第8話 冷徹教師の涙と鬼の指導

 俺は、何時ものように現愛と伊藤と一緒に学校へと、続く道を歩く。

 相変わらず、現愛と伊藤は仲が悪いのかずっと言い合いをしていた。

 

「あんたは、いつもいつも。いちいち、細かくてうるさいのよ!!」


「何を言ってるんですか!? 現愛さんと大城くんが、適当なだけですよ!」


「 なんですって!?」


 その声は周りに響き、そして一層騒がしくなって俺はより気分が落ち込んでいく。

 何で、こんなことになったんだろうと、そう感じてしまう。

 コイツら、この前の喧嘩とかで懲りたんじゃないのかよ、またやり出すとかどんだけ敵視してんだ……。

 俺はそう思うと、憂うつな時のように思えて仕方がなくなる。



 それから、30分くらい過ぎて学校の門が閉じてしまいそうになるので、急いで現愛と伊藤は言い合いながらも、走っていく。

 コイツら、どうやってその状態で走ることが出来るのか本当に聞きたい。

 俺は、どうにか間に合わせるように走ってみたものの、着いた瞬間門は既に閉まっていたため、遅刻してしまう。


「おい! 大城! 遅刻だぞ!!」


「すみません……はぁ……はぁ……」


 俺は、何とか上がっていた息を元に戻すが、うつ向いていた顔を上げると、そこには鬼のアラサー寸前の教師の尾張希美おわりのぞみそこにはいる。

 それも、眉間にシワを寄せながら、怒りの表情をこみ上げながら。


「とりあえず、君は罰として。休み時間も、先生の手伝いをしてもらう」


「はあ?」


 俺は、意味が分からなかった。

 だって、こんなことは現代の学校ではあり得ないからだ、はっきり言って体罰にしかあたらない発言は、とてもじゃないが養護されない。

 だが、この先生には全くそんなことは通用しなかったのか、押しきられてしまう。


「分かったな!!」


「はい!!」


 俺が、勢いよく返事をするとさっそうと学校の中に、先生は入っていった。

 何だか、納得が出来なかったが従う他はない。

 それから、教室に入ると既に授業は始まってはいたが、教壇の上には誰も居なかった。

 それどころか、皆は各々自由に喋っていた。


「どうしたんだよ? これって?」


「あんた、知らないの? 今日から担任の先生が代わるのよ!?」


 俺には、全く知らされてない情報に驚いた。

 それは、担任が代わるということではなく、俺の元にその事が伝わってなかったことに。

 こういうものは、大体クラス中に教えるものだろう、それが自分一人だけかやの外ととか、新手のいじめかなと思う。


「言ってましたよ! 聞いてなかったのは、大城くんだけですよ」


「ああ……確かに」


 俺は、ぼんやり思い出してきて、そういう話をしていたようなしてなかったような、不思議な気分になってきた。

 それから、教室のドアが開きそこには、なんと尾張希美が現れた。

 その、堂々とした姿勢には感服すら覚えるが、正直言って予想外すぎる。

 この先生だけは、担任には向いてないので。

 尾張は、生徒を圧力で潰し兼ねないと言うのは、この学校では有名な話で、ぶちギレて生徒の親さえも恐れられている存在。

 噂では、あらゆる教育機関に顔が利くとか、既に学校が支配されてるとかないとか。

 尾張は、机をバンと手で叩いて、黒板に尾張希美とチョークで書く、そして真っ直ぐ前を顔を向ける。


「今日から、担任になる……尾張希美だ! お前ら、私が担任になった以上……ふざけた真似は許さん!! わかったか!!」


 その強烈な、自己紹介にクラス中の生徒が思わず、体がピンとなり尾張の話を真剣な面持ちで聞いていた。

 まさに、圧倒されて何も逆らえない状態と言った方が正しい、これでこのクラスは尾張の立ち位置は、女王様と決まってしまった。

 

「それと! 大城平二!!」


「はい!!」


 俺も、思わず体がピンとしてしまう。

 尾張の声は、威圧的なためについ返事をしてしまい、緊張感が走る。


「とりあえずお前は、先程私が言ったようにに。休み時間に、先生と一緒に雑用だ!!」


「はい!! かしこまりました!!」


 俺は、この後プリントを職員室まで持たされたり、理科の実験に使う物を理科室まで運ばされた、それも早くしろだのそんなことも出来ないのかと、暴言つきのドSのご褒美コース。

 こんなもん、ドMの変態しか喜ばんよ、全く……。




 そして、放課後になるもそれからも散々こき使われて、俺は疲れはてる。


「先生……はぁ……はぁ……いつまで、これをやればいいんですか」


 尾張は、そんな俺に手厳しい一言を返す。


「バカもの!! それでも、この学校の生徒か!? 生徒と言うものは、先生の役に立ちひとりひとりが模範となる行動をしなければならない! それが、この程度で根を上げるか! 全く、最近の子供ときたらな」


「と言うか……先生は、若くないんだからそういう時代遅れの考えをしてるんですよ」


 俺が、そういうと心にクリティカルヒットしたのか、尾張はこちらをおもっいきり睨み付けて、捨て台詞をはく。


「覚えておけよ。貴様みたいな、ちゃんとしてない生徒は、私が再教育してやるからな!」


 尾張は、そう言いながら職員室を出ていって、自分の担当している部活の教室まで歩いていった。

 本当に、これから何が起きるんだろうと心配だ、あの尾張のことだ絶対に良からぬ罰が、俺を待ってるに違いない。

 俺は、そう思うと体が震えてきた。

 ここまで、するか普通……。


「尾張先生……ああいうことをしなければ、美人でいい先生なんだけどな」


「まあ、仕方ないでしょ……あの人は、大事な人を亡くしてるし」


 俺は、そんな先生同士のお喋りを聞き、あの尾張にそんな人がいたなんてと驚く。


「それに、元々は生徒を信じて。問題児とかの、面倒を見ていたとか……」


「ああ……しかも、熱心に生徒に寄り添って。一緒に、生徒の問題を解決しようと頑張っていたと聞いたが……ああいう風に、なっていたとは夢にも思わなかったよ」


 あの、尾張がまさかそんな熱い教師だなんて思わなかった、しかしそれからも先生の同士の会話を聞いても、全く何故そうなった原因は分からなかった。

 そして、俺は職員室を出て廊下に出ると、すぐにブレイがいたことに気がつく。


「ブレイ? どうしたんだよ?」


「いや……ちょっと、次の闇に染め上げられそうな人が分かったんだよ。この人だよ」


 ブレイは、そう言いながらノートに書いてある似顔絵を見せる。

 そこには、黒髪のロングストレートのきつい目をした、ボンキュボンの黒いスーツを着た人物、尾張希美の姿が書いてあった。


「尾張先生じゃないか!?」


「やっぱりか……魔王が言っていたが、君の周りの人物を重点的に、闇に染めていると言っていたんだ」


 ブレイは、難しそうに手をあごに当てて、考え込んでいた。

 それは、何だか深刻そうにしてるように思える。


「どういうことだよ?」


「分からない……とりあえず、言えるのはこの学校の誰かが、闇に染め上げられるということ。そして、多分だけどこの学校に、魔王もいると言うことだけだ」


「まあ、いいや! それより、俺にあの先生がいそうな場所を知っている! そこに、行こう!」


 俺は、ブレイを引き連れて学校の運動場にきた、そこには花が飾ってある前に、尾張が手を合わせながら何かブツブツ言っていた。


「ごめんなさい……かがみ先生……私……うぅ……やっぱり、無理みだい! だって、私が先生を死なせてしまったもの……ぐずぐず……」


 その、尾張の光景からは何時もの、冷徹で威圧的な鬼のような姿は想像できない。

 そこにいるのは、純粋で恋する乙女ようなまるで別人な者しかいない。

 それから、俺とブレイに気付いたのか、尾張はドンドンと表情を何時もの、冷徹で鬼のような姿に代わり、こちらに顔を向ける。


「あなたたち……何をやってるの? ちゃんとしなさいと、言ったわよね!」


 尾張から、黒いオーラが出てきた。

 しかも、俺とブレイは何故か体が重くなり立ってるのがやっとだ。


「どうなってんだよ……ぐううう! ブレイ!」


「これは……闇の力が、増幅してる!?」


 どうやら、ブレイは魔王の力がより、尾張に注がれて闇の力が強くなっているために、とてつもない能力で重力を上げてるとか。

 冗談じゃない!

 押し潰されてたまるかよ、こんなリアルなんかのために。


「それに……あんたたち、みたいな生徒がいるから厳しくしなきゃならないのよ! それが、分かる!?」


 俺とブレイは、更に重みがのし掛かるが、何とか耐えてみるがこれ以上もたないと思う。

 本当に、リアルってのは最悪だな、別に俺が原因でこうなった訳じゃないのに、尾張にこき使われた挙げ句、こんな目にあわされるなんてな。

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