第4話 この世界の真理(?)


気持ちよかった。


 俺の身体は動かした方がすこぶる健康らしい。


 いつものだるさが嘘みたいですごく軽くて思い通りに動かせて、まるで自分の身体じゃないみたいだった。






 そして、ケンカ終了時から黙ってじっとこちらを見ているチヒロ。






 か、かっっっっっこいいいいいい!!!!!!!そしてかわいい!!!!


 つやっつやの黒髪に目つきが悪くぶすっとした顔(この年齢の時からそんな顔だったんだねぇ!)。作品の中では見れなかったすごくレアなチビ姿!!


 それにしてもこの年で驚異的な強さだった・・・




 俺は心の叫びを顔には出さず、にかっと笑って自己紹介をし、左手を差し出した。






 「俺、真柴真希」




 俺はチヒロが左利きであるのを知っていたため自然と左手を出したが、相手はしばしの間固まり、そして、






 「俺は黒原千尋・・・」




 俺の手をつかんだ。






 これが、2人が赤の他人から知り合い(ケンカ仲間(?))へとなった瞬間だった。
















 それから、たくさんの時間をチヒロと過ごすようになった。


 チヒロの家は片親の家庭で、母は毎日働きに出ており彼はいつも1人で過ごしているらしい。


 俺の家とチヒロの家とはかなり近く、ちょうど双方の家の中間らへんにあるこじんまりとした公園でよく待ち合わせをして遊んだ。


 俺もチヒロもゲームをするより身体を動かす方が断然好きで、遊びといったらいつも2人で勝負していたことしか思い出せないくらいだ。まるで修行みたいだ。でもサッカーとか普通・・っぽい遊びもしたぞ。とにかく、俺にはスポーツでもなんでも身体を動かすということが爽やかで気持ちの良いものであった。




 「チヒロ、何して遊ぶ?」




 「手合わせとかか?」




 「・・・・・・(なんの? って、・・・殴り合いですよね・・・)」




 最強と呼ばれてもいいくらい強いチヒロと勝負って・・・・・・(汗)と、最初は冷や汗がすごかったが、やってみたら意外と楽しかった。それに可愛いチヒロの頼みだったしな・・・・・・ほらあの、キャラのファン的に、断りづらいというか・・・・・・ねぇ?


 それに、彼と戦っているときの俺の輝かしい笑顔を見れば楽しかったと言っているのも納得ものだろう。


 あと、ケンカ売ってくる奴を時々相手してたりもしました・・・・・・。








 こうして俺はチヒロ師匠のおかげで、その地でNO.2と呼ばれるようになった。






 俺とチヒロは同じ小学校に入学し、結構有名だった俺たちは益々有名になってしまった気がする。


 有名って、べ、別に俺たちが問題児だったって訳ではないぞ?断じてっ!まぁあれだな。むしろ2人とも勉強めっちゃできて優等生だったし運動もできたしで、何ならモテまくってたからそれで益々有名にだな・・・・・・






 俺たちが相手にしていたのはいじめっ子や問題児だった。相手したっていうか、売られたけんかを買っただけというか・・・・・・


 でも、いつも無傷で済むわけでもなく、過保護な親に気づかれるのも当たり前というもので・・・・・・




 「まあ!!マキちゃん!!! どうしたのこの傷!!!!」




 「マキ、これはどうしたんだ!?父さんに話してみなさい」




 大騒ぎになった(主に母。父はなんだか落ち着いている)。


 とにかく父さんの笑顔が怖い。てか、笑ってるのか??もし俺がいじめられたとか言ったら相手の存在をこの世界から抹消しそうな怖さがあった・・・・・・。






 俺は小学校に入る前からのことを白状した。


 なぜ今まで2人にバレなかったのかというと、小学校に入る前に戦ってた奴らはそんなに強くない奴ばっかりだったからだ。(なのに何度も立ち向かってくる。Mだったのかな?)小学校に入って『井の中の蛙、大海を知らず』だったことを実感した。おそらくこれから先、まだまだ強い奴と出会うのだろう。バトルものの漫画の主人公のように、わくわくしてくるぜ。






 てっきり、「もうそんな子チヒロとは付き合うのやめなさい」とか言われるかと思った。


 いくら大好きな両親に言われたとしても、俺はチヒロの側にいて彼とユウキの幸せを見守りつつ彼らと楽しい学校生活を送ると誓っているから従わないと決めていたが、そんな必要はなかった。








 「まさか、前から噂になっていた強い2人組って、マキちゃん達だったなんて・・・!」




 「すごいな・・マキ!!格好いいぞ!!!」




 2人とも俺達の存在を知っていた・・・・・・!恥ずかしい・・・・・・・・・


 そして2人は、ケンカをすることで俺の身体の調子が良くなったことを知ると、『それで体調が良くなったなんて・・・・・・良かったわね!!』と言った。かなり拍子抜けである。






 「父さん、母さん、俺、ケンカしてるんだよ?人殴ったり蹴ったりしてるんだよ?


 いいの?俺、悪い子なんじゃないの・・・・・・?」




 俺は、ずっと思っていたことを吐露した。


 この身体は”真柴真希”のものだからと思いたいが、前の俺ならば決してしない、人を殴る行為などを普通にできてしまう。むしろ危ないと思う程に気持ちが高揚してしまう。これは、倫理的にも良くないことだろう。絶対、そう思う。




 だが・・・・・・




 「子どもの時は多少ヤンチャの方がいいのよ?なぁに、マキちゃん。そんなこと気にしてたのぉ~?」




 「そうだぞマキ!元気なのは良いことだ。むしろ最強を目指すのは男の嵯峨だぞ」








 この世界はこういう風にできているらしい。


 なんか、この世界の男は野生動物の気があるのか何事も競うことが好きなのだと。それはケンカも例外ではないらしく・・・・・・


 だから、ケンカでかなり問題になりそうな時もあるのに呼び出しもお咎めもなし、ということか。なるほど。


『何があっても自己責任』というのが普通なのだとか。むしろ勝負に勝つことが男にとって誇らしい世界なのだ。




 ちょっと安心した。


 でも、反対に自分がどんだけ痛い目に遭おうがそれも自分の責任。無理な相手には立ち向かわないようにするのが良い。


 幸い責任が発生するのは双方が戦うことを了承したときのみらしい。






 お互いが了承したという証拠とかはなくてもよいのだろうかと思ったが、この世界にはきっと正々堂々としていて自分の責任はちゃんと自分でとるという人しかいないのだろうと納得しようとしたマキだった。






 














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