カイリキング
今回も勝ちは確定だな。まるで相手にならない。
この命がけの勝負において好戦的なやつ、仕方無しに戦うやつ、逃げるやつ。どのパターンでも俺は負けなかった。
特に逃げるやつは最も弱い。フィールドが狭まる時間を待つのが面倒ってだけだ。
好戦的なやつはそれなりに強い印象だが、打ち合っても俺は負けない自信がある。これまでも全員ぶちのめしてきた。いくら超人的な必殺技とはいえ、それは元々の身体能力をベースにしているからだ。
普段からストイックに体を鍛えあげている。それに俺は、格闘技の経験もある。それこそ、格闘技のプロにでも対戦で当たらない限り俺は負けない自信がある。こんな一般人なんかに一発でも当てられてたまるかよ。
しかもあいつ何の能力なんだ? 殴り飛ばした時、タコみたいに感触が柔らかかった。あれで衝撃を吸収したのは間違いない。ダメージはほとんどないと思われる。
だから、何だ? ダメージ吸収? バカじゃねぇのか?
意外な必殺技に驚きはしたが、自分を守っても意味がない。勝利するには、負けを認めさせるか、相手を殺す気持ちで殴るしかないんだ。
あんな軟体で俺にどう負けさせる? 軟体だとむしろ攻撃にならないだろ? やつは今までで最弱のバカ。間違いねぇな。
普通、強化するならパワーなんだ。なのに、攻撃される前提で必殺技を考えてどうする? 気持ちからして負けている。そんなんだから、勝利を掴めないんだよ。
もう、俺はやつを殺して10人目だ。
1人殺して100万だった。2人目は200万、3人目は300万。そして、やつを殺せば1000万。なんて、ちょろい仕事なんだ。100人目にいけば……
仕事なんてとうに辞めた。俺は遊んで暮らす事にしたんだ。
金はいつでも簡単に稼げる。だから、何でも好きな事ができるんだ。好きな物が食べれる。好きな場所に旅行ができる。好きなだけ趣味に費やせる。好きなだけ女も抱ける。何でも叶えられる。誰にも邪魔はさせない。
そんな中、目の前のバカが何かをほざきやがった。
「おいっ。あんた、対戦中に相手から目を離していいのかよ?」
何だ? 負け惜しみか? 寝ぼけてても勝てそうな相手だが、俺は絶対に油断はしない。勝負には何があるか分からないからだ。
「はははっ。無駄な負け惜しみはやめろ。お前に逃げ場はない。逃げても隠れても最終的にここに戻らなければならない。お前はもうサンドバッグ確定なんだよ」
状況としては、向こう側にもこちら側にも階段がある。最悪の逃げ場としては線路もある。
例えば俺の死角をついて向こう側の階段を使って反対側から来ても、売店の横から急に飛び出して来ても、どこから攻撃してきても余裕で対応できる。
周りにいる一般人もさほど多くない。集団に紛れる。後ろに隠れるも無理だ。絶対に逃さない。顔を見付けたら、一撃で返り討ちにしてやる。
どう甘くみても負ける要素が見当たらない。
【54:58】……。時間にしてまだ5分程。残り時間が億劫だな。早く過ぎろよ。ったく。
しかし、時給1000万だ。これくらい、いくらでも我慢してやるよ。さーて、ぶちのめしたら美味いものでも食べて、その後は……
……何だ?
「ゴホッ……っ……かはぁ…」
咳き込み大量の血を吐き出す。猛烈な首と喉の痛み。燃え上がるような熱さ。
何なんだこれは?
俺の視界から下、おそらく喉の辺りから細長い針のようなものが突き出ている
状況の理解が追いついた頃、思わぬ言葉が聞こえてきた。
「ったく。命がけの勝負なのに、油断なんかするからそんな事になるんだよ」
クソがぁぁっ!バカにしやがって!
ついさっき俺の吐いたセリフをそのまま返してきやがった。すかさず必殺技を発動し、声にならない声で雄叫びをあげながら暴れるように裏拳で攻撃を試みる。
「ア゛ア゛ァァァァァッ」
感情のままに放った一撃は余裕の動きでかわされた。
その際に引き抜いた長い針。やつを見ると右手人差し指だけ長く鋭く尖っていた。あれは一体何なんだ……。
あれで俺の喉をついたのは間違いない。そして、徐々に元の指に戻っていった。
軟体で伸ばした指をそのまま硬質化したような……。いや、だからってそれは簡単に背後を取れるような必殺技じゃねぇだろ!
一体、何しやがったんだ!
「だから、言ったのに。目を離して大丈夫か?ってな」
くそっ、くそっ! 悔しいが体が動かない。必死に喉を押さえるが出血も止まらない。ふらついて立つのも限界だ。もうバトルどころじゃない。致命傷だなこれ……。
もう、思考も面倒になってきた……。
指先にも力が入らない。
そして、そのまま俺は前へと倒れ込み意識を失った。
━━━━ソロバトル━━━━
カシンVSカイリキング
勝者・カシン
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