第5話 醜い女達の争いとがんばり屋の天然美少女

 現愛は、すぐに状況に馴れたのか。

 俺とブレイとともに、天音の悩みを聞いていた。

 だが、伊藤はそんな天音の姿を見ても、全く理解しない。


「意味が分かりませんね。それと、悩みと言っても勉強しないで。いつも、怠けている天音さんが悪いんじゃないですか! フン!!」


 本当に、この女はデリカシーがないというか、人に対して厳しいよな。

 俺も、こんなことを言われたら、気が狂いそうになると思う。

 当然、天音の目はドンドンと光を失っていく。

 それどころか、茫然と下を向いて虚ろな顔をしている。

 伊藤と言う奴は、出来ない者の悩みとか人の気持ちに無頓着で、何故クラスでこんな女が慕われてるのか分からないと思うほど、クソみたいなやから。

 まず、言いたいのが伊藤も毎回そういうことで、怒られてることに気が付くべきだ。

 そう俺は思うが、伊藤にそれを言っても全く通じない……。

 伊藤は、何でもこなせる優等生。

 それと比べて、天音はほとんど何をやっても、ドジばかりして全てを無駄にする、劣等生むしろ余計なことばかりして、場を滅茶苦茶すると言った所業をやらかす、問題児に属する。

 つまり、伊藤にとっては不良と何ら変わらない、結局は他の連中と同じで、天音のことを馬鹿にしている。

 

「そうやって……人を馬鹿にして……楽しいんですか……伊藤先輩!!」


 天音は、いつもの明るい感じとは想像もつかないような、険しい顔で伊藤を睨み付ける。

 まさに、それは伊藤を殺しかねない、そんな感じの形相と状態だった。


「私だって、分かってますよ……ダメな自分だって……でも!! ずっと……変えようと、頑張ってるんじゃないですか!! それなのに……うぅ……何で、いつも皆そんな私を責めるんですか!? 何で……うぅ……誰も、私の気持ちを分かってくれないんですか!! 成果を褒めてくれないんですか!? 何で……うぅ……何で!! 何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!」


 どう考えても、その天音の顔付きは普通じゃない。

 涙と鼻水で、美しい顔グショグショで台無しになる。

 とてもじゃないが、こんな姿はあの狂ったファンクラブもとい、宗教団体の連中には見せられない。

 自分が、確実に社会的に消され兼ねない。

 たとえ、伊藤が独断でやっていたと分かっていても、クラスのヒエラルキーの頂点の仲間にいる、伊藤とは戦うわけがないからな、必然的に俺にとばっちりが来るのは、簡単に推測できる事実。

 これ程、理不尽な出来事は産まれて始めてだろう。

 多分だが、これから一生こないと思う……想像のいきは越えないが。


「あんたね!」


「また、私を責めるつもりですか! あなたも!」


「あんたに、言ったんじゃないわよ! 委員長よ!」


「え?」


 意外にも、現愛は伊藤の言っていたことに、反論する。

 俺も、正直驚きを隠せない。

 コイツのことだから、伊藤に加担して人を責めて、俺がオタ活してる時みたいに、馬鹿馬鹿しいだのお前がマヌケなのが悪いだのと、言うとばかり思っていた。


「そもそも、私は疑問に思っていたのよ! 伊藤みたいな、女が委員長だなんてね! それと、伊藤も空気読めてない場合多いわよ! 後、言っとくけど! 女子から、結構裏で悪く言われてるから!」


「はあ? 何なんですか!? さっきから! それが、どうしたんですか!? 全く、関係ない話ばかりしてくるんですか! それに、前から言おうと思ってたんですけど。あなたも、私にとっては問題児に一人何ですからね!!」


「何ですって!!」


 そう……現愛も、人に馬鹿馬鹿しいだの無駄で無意味だの言って、クラスメイトのバカにして聞く耳持たないことも多い。

 だから、伊藤もそんな現愛の普段の態度に不満持っていたのか、それを吐き出すかのようにドンドンと、言葉を発する。

 まさに、女の嫌な泥沼の文句の言い合い、これだからリアル女どもは嫌いなんだよ。

 人に対して、そんな汚い思いやりの欠片もない、傷付けあうことしか出来ないんだから。



 それから、三人で言い合いをずっとしていた、俺は正直この場所から一刻も早く抜け出したい。

 そう思ったとき、二次元キャラの女の子二人も漸く合流する。


「あ~あ! これじゃあ、こっちの世界の女の子を、大城も好きにならないわけよね~」


「本当に……醜いわ……まるで、魔物に心を売った者の、末路を見てるよう……」


 二人は、現実世界の女の醜い争いを見て、否定的な感想を述べる。

 それはそうだ、俺も出来ればこんな状況見たくはない。

 だが、これがリアルの女の真実なのだからしょうがない。

 それからは、どんな神でも逃れことは出来ないんだと思う。

 そして、逃れるすべもこの世にはないと断言できる。

 だけど、そんなことはどうでもいい。

 それより、無口なマーシャルがそんなことを話すとは、余程この女どもはどうしようもないのだと……。

 本当に、収集つかないぞ……これは。

 

「はあああ!! ふざけるなあああ!! 今は、私の話をしてるのでしょうがあああ!! それなのに、先輩方は先程から私を無視して話を進めて! 何なんですか!?」


「そうだぞ! 人間の女どもよ。この天音とか言う、可愛いらしいものの、言う通りではないか!」


 何故か、天音に取り憑いている魔物さえも、味方する事態になっている。

 どうやら、いつの間にか闇のオーラから、魔物が生成していたらしい。


「大丈夫かよ……これって」


 俺の心配は、的中したらしく。

 魔物の出した技で、伊藤と現愛は地面に仰向けになって倒れる。


「何よ……これ……」


「どうなってるん……ですか……」


 翌々観てみると、二人の頭上には黒い丸い鉄球のような塊がある。

 どうやら、そこから超重力が出ているらしく、まったく動けないどころか、言葉を発するのもやっとのようだ。


「私は、悪くない! 先輩方は、いつも自分勝手だもの! そして、私みたいな人達はそれで損する!」


「そうだ……貴様のような女は、誰からも尊敬などされない。そして、邪魔な必要のない存在なのだ」


 魔王は、必要以上に天音を罵る。

 どう考えても、天音を陥れようとしてるとしか思えない。

 だが、それは今の天音には効果的な手段。

 特に、精神的に追い詰められた天音は、すぐに悪い情報だけを鵜呑みにしてしまう。

 これは、天音だからなのではないけど。

 人間ってのは、ネガティブな時ほど嫌なことを考えて、更に悪口などが聞こえやすくなる。


「これじゃあ、魔物に手を出しにくいね……とりあえず、天音て言う女の子を、どうにかしてくれない? 頼んだよ! 平二!!」


「しょうがないな!」


 俺は、ブレイに頼まれたので渋々天音の悩みを聞くことにした。

 本当は、すごく嫌ではあったがそれじゃあ話しは進まないから。


「とりあえずさ……落田……何が、そんなに嫌なんだよ」


 天音は、俺が話を聞いてくれるのだと思い、落ち着いてこうなった経緯を話し始める。


「だって、私いつもダメだとか。一人じゃ何も出来ないとか、言われるんですよ!? それは、誰だって落ち込みません!?」


「まあ……それは、そうだな……」


「それと、いつもいつも。私は、馬鹿にされてきました……天然だの、アホで何も出来ないだの、害しかないし何も直す気がない。怠け者だのと! それと、変なアダ名を付けられて。天然と! 小学生から、言われ続けてきて! それからそれから! 女子から、小学生から中学生まで……虐められて! 私もう……苦しくて……もう、自分が嫌になって……」


 天音は、今までのろくでもない思い出を語るが。

 ほとんど、俺には天音が人に好かれているのに対して、クズみたいな奴らが嫉妬してるように聞こえた。

 

「それって……落田に対しての、嫉妬なんじゃないか? 落田は、俺のクラスでも結構人気があるって聞いたぞ?」


「じゃあ、何で! 私は、嫌がらせだの。馬鹿にされるんですか!」


「それは、リアルの女の嫉妬と! 好きな子に、嫌がらせするクソみたいな野郎だよ!」


「え?」


 天音は、どうやら想定してなかったらしく。

 唖然とした表情で、暫く口が開きぱなっしで俺の言葉を聞いていた。


「だって、それしかあり得ないだろ? そもそも、落田は要るだけで価値があるんだよ」


「そんなの嫌ですよ……私も、頑張って結果を出して。皆の助けになって褒められたいんですよ!!」


 俺にとっては、全く持ってこんなことに悩むのは分からなかった。

 俺は、いつも無理矢理何かをやらされたりして、ご苦労だのありがとうなだのと、下らない励ましの言葉などで誤魔化されて、忘れたかのようにクラスの連中や、中学生の時もしていたから。

 そんな面倒臭いことをやって、便利屋の如くこき使われるのが喜びに感じるのは理解出来ない。

 だけど、俺は理解できなくても解決はできるんだと思う。

 そうして、俺は天音に熱弁する。


「だから! そんな、役に立つだの。助けられるから、いいだのと。思わない方がいいぜ!」


「でも……頑張ってるなら、認めて欲しいじゃないですか!」


「俺が、落田の頑張りを認めてる……たとえ、誰が文句を言ってもな。それでも、ダメか? 俺じゃあ、ダメかな?」


 落田は、涙をまた流しながら嬉しそうに、その質問に精一杯の笑顔で答える。


「全然ダメじゃないです……それに……私……間違ってました……だって、こんなにいい先輩が要るのだから……」


 そうやり取りしてると、魔物は慌てふためいていたが、ブレイがそんな魔物を前のように斬り、倒されて消し去っていた。


「ごめん! おいしいところを、頂いちゃって!」


「まあ……いいんじゃないか……後、次いでにこっちの後輩も。どうにかして欲しかったよ」


「先輩ひど~い。自分からお願いしてきたんですよ!」


 どう考えても、そんなことはしてないだろと言ってやりたい。


「いやいやいやいや! そんな、ことはやってないからね!」


「冗談ですよ! だって、好きな人には嫌がらせしたくなりますもん」


 俺は、なんか告白てきなことを言われたが、前の時のように二次元しか愛せないと断り、それを言ったが為に、余計に二人の醜い女からは罵倒を浴びせられる。

 そして、難破はまた懲りずに、天音に付き合わないかだのと鼻の下を伸ばしながら言うが、断られて落ち込む。

 当然だろうと思うが、この男は全然リアル女の気持ちを分かってない。

 まさに、恋愛エロバカと呼んだ方がいい。

 悪い奴では、ないんだけど……。



 一ヶ月後、天音のテスト勉強に付き合わされる。

 勉強が得意な、伊藤と実はそこそこ教えるのが上手い、現愛が居たから良かったが、俺だけではキツかった。

 正直言って、もう二度とやりたくない……。


「と言うか! 落田は、優秀な執事に家庭教師、紹介してもらえばいいだろ!」


「あ~、先輩……それは……執事が、家庭教師にクビにしたんですよ」


 俺は、天音の執事を怒りを込めて睨み付ける。

 だが、その思いは執事に届いたのか分からなかったが、クビにした理由を言う。


「あの者は、落田様に対して。ハレンチな真似をしようとしたましたので……クビに、しました……これで、分かりましたか?」


「あ~……そうなの……別にいいわ。あの家庭教師、嫌いだったから」


 俺は、良くないとは思ったが。

 執事の、余計な事を言うなと言わんばかりの、その不適な笑みから感じる、威圧から察して何も言わなかった。

 それに、この執事女だしキツそうだから、あまり関わりたくないんだよ。

 そんなこんなで、またクソみたいな女達との日常が始まる。

 本当に、こんな生活嫌だ。

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