第5話 ライバルの登場?
俺たちは中学生になり、そこでも俺たちは周囲から浮いていた。
チヒロとマキは一緒にいるというのが常で、
裏で2人は“夫婦”と言われているのを本人達は知らない。
「まぁ~きぃ~ 今日の放課後校舎裏こいやぁ!!!!!」
またこいつだ。昔っから何回やられても繰り返しやられに来る相手、
実はこいつ、”あのときのボス”だったりする。
朝、俺は早めに着いた教室で朝ご飯のタコスをもぐもぐ食べていた(手作り)。俺の席は窓際の後ろから2番目。結構いい席だぞ!午後に窓を開けると生暖かく、でも少し爽やかな風がそよそよ吹いてきて昼寝をしている俺の髪をふわふわ撫でるんだ。気持ちいいぞー。
で、チヒロは俺の後ろの席だ。席替えは、日直が一回りしたらクジで決めることになっていて、完全に運。でも俺たちはいつもここの席を引き当てる・・・・・・。めちゃ運良くね?ココ、俺のベスト席だから席変わんなくてもぜんっぜん嫌じゃないもん。
チヒロは後ろの席で腕組んで静かに熟睡していて、そして俺はその前の席でもぐもぐしていた時、
いきなり教室のドアがスパンッ!と開いてつかつかとこちらに近づき俺の机に両手をバンッとついて発したのが先ほどのあの言葉だ。
猿里八はまだ中学生なのにピアスは付けてるわ、髪の色は青色だわで、要するにあまりお近づきになりたくない相手だ。だがイケメン。
学校側から何も言われていないのが解せない・・・・・・。校則ユルユルやん。
「おい!聞いてんのか!?あ゛あ゛!??」
猿里八は眉毛を八の字にして目を大きく開き、口も大きく開いた顔で俺の顔を覗き込んで挑発してくる。
なんだその顔。八巻の「八」はその眉毛からきたのか、このやろう。
「見てわかんない!? 今、俺、飯の最中!」
こいつは相手するのが疲れる。だからいつも適当にあしらっているのだが・・・・・・
「じゃあ、お前の負けってことで、やっと俺の嫁になる覚悟ができたってことでいいんだなぁ?」
は?何言ってんだこいつ って、思うでしょ? 俺も思います。
猿里八は『鼠になれっ!』1巻のチヒロのライバル役で登場し、その後もメインになってくるキャラクターである。小さい頃からそこそこ強かったものの、ある日子分がチヒロにやられたことからチヒロにけんかをふっかけるが、叩きのめされる。そこでプライドを粉々にされた猿里八はリベンジを誓い、絶対にチヒロを倒すと毎日鍛錬を積む。ちなみに小中とチヒロとは別の学校に通っていたが、勉強面でもチヒロに負けまいと猛勉強し、晴れてチヒロ達と同じ高校に受かり、リベンジを仕掛けようとするのである。
こいつ、勉強はできるはずなんだが・・・・・・なんというか、バカなんだよな・・・・・・・・・
ちなみに性格は最っ悪。いつも誰か彼かボコして遊んでいる奴だ(弱い物いじめではない。限度がないだけ)。しかもめちゃくちゃ楽しんでいる。でもボコされてる奴って大概が奴にけんか売った奴だから、自業自得なんだよな・・・・・・結局。
入学して早々、生徒が猿里八にいたぶられている現場を目撃したユウキが弱いながらもボコされている子を庇い、奴に目を付けられてしまう。
この世界の人は基本、正々堂々と勝負するタイプの人間で、ユウキは猿里八に『じゃあ、こいつの代わりにてめぇが俺と戦えや』と勝負を挑まれてしまう。チヒロやマキがなんとかしようとしたがユウキは折れず、勝負に挑む。誰もがひょろくてオタク気質の眼鏡がボロと負けするだろうと思われたが、なんとユウキはミラクル体質で奇跡的に猿里八に勝つのである。ユウキは偶然でも怪我を負わせてしまった猿里八に近づき、傷ついたほっぺたや腕にかわいい柄の絆創膏を貼ってあげる。堂々と猿里八の行動を非難した威勢の良さと、勝負の後のおろおろとした態度、そして可愛い絆創膏というギャップに猿里八はやられてしまうのだ。しかも自分より強いときた。(ミラクルだけど)
そして、猿里八はユウキの腕をつかみ、
『クソッ! 強えなお前・・・。こんなひょろっちいのに。・・・・・・ハハッ
気に入った。お前、俺の嫁になれよ』
と、頭の思考回路がどこかおかしいこの男はこんな爆弾発言をするのだ。
そこでマキが、
『負けてる奴が何言ってんだ? せめて勝ってからにしろよな!!』
と余計なことを言ってしまい、猿里八はその後チヒロ班(チヒロ、マキ、ユウキ)に毎回なんやかんや突っかかるようになるのである。そして毎回ユウキを守り隊(チヒロ&マキ)に撃沈させられる。ちなみにマキは猿里八より強い。
そして漫画を読んでいく内に『えっ、前のお前どこ行った?』と突っ込みたくなるほど、ただの猪突猛進型好青年へと変貌を遂げるのだ。
で、なんでこいつが今・俺たちと同じ学校にいて、こんなに俺・に絡んでくるのかというと・・・・・・
かなり振り返ることになるが、それはご愛敬ということで・・・・・・
――『おまえは、おれがまもるから』
俺がチヒロに参戦した瞬間、全員の動きが止まった。
・・・・・・え、ダメ だった・・・・・・?
俺は『この世界でのケンカの暗黙のルールとかあったっけ?例えば急な参加は御法度、とか!』と頭の中でぐるぐる考えていたが、しばらくして、
『おんながおとこのけんかにはいってくんじゃねえよっ!』
と言われた。
あ゛ん?誰が女じゃと?目が大きく髪もそこそこ伸ばしていたことから勘違いしたらしい。
『おれはおんなじゃないっ!!』
そう言って俺は相対してた子分を殴り、八つ当たりをした。
そしたら皆唖然としたが、しばらくしてケンカが再開した。俺も猿里八と闘い、勝った。
『おまえ、かわいいのにつよいなっ!』
・・・・・・は?と思っていたら、奴は思いもよらない台詞を吐いた。
『おまえ、つよくてきれいでかわいいからおれのおよめさんになれよ!!』
・・・・・・はい?今なんとオッシャイマシタカ??オヨメサン??
・・・・・・いやいやいやいやいや!!!!なにそれ!!?しかもなんか聞いたことある台詞だし・・・・・・・・・
『なにばかなこといってるんだよ。おとことおとこはけっこんできないんだぞ』
俺は正論をぶつけたが、「そこじゃねえだろ、突っ込むところ・・・」と今なら思う。
『は?なにいってんだおまえ。おとこどうしでもけっこんできるっつーの。ばかはおまえだ』
え、そうなの?
俺はチヒロの方を向いて「まじ?」と目で訪ねたら、頷かれた。
『いや、やだけど』
即刻振った。
そしたら彼は少し涙目になりながらも子分を引き連れて、
『おれはあきらめない!またしょうぶしろ!!・・・・・・くそっ、おまえもっ!おぼえてろよ!!』
と、最後はチヒロにもガンを飛ばしながら捨て台詞を吐いて走り去って行った。
その後なんとも言えない空気の中、俺はチヒロに自己紹介するしかできなかった。
俺は、それから毎日チヒロと共にいる俺を見つけては勝負を仕掛けてくるあいつが将来チヒロの恋のライバルとなる”猿里八 八巻”だということを知らなかった。
だって、髪の色が黒かったんだもん。
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