それは思いがけない、甘い出逢い。月で見つけた卵のような。

恋人とのお付き合いや結婚は、一人でできない。その最初、今から交際を始めるという時、二人ともが同時に同じだけの愛を抱えていることはあるんだろうか。

このエッセイを拝読して考えたのは、まずこれでした。
一方からの告白。「私で良かったら」と受け入れ、友人から恋人に視点が変わる。
今の世の中、まだまだ特別と言われてしまう関係。でもお互いを見ている限り、そこに不安はないようです。

後悔はあったでしょう。
告白しないほうが良かったのでは。そうしたって以前のままでは居られない。じゃあ他に選択肢はない。でも二度と会えなくなったら。
迷いはあったでしょう。
左利きの鋏を探すような日常。まだ知らない誰かに、なんと話すか。

互いの胸に愛を注ぎ合う。けれどどれだけ溜まったか、自分のも相手のも見えない。
恋しいとだけ、気持ちという結果が心を焦がす。
迷いや焦りがそれを減らしたり、色味や匂いを変えたりする。
きっとそうやってシーソーのように、どちらかが行き過ぎるのを繰り返すのが恋人同士なのだと思います。
お互いがお互いを、同じだけ好きでいる。そんな瞬間はないのだろうと思います。

このエッセイの結末はまでを読ませていただいて、とても胸が苦しくなりました。
やはりこのお二人は、とても大きな器を用意していたんだなと分かったから。
もっと、もっと。どこまでも注ぎ合ってほしいなとは、無責任な第三者であるところの私の感想です。
世の中、できることとできないことがあるのですよね。お二人に、いついつまでも幸福があることを祈ります。

その他のおすすめレビュー

須能 雪羽さんの他のおすすめレビュー117