ほろ苦い。でも、「恋」をする人たちへのエールのような気がする。

『雪に咲む』は、作者さんが経験した恋が綴られているのですが、それは女性同士のお話です。作者さんは異性愛者ですが、「恋愛対象に女の子も含む」とカミングアウトした雪乃さんからの告白を受け止め、恋人同士になります。

 その日常はとても穏やかで、そしてお互いを思いやっていて。好きだからこそ言えないことがありつつも、大切な日々を過ごしていく二人の関係は、読者としても応援したくなるものです。
 しかしこの二人の関係は、新型コロナウイルスの蔓延による外出自粛の影響を受け、少しずつ変わっていきます。この先のお話は、是非本編を読んでいただきたいです。

「恋」というのは、人によって捉え方が違う言葉だと思います。
 辞書を引いてみても、この語釈は辞書によってそれぞれ違います。近年新しく改訂された版は特に、LGBTを意識して、男女に限定していない書き方をしているものが多くなりました。それでも「恋」というものを捉えるのは難しいと感じます。
 ただ、この作品のなかでの「恋人」については、言葉にできると思います。
それはお互いにとってなくてはならない、対等な相手。親との関係も、子どもとの関係でもない。兄弟(姉妹)の関係でもない。家族のように近いけれど、そこには当てはまらない特別な人。そういう人との間にあるのが「恋」なのかなと、この作品を読んでいて思いました。

 思うにこの話は、人とは違う「恋」をして悩む人たちへのエールが含まれていると思います。人との違いを恐れずに。大切なものが何なのかを見失わないように。
ほろ苦さがあるお話ですが、沢山のことを得られるお話です。よかったら読んでみてはいかがでしょう。

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