砂漠の王国を見守る、優しき水の民の物語。

 水の蜂。それは、自らの命から水を生み出し、渇いた大地に恵みをもたらす存在。数百年前に滅びたとされる彼らの痕跡を追うべく、三人の青年が旅を始める。一人は学者、一人は炎を司る少年、一人は寡黙な水の剣士。立場も性格も違う三人は旅を続ける中で少しずつ絆を育み、互いの幸福を心から願うようになる。果たして彼らは「水の蜂」の謎を解き明かし、渇いた大地に雨を振らせることができるのか。

 この作品の魅力は何と言っても、三人の友情にあると思います。旅をする中で思いがけない互いの事情を知り、それゆえに関係が危ぶまれることもあるのですが、最後には元に戻ってより絆を深めていく。戦闘場面では互いを守るために懸命に戦い、時には自分が傷を負ってでも仲間を助けようとする。そんな彼らの姿は胸を打ち、少年漫画的熱さを感じさせてくれます。

 もう一つの見所が迫力ある戦闘描写。本作に登場する属性は水と炎であり、戦闘場面ではこれらを駆使した攻防が活き活きと描かれます。時には同じ属性同士が戦うこともあり、炎の同士の攻防は熱を、水同士の攻防は美しさを感じさせてくれます。まるで目の前で戦闘が繰り広げられているような描写の数々に魅入ってしまい、ページをタップする手が止まらないこと請け合いです。

 そんな三人の冒険にはマスコットキャラクターが登場します。その名もニョン。名前だけではどんな生き物か全くわかりませんが、その実体はモフモフの毛玉。その手触りがどんなものか、ぜひ登場人物の感想を聞いてあげてみてください。

 時にほのぼの、時にシリアス。だけど最後には希望がある。そんな魅力あふれる王道ファンタジーを、ぜひ体験してみてください。

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