偉大なる戦士! マール・マージン!」


「私は……魔法使い……マゾクル……マーシャ……」


 どう考えても、俺が好きなゲームのキャラ達だ。

 しかも、格好もそのゲームと同じなのに。

 皆は、疑問に思うどころか、一つも突っ込むことなく聞いている。

 それから、放課後になるととりあえず俺は勇者達に声をかける。


「ちょっといいかな?」


 俺は、その勇者達に屋上へ行こうと誘い、階段を登っていく。

 何故か、幼馴染みの現愛も着いてきた。

 正直、邪魔ではあったがどうせ後をつけてくると思い、何も言わず一緒に行動をすることを許した。

 

「君たち……この世界の人達じゃないよね?」


「ああ! そうさ! 僕は、魔法と剣で魔物と戦う世界にいたのさ!」


 俺は、半ば信じられなかったのだが、自分の目に見えてるものは紛れもない知っているゲームの主人公。

 夢にまで見るほど、その人物達の事は知っているし、キャラの設定やら体重身長などなど全部把握している。


「う……」


「う?」


「嬉しいよ! 今まで、こんなにも良いことがあるなんて!」


 勇者は、頭を傾げていたが、俺はお構い無しに握手する。

 そして、ヒロイン達にも握手をするが、困惑していたためか、はぁ~とかう~しか言わない。


「ちょっとごめん、本題に入っていいかな?」


「どうぞ! どうぞ! ブレイ達の言うことなら、俺なんでも聞くから!」


 俺は、舞い上がってしまい、つい我を忘れてしまう。

 だが、その後驚愕の真実を伝えられる。


「僕達、君が知ってるように違う世界から来たものだ。だが、それはこの世界に逃げてきた魔王! ダグネスローダスが、この世界の人間達の闇を利用して、世界を征服し、ここを拠点として、僕たちの世界をも征服するためにやってきたからだ」


 俺は、ブレイが言ってることが信じられなかった。

 それは、信用してないとかそう言うことではなく、自分たちの現代でそんなファンタジー世界で起きることが、実際に起きないと思ってるからだ。

 

「え!?」


「信じられないと思うが、これは本当のことさ。だけど、証拠もないのに信じられないよね……マーシャ! 君の魔法を見せてくれ!」


 そう言うと、マーシャは自分の持っている杖を斜め上に持ち上げて、呪文を唱え始める。


「雷の精霊よ! 私に、雷の力をあたえたまえ! エレクトロニクス、サンダー!!」


 そう、マーシャルが唱え終えると、突然空が雲に覆われて辺りが暗くなり、その雲から雷が出てきて地面に落ちる。

 地面は、黒焦げになっており、プスプスと音をしながら焼けていた。


「えええええ!!」


「まだいくよ! ホーリーソード、スラッシュ!!」


 ブレイが、光を纏った剣を鞘から抜いて横に振ると、光っている衝撃波がもうスピードで柵に当たり切れた。

 

「分かったかな? 僕たちは、本物の異世界の人間ってこと」


「ああ……まあ、最初から分かってたけど……」


 それからも、柵とか焦げた地面を調べていたが、それは明らかに本当に起きてることだった。

 まさか、現実にこんなことが起きるなんて……そう思うと、驚きよりワクワクの方が勝った。

 だって、憧れていた魔法と剣の世界が、自分の目の前に現れたのだから。

 だけど、一人だけ納得していなかった。

 それは、幼馴染みの平田現愛だ。


「はあ!? あり得るわけないじゃない! きっと、何か仕掛けがあるに決まってるわ! こんなの!」


 そう、現愛は言っていて、信じられないみたいだ。

 だが、その時突然何処からともなく声がしてきた。


「勇者諸君! ご機嫌いかがかな? これから、この世界を早速闇に染めていくことにした。どうにかして、解決してみるといい……」


「おい! ちょっとまて! 魔王、ダグネスローダス!」


「あはははは!!」


 そう、魔王の笑い声にブレイは答えた。

 だけど、その声はやがて小さくなり、聞こえなくなった。

 俺は、どうやら異世界の問題に巻き込まれてしまったみたいだ。

 これから、どうなるか不安とともに、喜びを感じずにはいられなかった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る