実際の2人


「あなたのことを師匠と呼ばせてくださいっ!!おれ、いや僕をっ、黒原くんの弟子にしてください!!!」






 マキが用を足しに教室から出た途端、つかつかと歩いてきて頭を下げたかと思うとこう言われた。


目はギンギンしているくせに、弱々しく装っているのが癇にさわる。




 「繕ってんじゃねぇよ。本性出せ、本性」




 「あれ、バレちゃいましたか?・・・・・・・へへ。


じゃあ、 俺を師匠の弟子にしてください!!!師匠の元で強さを学ばせてください!!お願いします!」




そう言って奴は悪びれもせずに再び懇願してきた。


俺は正直、こいつはそこそこ強いと思う。なんとも信じがたい内容を頼まれたものだが、目を見ると嘘はついていないようだ。だからこそ、一体なんで、という考えが起こる。




「てかなんでお前そんななりをしてんだよ」




「え・・・、だって俺、ここにはケンカじゃなくて強さの追求に来たんですもん!俺眼鏡外すとけっこうケンカ売られる顔をしてるんす。だからこうやって・・・・・・カモフラージュしてるってわけですよ!」




「俺だってケンカしたくてしてるわけじゃねぇよ」




「知ってますよ。師匠、売られたケンカしかしないんでしょ?しかも全勝って格好いい!!


大丈夫です!師匠、絶対ケンカ売られますから。俺はその様子を側で見て強さを学びます!!それに、真希くんも強いですよね? 師匠が断るんだったら真希くんに頼もうかな~~」






「うざ・・・・・・。勝手にしろよ」




「はい・・・!勝手にします!! ありがとうございます」




「つか師匠やめろ」




「え~、だめですか?し・しょ・う~~」






白島結城という奴は思ったよりもムカつく奴だ。


見た目こそ弱々しく繕っており見る者からすれば小動物にも見えなくはないが、中身はかなり獰猛な奴だと直観でわかる。




 マキを人質みたく扱いやがって・・・・・・。






 俺は不快な気持ちを押し殺し無表情を貫くが、すぐ横でにこにこと意地の悪い笑みをこぼすこの眼鏡にその気持ちは募るばかりだった。






「ふ~、やばかった-・・・・・・。めちゃ腹いたくてさ~」




 やっとマキが帰ってきた。そう思い歩み寄ると、俺より先に眼鏡がマキに近づきやや顔を赤く染めながら、




 「まき、あ、いや、真柴くんっ!お、ぃゃ僕っ、これから真柴くんと行動を共にしてもいいかなっ!?」




 「へぇっ!!? お、おぅ!よろしくユウキ。 あと、俺のことはマキでいいぞ?」




 「な、名前っ!!  じゃ、じゃあ、マキ・・・くん・・・・・・よろしくお願いしましゅ・・・・・・」






 マキの前では先ほどの余裕さが欠片も見られない。


 ヘタレだな。




それよりも気になったのが、マキが眼鏡のことを最初から馴れ馴れしく『ユウキ』と呼んだことだ。


解せない・・・・・・。


 それに、俺に近づいたのはマキが目的だったのではないかと思えてきた。いや、実際はそうだろう。話しかけるのは下手。だが一緒にはいたい。それで俺を使った・・・・・・?






 益々嫌な奴だ。




































 と、実際の2人の関係は漫画とは違い、どう考えても恋愛には発展しそうにないのだった。




























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