第12話 俺の辛い過去と二次元コンプレックスになった理由

 俺は、現愛に振られてずっとしょんぼりしていた、その時武井満たけいみちる先生が現れて、諦めなければ何時か素敵な女の子と付き合えると、自分の恋愛経験談を話して、励ましてくれた。



 それから、中二になってすぐ棘哀美とげあいみと廊下ですれ違い、一目惚れしてしまい屋上で告白して、付き合うことになった。

 これは、武井先生が励ましてくれたお陰であろう。

 俺は、武井先生を恩師だと、したうようになった。

 


 今、棘と手を繋ぎ廊下を歩いている。

 何だか、気恥ずかしいと俺は思ったが、彼女の棘は嬉しそうに笑うので、それに流されて了承してしまう。


「るん、る~ん!」


 棘は、ニコニコの最高の笑みを、こちらに見せてくるので自分も、その顔に癒されて気分が舞い上がる。

 彼女は、まさに明るい太陽のような、性格で容姿も目が二重で、パッチリしていて可愛かった。

 ダメなところと言ったら、髪がちょっと明るい茶髪なくらい。

 それを見て、クラスメイトはバカップルだの、ヒューヒューだのとからかってきて大変だった。

 この時が、一番幸せな時期だったのかもしれない。

 正直、あんなことが起こるとは、俺も一切思ってもみなかった……。



 その後、一週間経って自分の部屋へと、案内して一緒に楽しくゲームなどをやり、遊んでいると……棘は、トイレをしてくるといい、俺は置いてあった棘のスマホを、つい見てしまった。

 そこには、男とのRainのメッセージのやり取りがあった、しかも愛してるだの次いつ会うのかだの、言っていたみたいだ。

 俺のことを棘は、つまらない男だのダサくて、しょうもないだのと悪口を書いて、罵り俺といる時より楽しそうにみえた。

 俺は、棘がそう思ってるのだと思うと悲しくなり思わず涙を流す。


「俺は……うぅ……棘に……ぐずぐず……そう思われていたのか……うぅ……」


 それからは、俺は落ち込んで棘からの連絡を一切たち、あまり学校でも関わらないようにしていた。

 クラスメイトも、俺と棘の様子がいつもと違うので、心配して聞いてきたが、どうにか誤魔化してやりすごす。

 

「どうしたの? 平二! 何か、あったの?」


 俺は、そんな棘のとぼけた表情と、態度に苛立ちを覚えて、怒鳴りながら本音をぶつけてしまう。


「どうしたの……じゃない!! お前! 本当は、俺の事が嫌いだったんだな! それに、別に好きな男もいるんだろ!!」


 棘は、そんな俺の言葉に一度は黙るが、口を開けると眉間にシワを寄せて、おもいっきりこちらを睨み付けながら、叫ぶようにデカイ声を上げる。


「そうよ!! だから? なに? それに、元々あんたがそんなんだから。浮気をしたんじゃない!! 浮気男は、滅茶苦茶カッコいいし。気がきくし、あんたみたいにダサくないのよ!! 後、金も持っていて、色んなところに連れて行ってくれたわ! あんたと、違ってね!!」


「もう……いいよ」


 俺は、怒る気力もなくしていたのか、棘のことがどうでも良くなって、何も言葉が出なかった。

 そして、周りを見るとクラスメイト達は、スマホを見ながらずっと、棘をみながらひそひそと話しながらばかにするような顔で、笑っていた。


「なによ!? どうしたの!」


 そう言うと、棘は鳴っていたスマホの画面を見ると、顔を青ざめる。

 俺も、スマホのRainを見てみると、グループの会話から棘と浮気男が、他の未成年とも付き合っていて、それがバレて捕まったことが書いてあった。

 しかも、ニュースまで流れていた。



 その後、一週間経って俺は学校に呼び出されて、棘が妊娠してしまったことを告げられる。

 棘は、俺が告白した屋上へと呼び出して、交際を続けないかと迫ってくる。


「ごめん……うぅ……あなたを、裏切って」


「別に……もういいよ」


「これからも、私の彼氏で居続けてくれるかな……うぅ……」


 俺は、そんな自分勝手で明らかに、自分の状況が不利になったから、手のひら返ししてきた棘の言葉に悲しくなった。

 棘にとって、俺は都合のいいただの嫌な男とだったことに。


「もういいって……言ってるだろ!! 棘! お前にとって……うぅ……俺は、どうでいい存在だったんだから!」


 俺は、ドアを勢いよく開けて、そのままかけだして泣きながら、走っていた。

 途中、先生や生徒に廊下を走るなだの、言われたが耳にはいらなかった。

 そして、暫くして泣き止み、内緒話が聞こえたので立ち止まって聞いてみると、幼馴染みの現愛の彼氏が誰かと電話していた。

 その内容は、体育館の倉庫へと呼び出して、男どもで現愛を襲おうといった話をしていた。

 


 俺は、急いで目的地の場所へと、走ると現愛はすでに襲われそうになっていた。


「やめてよ……うぅ……」


 男達は、そんな現愛を取り囲むのように、立っていて、逃げ場もないし今にも襲われそうだ。

 俺は、現愛を庇うように後ろに、下がらせる。


「どうして!?」


 現愛は、泣き過ぎたのか目を腫らせていた、俺の行動がわけが分からなかったのか、驚いてすぐに泣き止む。


「やめろぉぉ!!」


 俺は、なかばやけくそになり、男達のところへと突っ込んでいく、現愛をどうにか逃がすのに成功はするが、殴られたり蹴られたりして、身体中が傷だらけだ。


「ちっ! 女を逃がしたか!」


「おめぇのせいで、失敗したじゃねぇか!!」


 俺は、現愛の彼氏に顔を更に、何発も殴られて顔が腫れ上がる。

 それから、現愛は先生を呼んでくれたのか、俺はそれ以上ケガをしなかった。


「何で……うぅ……助けてくれたのよ……こんな、私を」


「もう……ゴホゴホ! 俺の人生なんて、どうでも良くなって……だけど、そんな俺の人生でも……何かの、役に立てばと……思って」


「もう……バカ! 私なんて、あなたを傷付けたのに……うぅ……」


 俺は、どうにかそれからも、腫れた顔でも学校には行った。

 恩師の、武井先生は心配してくれた。

 だけど、何か怪しかった……顔からは、冷や汗をかいていて声が震えていたし。


「ど、ど、ど、どうしたの?」


「先生……俺は、これからどうすればいいんですかね……」


「多分、だ、だ、だ、大丈夫だよ~」


 俺は、何時もと違った武井先生の、態度に違和感を感じていたが、何も聞かずに職員室の扉を開いた。

 だが、その先には警察がぞろぞろといて、教師を次々と逮捕して連行していく。



 その翌日に、テレビのニュースや新聞のマスメディアが、うちの学校を取り上げていたためか、授業どころではないと言う理由で暫く休みになった。

 それからも、一ヶ月くらい経っても、引き込もっている俺に、母親は学校に行きなさいと言ってきた。

 確かに、もう学校の休みの期間は終わっていたので、行かなきゃいけない。

 だけど、俺はそんな気力はない。


「もう! 現愛ちゃんも、迎えに来てるわよ! だから、出てきなさい!」


「帰って貰うように、言って! 関わりたくないから……」


 俺と、母親のやり取りはずっとこんな感じだ、特に現愛には会いたくなかった。

 また、棘のことを思い出して辛くなりそうになるから。



 その後、とあるゲームを見付けてやってみる。

 俺は、棘と付き合っていた時、全くゲームをやっていたなかったので、久しぶりにやるのだが、何故かワクワクしなかった。

 こんな状態で、やってもそうなるのは当たり前か。




 それから、一週間経ってゲームをやり続けて、主人公のブレイ達に感情移入するようになった。

 彼の言葉は、俺の心を励ましていてくれたように感じた。

 ブレイは『大丈夫だよ、君も辛かったんだね』と言うテキストには、今の俺の心には刺さり思わず泣いてしまう。

 そして、ブレイ達は様々な困難などに、立ち向かい解決して、人を救っていった。

 その、ストーリーも感動的な物だった。

 魔王へと、遂にたどり着き倒して、エンディングで流れる『よく、頑張ったね』『次は、君が世界を救う番だ!』『君なら、出来るよ!』と言うブレイの言葉に、俺は感化されたのか漸く、学校へと行った。

 だが、教室のドアを開けてみると、そこにはギャルと現愛と俺しかいない。

 しかも、知らない先生がいて、ホームルーム直前に来ていたようだ。

 ちょっと、叱られたがそれからは何も言われなかった。



 放課後、ギャルに誰こいつと言われたが、相手をしなかったため、どうでも良くなったのか化粧をし始める。

 教室は、三人しかいないためか、ガランとしていて何とも寂しい感じで、風が吹きカーテンがなびく、音しかしない。



 

 俺は、それから一年後中三になり、嫌な学校のことを思い出すも、どうにかして勉強をして、行きたい学校へと合格する。


「やったぁぁぁ!!」


 俺は、思わず歓喜して、合格者の発表掲示板の前で、叫び倒すのだが。

 横に、現愛がおり俺をいかにもバカにした表情をしながら、目を細めて見てきた。

 どうでも良かったので、無視はしたが。

 漸く、あの学校のことから逃れられると思ったのに……そう思いながら、落胆して帰る。


 

 あの時から、高校で色々な事があり、どうにか立ち直り現愛とも話すことは出来るようになっていた。

 しかも、難波と言う悪友も出来ていた。

 俺も、すっかりゲームや二次元にはまり、リアルに何も思わないようになってしまったので、それ以上の人間関係は出来なかった。

 まあ、もうリアルの恋愛で傷付くのは懲り懲りだったので良かったのだと思う、これで……。

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