冬夜


ちょいワル?美形×美少年ほんわか中学生

甘々、年の差(19歳×14歳)


━━━━━━━・・・




僕はその場所が好きだった。

一番好きなのは、僕の名前でもある冬。

土手なんて、冬は極寒で全身震えちゃうけど、


だからこそ、好き。





冬の川べりは誰もいない。

その道を行き交う人も少なくって。


橋の影、人目に付かないその場所が…

僕のお気に入り。




冷たい石の上に腰掛けて、

目を閉じ、

流れる水音に耳を傾ける。


風がたまに吹けば、ざわめく山々の音と鳶の声が相成って、



とっても、清々しい気持ちになるんだ。






あとはこの、季節の香り。

定番な春の香りも素敵だけど…


やっぱり僕は吸うと鼻がツンとするような、

凍れるこの季節の匂いが一番好きだった。





誰にも見つからない、秘密基地で今日も。

学校サボって、目を閉じてたんだけど…



そしたら─────…







「んっ………?」


突然唇に降りた、微かな熱と感触。

驚いてゆっくり、瞳を開けたら…






「冷たいな、唇。」


「だ、れ…?」


そのお兄さんは、とってもピカピカ太陽みたいな人で…


ちょっと怖そうだけど。

ニカッと笑うと、すんごく格好良かった。





すす汚れの繋ぎで、銀色の短髪がツンツンしてて。

屈んでてもとっても大きなお兄さん。



こんなカッコ良い人は初めてで。

僕はつい顔を赤らめ、魅とれてしまったんだ。






「ん~俺、すぐそこで解体業してんだ。少年は?」


僕が女の子だって勘違いした訳じゃないんだ…。

当たり前だよね、制服来てるんだし。



じゃあ、何で…。






「知りたいか?」


とりあえず頷く。

するとまたニッコリ笑って、ボクの唇を指の背でなぞるんだ。





「キレイ、だったんだ。」


冬の澄んだ空気に混じって、余りにもひっそりと健気に輝いていたから。






「ずっと、見てた…お前のコト。」


いつも、朝からここにきて…ぼんやりしてるだけの僕を?






「もっかい、してい?」


名前も知らないお兄さん。

だけど、その曇りのない笑顔がとても素敵で。


瞳を逸らせられなかったから。






「いい、ですヨ…。」


なんて、とんでもないこと口走ってしまってた。



…もう、手遅れみたい。






瞳を閉じて、今度はアナタの熱へ研ぎ澄ませば。



春が近いな、と思った。






その人の名は、





────────…春樹。



…end.

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