三髪シュリ−5

 それから詳しく話を聞いた。


 カエルの妹はキョウコというらしい。必殺技の詳細も聞いてないという。


 そして、タイガーに関しても謎。能力も不明。ただ、1つ知っている事があるらしい。カエルは神妙な表情を浮かべ言った。


「アプリ内で言われているらしいが、神には強くて勝てないが、タイガーは負けたことに気付かない。らしい」


 一瞬、言葉の意味が分からなかった。


「何それ、ヤバすぎない? 私達、アプリから解放されたいけど、負けたら意味ないよ?」


 何故かこの時、カシンが少し頼もしく見えた。


「大丈夫。僕達なら負けませんよ。また、後日戦略を練りましょう」


「じゃあ、俺達にも指示をくれ」


「いや、大丈夫。僕達だけで戦います。もし、対戦相手に妹が来たら……冷静でいられます?」


「それは…」


「全力を出しますが、期待はしないで下さい」


「……分かった」


 残念だけど、これが精一杯ね。しょうがない。私達のリスクだってあるし、まずは勝たなきゃ意味がない。


 後日、タイガー打倒に向けてカシンと喫茶店で作戦を練る事になった。


「で、どうすんのよ?」


 カシン任せにしすぎている気がするけど、嫌な顔を一切しない。案外、良いやつなのかもね。


「……どう思います?」


「どうって、前と同じで私が囮で、アンタが奇襲するっていうのが最高の戦略じゃない?」


「そうなんですけど……嫌な予感がするんですよね。それにちょっとムカついてるんです」


 憂いを帯びた表情、何を考えているのかその先が知りたくなった。


「嫌な予感? アンタがムカつくって珍しいわね」


「カエルが言ってた、タイガーは負けた事に気付かないってあれ。その技は僕のなんですけど」


 思わず吹き出しそうになった。そんなことでなの? そして、いつからアンタのになったんだよ。


「かといって対策なんてできないでしょ? 戦いを挑むしかないんじゃない?」


「僕に考えがあります」


「何?」


 いつになく真剣な表情だった。


「僕を奴隷にしてくれませんか?」


「えっ?」


「縛って欲しいんです……」


 私は席をそっと立ち上がった。


「そういうのはちょっと……」


「いやいや、誤解ですって」


 慌ててカシンが止めに来た。そして、事情を聞くとちゃんとした理由があった。


「アンタは大丈夫なのね?」


「えぇ、やれる事はやっておきたいんです」


 そしてまた、カエル達と戦った商店街に来た。


「この辺りがタイガーの拠点って言ってましたね。確かに履歴も全てこの辺り。ここでマッチングしてみましょうか」


「なんか、緊張してきたわ」


「どうやら噂をすれば早速来たようです」


 向かいに男女ペアがいた。一見不釣り合いな雰囲気な感じがする。男は眼鏡をかけたオタクっぽい感じ。女は清楚でおしとやかな感じ。



━━━━タッグバトル━━━━


カシン・シュリVSタイガ・キョウコ


━━━━━━━━━━━━━━



「あの子がそうみたいね」


「えぇ、油断は禁物です」


『バトルスタート』


【59:59】……


 私はすぐに髪を伸ばし戦闘態勢に入った。


「あはっ。いい女だぁ。大人の色気ヤバいねぇ」


「相変わらず気持ち悪っ。さっさとやんぞ」


「ひどいよキョウコちゃん。僕はキョウコちゃんだけだから」


「だから、キモいんだよ。気安く名前を呼ぶな、準備しろ」


 男があからさまにシュンとしている。すると女が向かって来た。どうやら見ている限り囚えられた奴隷という雰囲気ではない。


「これ、まずいですね。最悪の展開かもしれません」


「それってまさかよね……」


「えぇ、罠にかかってしまいました。どうやらカエル達もタイガーグループだったようです。おそらく、必殺技も伝わってますよ」


 あいつ騙したわね。許さない覚えときなさいよ。


「まぁでも、倒せばいいんでしょ?」


「簡単に言いますね…」


 手の平を向かって来るキョウコに向けた。命を与えられたように蠢く髪が目の前の女に伸びていく。


 蠢く髪にも一切動じる事なくキョウコはそのまま突っ込んできた。関係ない。そのまま串刺しよ。


 髪はそのまま貫こうとしたが、キョウコの体に触れるとピタっと動きを止めた。


「えっ何?」


「言ってた通りね」


 キョウコはそのまま毛を掴み力で私を引っ張り倒した。


「痛ったい。どうなってんのよ」


 私は万が一の時用に仕込んだナイフで掴まれた毛の束を切った。武器も相手に使用しなければ禁止に当たらない。


「まずはアンタからね」


「そうはさせない」


 後からカシンがキョウコの首を締める。腕を回して締め落とすつもりらしいが様子がおかしい。


「分かった。君、体を硬質化してるんだな。この防御力は針じゃ貫けそうにないな…」


「私だって1人じゃ2人を同時には倒せそうもないわ」


 ここで恐れていたさらに最悪の事態に気付く。


「ちょ、アンタもう1人どこ行ったのよ?」


「まずいですね。この状況はまさしく……」


 そうだ。カエルが言ってた『タイガーは負けた事に気付かない』。どこからか狙って暗殺するパターン。


「私じゃ守り切れないわよ」


 この1人が囮になってもう1人がトドメをさすパターン、いざ使われるとこうも戦いにくいとはね。


「えぇ。俺の戦略……ムカつくんだよなぁ」


 あいつ完全にキレてるわね。


 作戦忘れてないでしょうね?

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副業ゲーム 朝陽の雫 @asahi_no_shizuku

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