第6話 ライバルの登場? 2
それからあいつは毎日会いに来た。
『しょうぶしろまき!』
マキ圧勝。
『つ、つよい。おれのおよめさんになれっ!』
次の日
『しょうぶきにきたぞ、まき!』
勝負終了。
『まき、おまえおれのおよめさんになれ!』
また次の日
『しょうぶだまき!』
『やっぱりつええな、およめry』ごちんっ
『しつけぇ』
ある日チヒロに殴られた。
『まき、どうしたらおれのおよめさんになってくれるんだ!?』
『んー、おまえがおれにかったら?』
俺は負ける気がしなかった。だからこんなことを言ってしまった。
この言葉を聞いた猿里八は、てかいい加減猿里八言いにくいわ。「るりや」が言いにくいわ。もうこれからは八巻と呼ぼう。
八巻は、それからも変わらず頻繁に勝負を挑みに来ていたが、しばらくするとばったり来なくなった。
諦めたのだろうか・・・・・・。まあ、あいつも高校入ったらユウキに惚れるんだから、あれは気の迷いだったのだろう。と、あのまま会わなかったらそう解釈していただろう。
小学校に入学すると、毎日かなりの宿題に追われるようになり(でも俺たちはいつも早くに終わらせたがな、)しかも2人とも色々な部活から助っ人としてお呼ばれし、面倒ながらも2人ともちゃっかり楽しんでいたので昔よく遊んだ場所には行かなくなったのもあり、八巻を見ることはなくなった。
名前も知らなかったし、再び八巻に会うことはないと思っていたのだが・・・。
『よっ。ひさしぶりいぃい!? ほぇ・・・・・・カワイイ・・・』
『さるりや・・・・・・はちまき・・・・・・?』
あれは中学校の入学式の日だった――。
式が始まる前、俺はくりくりと自分の少しクセのついた髪の毛を指でいじりながら『あー、ひまだなー本でも持ってくれば良かったー』と、退屈そうにあくびを連発していた。
するとそのとき、俺の背後で人がざわっとした。
そして俺の肩に後ろからポンッと手が置かれ、それに反応し振り返ると相手の人差し指が俺のほっぺにむぎゅっと刺さった。
仕掛けた本人がニヤリとし、次の瞬間間の抜けたような顔を晒して発したのが先ほどの言葉。
『よっ。ひさしぶりいぃい!? ほぇ・・・・・・カワイイ・・・』
見上げると鮮やかな青色の髪に耳にはピアス、普段は目つきの悪い切れ長の目を見開いて顔を真っ赤に染めた、紛れもなく俺が知っている漫画の”猿里八 八巻”の少し幼いバージョンが立っていた。
『さるりや・・・・・・はちまき・・・・・・?』
俺はあっけにとられて、そうこぼした。
うわかっけぇええええ!!テンション上がるぅ。俺、けっこう猿里八八巻好きなんだよね~。髪、そしてピアス・・・・・・なんかツボるものがある。
もちろん2人の仲を邪魔するのはムカつくけど・・・・・・八巻はもう最初から安全キャラっていうか、見込みなしっていうか。仲良くなったら愛すべきサブキャラって感じになるんだよね。
こいつ、バカ正直で不器用でなんか可愛いんだよな。
あれ・・・・・・でも、なんで八巻がここにいるんだろう。
チヒロとこいつが再会するのは高校のはずだが・・・?てか久しぶりって言われたけど、俺こいつと会ったことあったっけか?てっきり俺がチヒロと合う前にチヒロとこいつが会っていたんだと思っていたけど。
俺たちが入学し、初めての昼食を屋上でとろうとした際屋上で人を笑顔でボッコボコにしていたところに出くわす。相手に意識がなくなり相手の胸ぐらから手を離して視線を上げたときに俺らと目が合い、
『よぉ。また会えたなぁ』
と、チヒロに向けて挑戦的に笑う、これが本来のこいつの登場の仕方だ。
なのにどうして・・・・・・
平静を取り戻したらしい相手が、
『俺は前より強くなった。ぜってぇお前に勝って俺の嫁にするかんな』
とおっしゃって俺のほっぺをむにっとつまんで真っ赤な顔のまま去って行った。
・・・・・・は?なんか既視感・・・。ん?なんか昔やけに俺に絡んできた奴の言葉と似て・・・・・・って、ファァァ!!?こっ、こいつもしかしてっ、、あのときの・・・ボスガキか!?
猿里八の髪の青色って、染めてたん!??
俺達とは学区が異なったため小学校は別々だったが、中学に入ると同時に近くに引っ越してきたらしい。なんと。漫画と違ってるけど、色々と大丈夫なのだろうか。と俺が言えたことではないよね。
そんな経緯で俺は今、朝の教室でこのしつこい八巻に絡まれているのである。
それにしてもどうして俺に絡んでくるんだろう・・・。
一回『なんでそんなに俺に絡むの?』って聞いたら、真っ赤な顔をしてボソボソと『かわええし、・・・強えから・・・。』とのたまった。なに、熱出てんの?結局答えよくわからんかった。絶対ユウキの方が、そしてチヒロの方が可愛ええやん!!
つーか、サブキャラの俺があいつに、何か気に入られることした??してないよね何も!?ただぶっ倒しただけだと思うのですが。
まあ、もとからこいつ殴り合いとか好きそうだし。「oyome」というワードも意味不明だが、俺と勝負する口実かなにかだろう・・・・・・どうせチビで細くて見た目チャラい俺に負けたのがプライド的に許せなかったんだ。
こいつの考えること、俺ほんとわかんない。てかわかろうとすると疲れる・・・・・・
でもまあ、俺が相手しないんだったらチヒロの方に行ってチヒロに迷惑かけるし、誰かがボコされんのもかわいそうだし、相手できる内は俺が相手をしよう。怪我しない程度にな・・・・・・
と、原作と全く異なることになったが、『まあ、最終的にチヒロとユウキがラブラブする未来は変わらないだろうからいいや』とほっとくことにしたのである。
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