第14話 悪友の悩みと家族への思い
難波は、何時もと違い周りの女を口説くどころか、眉間にシワをよせて睨み付ける。
それは、何か言いたげなような表情で、真剣な眼差しではあったがとてもじゃないが、まともな感じじゃない。
「どうしたんだ? お前? 何時もの、女の尻ばかり追っかけてるのに?」
「はあ!? ふざけてるのか! この状況分かっていってんのか!」
俺は、純粋に何故にこのナンパしかしない、普段おちゃらけてる奴がこんなにも悩んでるのかが理解出来なかった。
いかにも、難波という男は悩みなど皆無に見えていたから、意外すぎて驚いてその言葉が出てしまう。
「とりあえず……女と付き合えなくて、八つ当たりをするのは止めろよな……」
「はあぁぁぁ!? そんなんじゃねぇよ! 馬鹿にしてるのか!!」
難波は、馬鹿にされたと思ったのか、顔を真っ赤にしながらじたんだを踏んでいた。
「違うんだ……平二……」
難波は、今度は暗い表情をしながら、そう深刻そうに話す。
それは、まるで何か大切な者の為にこう言うことをしてるように、俺には見えた。
「どうした……今日のお前、何処か可笑しいぞ」
「ああ……そうだ……可笑しいよ……だけど! 妹の為に、こうするしかないんだよ!! だから! やられてくれ! 平二!!」
「何で、やられなきゃいけないんだよ!!」
どう考えても、難波は可笑しなことを言っていた、それに俺がコイツに倒されなきゃいけない理由も、訳がわからないし。
「いやいやいやいや!! 妹の為に、友達をぶっ倒す兄とか……訳がわからないぞ!」
「しょうがないんだよ……魔王……ダグネス・ローダスは……俺に約束してくれたんだ……お前らを倒せば、妹の病気を治してくれるって!」
そうか、難波が何時もバイトとかしてるのはそのせいだったと、俺は気付いた。
コイツも、こいつなりに悩みはあったのか。
「だからって! 妹さんが、こんなことをしてほしいとは思ってはいないはずだぞ!」
「うるさい、うるさい!! もう、こうするしかねぇんだよ! 不治の病に、おかされてると医者から聞いて……それで、暫くどうにか出来ないと悩んだんだ……そして、つい最近魔王にあって……治してくれると、約束してもらったんだ!」
「はあ!? そんなことが出来るわけないだろ!」
難波が言っていた、妹の病気を治すといった約束は魔王が、コイツを闇に染めるための出任せにしか思えない。
だけど、どうやらブレイはそうは思っていなかったようで、その病気を治療する方法をいう。
「それは……本当かもしれない」
「どういうことだよ? ブレイ?」
「平二、魔王ダグネスは……闇の魔法を使うことは、知ってるだろ? その魔法の中に、闇を吸収して。あらゆる、不幸を無くすことが出来るんだよ……そして、その中に病気を無くす効果もある」
「何だよ! それは!!」
確かに、俺は魔王が闇の魔法を使うことはゲームをやっていって知ってはいたが、そこまで万能な力があることは知らなかった。
「だから……お前ら、勇者を倒されなきゃ……いけないんだ! 頼む!! 倒されてくれ!!」
難波は、必死に俺とブレイにそう懇願するが、俺はその頼みごとをきくわけにはいかない。
だって、俺はブレイを助けなきゃいけない。
コイツには、悪いが倒されてもらわきゃ困る。
「何で……きいてくれないんだよ……倒されろよ!!」
難波が、そう言うと黒い闇のオーラは、どんどんと大きくなりやがて、一つの丸い塊へと変化して、黒い鎧の騎士へと変わる。
「ふははははー!! やっと、出られたぜ! これで、俺は暴れられる!」
「まずい! 奴は、魔王の配下の一人の狂戦士。暴れたら、手がつけられなくなる!」
そうだ、俺は思い出したあの黒々しい、鎧をまとった魔物は狂戦士グリブド、奴は魔王の配下の一人で問題児。
何時も、現れては町や村を破壊しつくし、跡形もないような姿にする、その上滅茶苦茶強くて手がつけられない、ゲームをやっていたときもコイツを倒すのに苦労した。
「準備運動がてらに、この城のような建物でも。壊すとするか! ふはははは!!」
「何だって!?」
こんなこところで、暴れられたらとてもじゃないが、この学校のような古い建物はすぐに崩壊する。
俺は、そう思いグリブドの方へと向かうと、ブレイがすでに剣で暴れているグリブドをおさえていた。
「平二……ぐぐ……君の、親友の元へ行くんだ……」
「だけど……ブレイはどうするんだよ! ずっと、そいつをおさえてるのかよ!」
「いいんだ! 早く! 彼の、心の闇を消し去ってあげて!」
俺は、ブレイが言うように難波の元へといき、闇を消し去るために対話を試みる。
「おい! 難波!! 本当に、妹さんがそんなことを望んでいると思ってんのか! 違うだろ! 本当のことを言え!!」
「確かに……そんなことは、妹は望んでない……だけど! 妹が、望んでいることは……俺が、彼女を作って見せてくれと。頼んできたんだよ!! どう考えても、今の俺には無理だろ!!」
だから、難波は何時も彼女を作るためにナンパをしていたんだと、この時漸く分かった。
コイツは、こいつなりに深く悩んでいたのかと。
「じゃあ……皆で、行けばいいじゃないか! それで、いいか!」
「「私達は、いいわよ!」」
そう、女達はいいと言いともに了承してもらい、難波に病院へと行く道を教えてもらった。
難波は、とりあえず闇をなんとかおさえてることに成功して、狂戦士を自分の心の中に閉じ込める。
「お前は、俺の中に暫く入ってろ」
「ぐわぁぁぁ! やめろぉぉ!」
俺は、正直言ってそんなことが出来るのは知らなかったが、今はどうでもいいので無視して、病院へと皆で向かう。
道中は、闇に染まった人だらけだった、その為倒したりしてはいたものの、ほとんどは時間がかかるために避けていき、どうにか目的の病院へ着く……。
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