①
人気もない、放課後の校内にて。
普段から無愛想な面持ちの
「ちょお待ってて~修治ィ~!」
その表情は、後ろに付いてくる幼なじみ…
気付けば別館で…立ち入り禁止になっている屋上へと続く階段前まで、来てしまっている。
「なぁ修治って~1回だけでそげん怒らんとさ~」
たかが女の子とチューしただけたい、と。
勘弁してよと言いながら…全く悪びれた様子のない幼なじみに対し。修治は奥歯を噛み締める。
「なんがたかがとや?俺がそげんことば好かんて知っととやろが…」
整った容姿の割に、愛想も笑顔もない不器用な修治は。一部の生徒や教師から怖い印象を持たれ、不良みたいな扱いをされていたが…。
実は真面目で硬派だったりする為。
地味にモテる癖に童貞で、恋愛経験も未だ無し────…とは、幼なじみ絢斗の見解。
と…そんなわけで。
不純極まりない行為に対しては、このように厳しい態度を見せるのであった。
「ばってん…オレにも理由があっとばい~!」
「言い訳は聞きとうなか…。」
とにかく、これ以上お前には付き合い切れないと…修治は別れるの一点張りで。絢斗は媚びるような笑顔から、ふてぶてしくぷっくり頬を膨らませてみせる。
絢斗も修治とは対称的だが、かなりの美形であり。
修治がクールで強面な雰囲気なら、絢斗は逆に今時な容姿で人懐っこい印象といったとこだろう。
悪く言えば軽いというか…チャラチャラした遊び人風なわけで。
彼に至っては見たまんま。
普段から女の子を侍らせては…とっかえひっかえに付き合うような人間だった。
とはいえ不摂生な絢斗にも、それなりの理由があったのだが…。そのツケが、現状を悪化させてしまったのは紛れもない事実だった。
「理由て…浮気になんの理由があっとや?」
反省を見せない絢斗の態度に、修治は冷たい視線を向けてくる。
紆余曲折、色々あって単なる幼なじみから、恋人同士になった修治と絢斗。
昔から女タラシだった絢斗も修治と付き合うようになってからは、そういった事もなくなっていたというのに…。
『アタシ絢斗にチューされたとさね~』
『はぁ~?絢斗クン、そげん事ばもうせんて言うとったとに~!』
たまたま聞いた女子達の会話で知った“浮気”の二文字。
交際3ヶ月目で発覚した、裏切りに憤った修治は。
先ほど絢斗に対し、恋人解消を宣告してきたのであった。
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