③
「はぁ?何言ってやがる。ここは俺の────」
部屋、じゃねぇ!?
って………ええええぇ!!?
一気に目覚め行く脳内で、この現実を把握すると…
まず、俺は兄貴の部屋で勝手に寛いでいて。
眠くなったから布団に入って、と…。
暫く寝ていたら、春流が布団に入っ─────…って来るハズがなく。
…ってことは、だ。
「えっ…な、つ…さん?」
「せっ、晴二くん…!?」
そう、俺がさっきまで寝てたベッド上には春流の兄ちゃん…夏津さんがいて。
となると、俺が今イチャコラしようとした相手は───…
マジかよ…
「覚悟は出来てんだろうなぁ?いくら馬鹿な弟でも、俺のモノに手をつけたらどうなるか…」
奴は本気だ。
眼がそう物語っている。
ヤバい…いくら勘違いで起きた不祥事と云えど、
そんな言い訳が通用するような雰囲気じゃねぇし…
俺、ピンチじゃね?
「待って、陽一…!」
そこへ泣きながら、俺と兄貴の間に割って入る夏津さん。
長い睫毛を濡らし、
ぽろぽろと涙を零しながら兄貴に縋りつく。
こうなると夏津さんだけが頼りだぜ…。
「違うんだ、陽一…僕が────…」
どうやら夏津さんは、喧嘩してしまった事を後悔したらしく。仲直りするために、兄貴の部屋へとやって来たんだけども。
部屋も暗く、俺が布団を目深に被っていた事もあり。
要はベッドで寝てた俺を、兄貴と勘違いしてしまった…と言うわけだ。
途中、違和感を抱いたらしいんだけどね…。
「ごめん…僕が悪いんだ。こんな事になるなら、変なヤキモチなんか妬かなければ良かった…。」
「夏津…」
泣きじゃくる夏津さんの肩を抱き寄せる兄貴。
一瞬ビクリと肩を揺らした夏津さんは、ごめんと何度も口にしながらその胸に顔を埋める。
何コレ、俺ちょーアウェイな感じなんスけど…?
「ばーか。んなの気にしてねぇよ…。それだけ俺に惚れちまってるって、事なんだろう?」
我が兄ながら、よくそんなクサい台詞吐けるよな…。普段は俺に死ねだのボケだの言ってるクセに。
「うん、愛してる…」
流石、兄貴の恋人。こっちも良いカウンターしてるよ…。
そのヤラシイ上目遣いは、主演女優も真っ青だ。
「夏津…」
「陽一…」
見つめ合うふたり。
まるで別世界、映画のスクリーンを観てるみたいに、その距離が縮まって─────…
「ンッ、ふぅ…」
……………。
ちょっとちょっと、そりゃないっしょ…
俺の存在など最早眼中になく。ふたりは唇を寄せ合って…
それだけなら良かったんだけども。
「アッ…ンンッ…」
「フッ…3日もシてねえから、溜まってんのか?」
「んっ…早くキて…ああっ…!!」
ゴクリ…
動くに動けず、とか言ってちゃっかりその光景を堪能していたら─────…
「でっ…!!」
兄貴の長~い足が、座ったままの俺の頭に直撃して。
「邪魔だ、出ていけ。」
ズド━━ンとドSな命令を下され。
俺は這うように、いそいそと部屋を後にした。
閉じられたドアから施錠音がしたかと思うと、
すぐさま夏津さんのエロい声が…
「え?俺って、一体…」
ズキズキと疼く頭と下半身を持て余し、
俺は暫くその場所から動けなかった。
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