第27話 「好きだ。」
昨日からなんとなくみんなを避けてしまう。
あからさまな態度はとらないが、俺の口数は減ったしあまりこちらからは積極的に近寄らない。
しかし仕方がないのだ。今俺の頭の中には『どうやってユウキに告白するか』でいっぱいなのだ!
『ユウキ、好きだ!』
違うな。
『ユウキ、前からお前のことが――』
違う。
『ユウキ―― 』
ひゃああーーーーーはずかしぃーーーーー!!!!
原作のマキってどんな感じに言ってたっけ?!
必死にアニメの10話の最後のシーンを思い出そうとする、が、思い出せても真似できねぇ~~・・・・・・
だってフィクションってタイミングとか抜群じゃん。今現実なわけだし。
どんなに俺がアニメのマキを模倣したって笑いの種になるに決まってる。もしユウキが上手く流してくれたとしても、俺の中で生涯ずっと黒歴史として君臨し続ける記憶になりそうだ・・・・・・
俺は先日までごちゃごちゃと自分でもわけのわからないことで悩んでいた。それこそ、自分が2人を邪魔してるんじゃないかとか、その次は俺は仲間はずれにされてるんじゃとか・・・である。
だが初心を思い出した。
そうだ、俺は前世2人の幸せが自分の幸せだったのだ。2人の恋を応援して2人を生きがいにしてきたのだ。
だったら、自分が楽しい学校生活を送るとかは二の次にして、きちんと自分の負う役割を果たすべきではないのか。と。
2人のことだから、きっとくっついても今まで通り3人、いやみんなで楽しく高校生活を送ることができる。
だからまず2人の恋、いや話を進めるために
そのすぐあとに、諦めそうになった。
だって告白だよ!!? 最初から『NO』だってわかってても緊張するよ・・・・・・!!!
相手はあのユウキだし。なんか告白する相手として見ると、普段何気なく話書けたりしていたことが急にできなくなるものだということがわかった。
ユウキが俺の目の前で話をしているとひぁっ!!となって顔を赤くさせてしまうし、話が全然頭に入ってこないし、『告白』の文字が頭の中を占領していてわーわーわーとなってしまう。
もうかなり重傷だ。
夜も頭に風景やシチュエーションを思い浮かべてブツブツと告白のシミュレーションをしていてなかなか寝付けないからどんどん昼間の元気もなくなっていくし、ユウキとチヒロ、そして八や小蟹に心配されてさらに近く寄られ、原作のイメージを連日思い出している俺にとってリアルのキャラたちの顔のどアップが心臓に悪く変なリアクションをしてしまい、さらに心配されるはめになってしまう。
うぎゃあぁああああああ!!!
もう告白の試練から逃れたーーいぃ!!
そう思った日の夜、俺は『明日ユウキに告白するぞ』と決心した。
夜。眠れないったらありゃしない。
緊張しすぎて心臓はずっとバックンバックンいってるし、さっきから数えている羊ももう1000匹は出没している。というか、数え間違えているからもはや何匹かわからない。
頭の中でシミュレーションするが上手くいきそうにないと弱腰になってしまうし、そもそも心臓の動きが速いのと緊張からくる腹痛とそわそわするのとで全然空想できない。
手足の指もひんやりしていて「もう嫌だーーー!!」って感じ。
そんな状態でありながらも俺は眠れるよう、必死に目を閉じてぎゅっと身体を縮めて無になった。
次の日、俺は目をしばしばさせながら階段を下り食卓へ向かった。
ルンルンと楽しそうに台所で朝食の用意をしている母が俺に気づいて朝の挨拶をしてくれる。
「あらマキちゃんおはよう。今日は早いのね~」
「お、マキもう起きてたのか。おはよう」
「2人とも、もう用意できるからもう少し待っててね」
「「(ああ、)ありがとう」」
ああ・・・今日も母さんたちはラブラブだ。よく朝からそんなに甘い空気が出せるものだ。
俺は結局一睡もできなかった。頭がぼーーっとする・・・・・・
俺はぼーーっとしたまま朝食を取り、そのままぼーーっと出かけていった。
チヒロからは「寝てないのか」とズバリ言い当てられ、溜息を吐かれた。
一時間目は数学だ。朝一番だと頭がしゃっきりしているからいいのだろうが、今の俺には地獄だ。
眠い。ここにきて眠い。クッソー、昨日眠れなかったくせになんで今眠いんだ・・・・・・
次の時間は教室の移動がある。漫画でのマキの告白のシーンは移動の途中、廊下で行われる。そんなところとかが、今日はおあつらえ向きだと思う。しっかり同じ状況っつーか。
やっと授業が終わり、俺は盛大に欠伸をする。若干楽良に睨まれたような気がして慌てて手で口を塞ぐ。
なぜだろうか、授業中はすごく眠いのに授業終わったらパッチリ目が覚めるのは。
俺は教科書をしまい次の教科の準備をする。その間にユウキが来てくれ、側で待っていてくれる。
どうしてか、気持ちが落ち着いていた。昨日まではなんだか顔を見るのすらしにくかったというのに。
まあ心が軽くなったからいいやと教科書と筆記用具を持って席を立ち、先に歩くチヒロとユウキの後に続く。
ふと横を見ると、開いた窓からは肌を撫でるようなやわらかな風が吹いてきて、青々とした木々がさわさわと心地よい音を奏でていた。
目を細め、しばしその心地よさに身を委ねる。
あ、今だ。 と、そう感じた。
「ユウキ、 」
声をかけると先を歩いているユウキが振り返る。
「俺、お前のことが 好きだ 」
「 は? 」
「好きだ」といった瞬間、チヒロが地を這うような低い声でそう言った。
顔を見ると、今まで見たこともないめちゃくちゃこわいかお・・・・・・
ヒ、ヒエェエエエーーーーーーーーーッ!!!
「俺はチヒロのことも好きだよっ! ほらっ、だからさ、2人のことが好きだから・・・あの、その・・・・・・2人をだね、くっつけるーーーーーー」
俺は今まで順調にいっていたものをぶち壊し、あたふたと今己がいったことを誤魔化していた。
「 ふがっ! 」
その時、目が覚めた。
顔を上へ上げていくと、目の前にはユウキとチヒロが目を見開いてこちらを見ていた。
や、やってしまった・・・・・・
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