第7話 先輩の寂しさとリアルはやはりろくでもない

 俺は、何とかブレイと一緒に魔物を剣で抑え込むも、腕の力が強いせいかそれから一歩も剣が動かない。


「どうなってんだよ! これ!」


「僕にも分からない……だけど、一歩も引けないよ!」


 魔物は、余裕な表情を浮かべながら、ニヤニヤと不適な笑みをしながら、俺らを見下していた。


「弱いな~お前らって! そんなんで、俺様をやっつけることは出来ねぇよ」


 クソと、そう思いながらどちらか一人でも何とか出来ないのかと、ブレイと一緒に目一杯剣に思いっきり力を入れるが、先程と同じで全く動かない。


「何で、魔物にすら攻撃が一回も入らないんだよ!」


「それは、彼女の闇の力が強すぎるのが原因だよ」


「どう言うことだよ! ブレイ!」


 俺は、必死にブレイにそう問いかける。


「魔王が、もうこの世界を本格的に、潰そうと力を出してきたってことだ」


 俺は、その事実に驚愕する他なかった。

 これ以上のことが、これから始まると思うと何だか、着いていけるのかと。

 それからも、同じような状態が続きブレイは、俺に前のように瀬里崎の悩みを解決するように言ってきた。

 

「頼んだよ……ぐううううう!! 平二!」


「ああ……やってみるよ……」


 俺は、ブレイの提案にのって、魔物と対峙するのを後にして、全ての意識を瀬里崎の悩みを解決することにあたる。


「瀬里崎先輩! 何が、あってそんな状態になったんですか!? 先輩、らしくないですよ!!」


「私らしくない……あなたに、私の何がわかるのよ……」


 本当に、瀬里崎は何時もの癒し系の母性の塊と違って、暗い雰囲気をまとっていて。

 とてもじゃないが、誰かを安心させていたと思えない。


「私は……誰かに優しくしないと……安心できないの……だって、それが私にとっての存在理由」


 瀬里崎は、人に優しくしないといけないという、使命感にとらわれたようだ。

 その辛さは、俺には全く理解は出来ないが。


「私は、子供の時から優しいお姉さんとして……やっていかなきゃならなかった。それが、他人に押し付けられた自分だとしても……だけど! それでは、最近上手くいかなくなってきたの……」


 瀬里崎にとって、誰かを助けていることは自分がそこにいていい理由。

 たとえ、それが彼女自身の心を傷付けていても、そうするしか他にはない。


「私は、ちっちゃい頃からそうやって生きてきた……それが、私にとっては当たり前の光景だった……だけど、それももう……終わる! 卒業して……これから、誰も……うぅ……私に、関わってくれなくなる……そして、大人になって! 誰も、私の事なんか忘れて……うぅ……寂しくて……辛い……」


 瀬里崎は、寂しかったのかもしれない……今までも。

 だから……より、誰かに優しくして癒して自分に関わって貰えるようにしていた。

 それが、たとえ自分が苦しくてこんなにも悲鳴を上げていたとしても、それしか手段は考えられなかった……。

 そういうふうにしか、生きてこれなかったのだから。


「俺だったら……そんなにもしてくれた人を、忘れることなんてないですよ……大切な人だったら、どんなときでも駆けつけます!」


「そんなの嘘よ……だって……今日も、誰も卒業……祝ってくれなかったわ」


 俺は、知っている。

 瀬里崎が、どんなに誰からも慕われて好かれてるのを……。

 そして、誰よりも多くの人に必要とされてるのを。

 俺は、急いで教室を出て残っている生徒をかき集めてきた、そこには何故か天音や現愛や伊藤とかの姿もあった。

 まあ、教室の外で天音達は隠れていたんだけどな。


「本当にな……お前ら、さっさと出てきてくれよな……」


 俺がそういうと、照れながらそれぞれプレゼントを用意していたと言っていた。

 サプライズのために、隠れていたとも。


「瀬里崎先輩!! 卒業おめでとうございます!!」


 教室に入ってきた、皆は一斉にあわせてそういうと、瀬里崎の周りに集まっていた。

 瀬里崎は、その光景を見て涙を流しながら喜んでいた。


「ありがとう……皆……」


 そして、魔物も力が弱まってきたのか、ブレイの剣に押されていく。


「バカな! 人間は、他のものなどを思いやる気持ちなんてないはず!! それが、何故!? このように、人の事を祝えるのだ!」


「それは、彼女は人を助けてきたからだ……まあ、君みたいな魔物には分からないみたいだけど」


 ブレイは、そのまま剣に力を加えて、その勢いのまま魔物を斬って倒した。

 

「ぐわぁぁ!! こんな……人間は、自分勝手な生き物ではなかったのかぁぁ!!」


 魔物は、消えていき瀬里崎の黒いオーラみたいな物は、それと同時に消えていく。


「魔王!! 人間は、思いやることも出来るんだよ!! だから、こんなことを止めて。君も、いい加減世界征服なんて、諦めてくれよ!」


 魔王は、そんなブレイの言葉も届かなかったのか、苦しそうに負け惜しみをいう。


「今回は……諦めるとしよう……だが! 次は、必ずこの世界を終わらせてやる! 震えて待っていろ! 人間どもよ!」


 魔王の声は、それから聞こえなくなった。

 ブレイは、魔王の事を知ってるらしい。

 俺も、ゲームをクリアして全部知ってはいるが、魔王は人間のせいで壮絶な人生を送っていたから、人間を恨むのは無理もない。



 それから、いきなり瀬里崎は俺に抱き付いてきて、告白してきた。


「私は……大城くんのことが好きです……」


 そして、唇にキッスをして皆から嫉妬の怒りをくらい、ブーイングされる俺。


「何で、平二なんだよ! 瀬里崎先輩!!」


「そうよ! キモオタの、大城なんて何処がいいんですか!?」


 瀬里崎は、皆を威圧的に笑顔で睨んでいた、それも怒っていたと思う。

 そばにいたら分かるが、目が全然笑ってなかったからな。


「なんですか……何か、文句でも?」


「すみませんでした!!」


 一斉に、皆は謝りことを収めるも、一人の男だけはその空気は読めなかったみたいだ。

 その男は、難波だと決まっていたが。


「瀬里崎先ぱ~い! 膝枕して~」


「ちょっと……黙ってて、貰えますか?」


「はい……すみません」


 難波でも、瀬里崎の圧力には負けるのだな。

 瀬里崎も、滅茶苦茶殺意を向けていたので、しょうがないと思うが。


「私は、絶対に諦めないから……あなたの心を、射止めてろうらくさせるまで。何度も……やるからね~」


 それから、俺は皆からは嫉妬されて睨み付けられるは、現愛と伊藤と天音には鬼の形相で睨まれながら、現愛にすけこましと言われるは、散々だった。

 これからは、これよりも酷くなると思うと、何だか気分が悪くなる。

 やはり、俺にとってはリアル女と恋愛的な関係になると、ろくなことがないと改めて実感した。

 あの、ろくでもない中学生の頃みたいに、裏切られるような出来事が起こると思うと。

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