初めての嫉妬(byチヒロ)
部活動の勧誘がされるようになったころ、マキはなんだか難しい顔をして何事かを悩み始めた。
部活動のことで悩んでいるのはすぐにわかった。歓迎会の際に貰った部活動紹介の冊子を見て悩ましい顔をしていたからな。
家庭部のページで目が止まっていたから、おそらくその部活に入部したいのだろう。
マキならすぐさま行動しそうなものだが、何故悩む必要があるのだろうか・・・・・・?
一週間が経ったがマキの悩みはまだ解決していない。
マキから言ってこない限りこちらからは何も聞かない。がやや気になると言えばうそではない。
まぁ、どうしようが個人の勝手だしな。
委員会決めの際、あまり元気のない顔でそんな素振りを全く見せなかったマキが突然風紀委員に手を挙げたことには驚いた。それに反応した奴らがこぞって手を挙げたため、最初から挙げていた俺やマキが手を挙げたと知って慌てて手を挙げたユウキもじゃんけんで決めることとなった。
ユウキを睨み、絶対マキと二人で風紀委員になってやると視線で伝える。こういう子供じみた行動も取るようになったものだと内心呆れるが。
するとユウキの方もメガネの奥でうっすら目を三日月型に細め、まるで『こっちもですよ』と言っているようだった。やはり態度がムカつくな・・・・・・。
最終的に俺ら三人を含む五人くらいが残り、皆に緊張がはしる。
そして俺らはマキと二人きりで委員になることを思い浮かべ、手を輪の中に差し出した。
結果俺とユウキが勝ち、皆は『チェッ』と悔しそうに、マキは残念そうに席に戻っていった。しかし俺たちは僅かなショックで動きが遅くなってしまった。
最悪の事態になった。これは予想していなかったことだ。
マキもいねぇのに風紀とか・・・めんどくせぇ・・・・・・。
授業後、不機嫌さを顔に出しながら委員会の教室へ向かう。マキは俺たちの委員会が終わるのを待ってくれるようだ。早く終わらせてぇ。
ユウキも後ろ髪を引かれる様子でマキと離れ、すぐにブスッとした顔になった。
「あーあ、師匠と二人なんて・・・・・・マキくんといっしょになりたかったのに」
「それは俺もだ」
「師匠・・・・・・、今からでもマキくんと変わってくれませんか?」
「おい、今の聞いてただろうが。お前が変われ」
「あっ、他の奴に変わりましょうか? だったら俺は委員会なくなるから師匠が委員会の間にマキくんといられるし!うん!我ながらいいアイデアだ」
「おい、一回決まったらもう取り消せねぇのわかってるか?」
「えっ、そうなんですか!?だったら思わせぶりなことを言わないでくださいよ~。本気にしちゃったじゃないですかー」
「知るか」
「あ、ここですね。 しつれいしまーす・・・」
俺たちが指定された教室へ入ると、もうすでに俺たち以外の委員が着席しており圧を感じる。
「遅いっ!!!チャイムが鳴ったのは5分も前だぞ!!一体何をしていたんだ!!!」
「いや・・・、別に。普通に鳴ってから来たんですけど」
「“普通に”となんだ“普通に”とは!!! いいかお前たち、他の1年は――
『あ、これめんどくせぇやつだな』
と、俺とユウキは脳内でハモった。
『悪ぃ/ごめんなさい マキ(くん)、早く帰れそうに ねぇわ/ないです』
案の定、最初に説教してきた奴が委員長となり、抱負やこれからの仕事の概要などを一時間くらい喋り続けた。
20分の説教の後に、だ。
「あの人話長い・・・」
ブツブツと文句を言うユウキを横に急ぎ足で階段を降りていると、途中で猿里八と会い同じ場所に向かう。
外へ出ると、花壇の近くのベンチに和馬といるのが見え、猿里八が大声で和馬の名を呼び駆け寄る。
和馬は名を大声で呼ばれ引き攣った笑みをしていたが、隣にいるマキはさっきとはうって変わって晴れ晴れとした顔をしていた。
帰りにマキは俺たちに部活動で悩んでいたことを告白したが、正直少子抜けをした。『そんなことで悩んでいたのか』という気持ちと、『マキなら考えずにまず行動しそうだと思ったのに意外だ』という気持ちとが浮かび上がったが、マキの中では重要な問題だったのだし、後者もマキのことを勝手に決めつけている現れだろう。俺はすぐその考えを捨てた。
それにしても、マキは何に縛られて悩んでいたのだろうか。自由なはずなのに。
マキが話し終わった後、俺たち三人はそれぞれ入部することを決めた部活動を挙げると、マキは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしたあと、肩から一気に力が抜けた。
一体何を思っていたのか。全くわからないが、マキは清々とした顔をし今度こそ太陽のごとくキラキラした笑顔を振りまくのだった。
まあ、悩みがなくなったのは良かったが。
和馬に悩みを話したのだろうか・・・・・・
悩みが解消されてよかったと思う反面、
和馬に対し少し穏やかではない思いを抱いてしまう。
本当に、お前と会ってからだよ。
嫉妬なんていう感情も抱くようになったのは。
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