聖夜。毒の降る街に積もるのは清らかな想い

今から何十年も先の未来のお話。屋外を歩くには、宇宙服のような防毒機能付きのスーツを着用しなければ死んでしまう世界。

主人公『リンカ』は、そんな危うげな中で営業する喫茶店に勤める女性です。

個性的で、でもどこかで出会ったことのあるようなお客さんたち。
優しくて温かな空気を纏う、イケオジのマスター。
そういう喫茶店を、『リンカ』は愛しています。きっとこの世の誰よりも。

一日、一日。近づいてくるクリスマス。
『リンカ』は準備に余念がありません。必ずやらなくてはならないことがあるから。
次のクリスマスは一度しか来ないから。やり直しなんてできない、大切な約束だから……
 ***
と、物語を掻い摘んでいけば。これがそのまま
『終末喫茶でメリークリスマスを 〜アドベントカレンダー2024〜』
という作品を読んだ私が、好きと言えるポイントになります。

毒の降る世界というほかは、現代と同じ日常を感じられます。けれどもやはり、この世界に生きる人の日常を毒は蝕んでいます。
きっとそれは、ずっと先の人達にも影響を及ぼすような、とても重大なこと。

もしもこの喫茶店みたいな心安らぐ場所を見つけられるなら。どうやってでも辿り着きたいと、たとえ何年、何十年かかってもと。
そんな風に強く思わせてくれました。

もう一つ、もしもこの喫茶店みたいな大切な場所やものを既に持っているなら。永遠に持ち続けられるという保証はどこにもない。だから大切に、その場所へ居られる自分であり続けなければ。
そんな風に律してくれるお話でした。

その他のおすすめレビュー

須能 雪羽さんの他のおすすめレビュー120