第15話 幼い女の子の苦しみと初恋

 俺達は、早速受付の看護師に面会手続きをしてもらい、3階の病室へと走って向かう。

 その道中、闇に染まった人が徘徊してはいたが、なんとか避けて階段を上り、汗を大量にかきながら疲労していたが、目的の難波の妹のレイナのところへと着く。


「レイナ! 大丈夫か!」


 難波は、苦しそうな顔をしている妹のレイナへと話しかける。

 レイナは、酸素マスクをつけていて、とてもじゃないが大丈夫な状態ではないが、目を何とかして開けて難波の方を見る。


「お兄ちゃん……」


「レイナ……うぅ……」


 難波の表情からは、何時ものおちゃらけてる感じはなく、その姿は妹を心配する兄そのもの。

 

「お兄ちゃん………その人達誰……」


「ああ……俺の友達と……」


「どうも! 難波さんの、女友達の伊藤知恵と申します。」


「私は、難波さんに世話になってる後輩の。落田天音だよ! よろしく! レイナちゃん!」


「私は~難波君の、友達で先輩の瀬里崎叶だよ~レイナちゃん~よろしくね~」


「私は……コイツの、担任の教師で世話をしてる尾張希美だ! よろしくな!」


「私は、難波の世話をしてる。平田現愛よ!

フン! コイツは、私が居ないとダメなんだから!」


「皆……」


「お前ら……」



 俺と難波は、感動していたコイツら女達が難波の妹の為に、協力してくれたことに。

 本当に、俺はコイツらがそんなことをやってくれるとは思わなかった。

 だって、普段は滅茶苦茶難波のことを嫌がっていて、悪口しか言ってないから。


「それにしても、レイナちゃんは可愛いな~」


「そうね! コイツと、こんな可愛い子が血が繋がっているとは思えないわ」


「それより~お姉さんと~仲良くしましょう~」


「そうですね! きっと、遺伝子の悪いところばかり受け継いだのが。難波さんなのでしょう!」


「私も、結婚したら。こんな可愛い子が、出来るのかな……」


「うるさい! ほっとけ! 大体、妹は母さんに似てるんだよ!!」


 本当に、コイツらリアル女ときたら、感動したことを返してほしいと思うわ。

 これだから、リアルの連中は。

 そう、俺が思っていた時だった、レイナはまた目を閉じて機械からは警告音みたいなのが聞こえてきた。


「おい! レイナ! レイナ……レイナぁぁぁぁ!!」


「……」


 レイナは、意識が無くなり難波は必死に呼び掛けるが、それもむなしく何の反応もなかった。

 俺も、女達も涙が溢れて流れてきて、あごから垂れて下の地面へと落ちる。

 その時間は、難波の悲しむ声と鳥のさえずりが辺りに響いていて、他の者はただ黙っていた。


「誰か! どうにかしてくれ……うぅ……妹を助けてくれよ……頼む! 頼むよ……うぅ……」


 そう、難波が周りにいる俺達に頼み込むも、そんなことは誰も出来ない。

 それが、リアルというものだ。

 だから、俺はこんな世界は嫌いなんだ。

 

「難波……一つ、試していいか?」


「え? 何だ……」


 俺は、レイナのお腹に手を当てて、光の力を流してみると、先ほどと違いドンドンと顔色が良くなる。

 そして、また目を開けて意識を取り戻し、こちらを見てお礼を言う。


「ありがとう……お兄ちゃんの友達の……」


「大城平二だ……平二でいいぜ」


「平二さん……」


 難波は、妹のレイナが元気になったことが嬉しかったのか、今度は笑顔で涙を流しながら叫び。


「良かった! ありがとう! 平二!」


「まあ……お前との仲だしな」


 それから、暫く経ってから医者やら、看護師が来て色々検査をするが、何も異常がなかったことに驚いていた。

 それもそうだ、かなり重症で手の施しようがなかった、患者がいきなり突然何もなかったかのように治ったのだから。

 まさか、俺の力で治したとは思えないのは当然あり得ないこと、それにそんなことを言っても信用されないと思うし、たとえ信じてしまったとしてろくでもないことになりそう……。


「本当に、皆! ありがとう!」


「いや……まあ、俺もこの方法で治せると思ってなかったし」


「おいおいおいおい! それは、ないだろ!」


 まあ、ゲームでは病気を治せる魔法は、大抵どのキャラでも覚えられるからな。

 俺じゃなくても、ブレイの仲間の魔法使いの女の子でもいけたとは思うが、自分しかその情報を知らないとは思うし、緊急事態ぽかったのですぐにやる方法がこれしかないしな。


「平二さん! チュ!」


「……え!?」


 俺と、難波はいきなり自分にキスをしてきた、レイナに唖然としていた。

 突然、何をこの女の子はやりだすと。


「好きです! 平二さん!」


「ちょっと!! レイナちゃん!?」


 そして、レイナは俺に抱きつき愛の告白してきた、全く訳が分からないリアル女は、幼い時期からそう言うことばかり考えているのかと。



「おい! 平二!! 学校の女の子だけじゃあきたらず、俺の妹までも手にかけるのか!」


「ちげぇよ! そもそも、他のリアルにも何もしてねぇよ!!」


 俺は、レイナの手を引き離そうとするが、病人だったと思えないくらい力が強く、とてもじゃないが離せそうにはなかった。


「私の、未来の旦那様~」


「おいおい! 俺は、レイナの夫が平二とか。絶対に認めないからな!」


「お兄ちゃん! そんなことを言う、人は大嫌いだから!!」


 難波は、レイナのその言葉にがくぜんと

していて、立ち直れなかったが現愛が、肩を手におきどうにか慰めた。




 その後、漸くレイナは俺から離れて、女達と対立はしていたものの、納得してどうやら諦めがついたようだ。

 

「探したよ……」


 ブレイの仲間の、マージンとマーシャと合流して、魔法を使って移動するために、魔方陣の上に乗る。


「平二~愛してる~」


「おい! レイナ! 止めろ! 平二……絶対に勝ってくれよ!」


「ああ……」


 俺は、難波にそう魔王に勝って世界をもとに戻す約束をするのだが、それよりレイナの愛の言葉に押されてしまう。

 これだから、リアル女ってのは嫌だなと思いながら、徐々に体が消えていき、学校に戻ってきていた。 

 

 


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