北宮純 ～祖国無き戦士～

いや言っとくけど俺の方が先にカクヨムで北宮純扱ってるからね！？

日本人じゃねえか！　と初めてその人物の名前を教わったときにはつい言ってしまったものですが、その生涯を眺めれば、まあかっこよろしい。そしてこの物語は。

……ええと、申し上げていいですか？　すごい。

何がすごいって、状況を俯瞰から詳細に落とし込んでいくことのうまさ。第一話にある「匈奴漢」の説明は、あくまで全体を見渡しやすいように、あえてこの言葉を使いますが、めっちゃ乱暴に説明されてるんです。けど、それが実際にどういうことになるのかを、北宮純の半生とともに、丁寧に紐解いて行かれる。この塩梅が、濃すぎず薄すぎず。いまの自分じゃ絶対…続きを読む

五胡十六国時代。
三国志の時代より司馬氏の内紛を経て始まった、異民族入り乱れる暗黒時代。
だが、そこには愚将ばかりが我欲で跋扈していたわけではなく、むしろ数多の名将や傑物たちが溢れ出した世であった。

本作の主人公、北宮純もその綺羅星のごとき将星の一筋だ。
羌族である彼は、零落する漢民族の晋王朝に与し、そしてまた匈奴漢に転じ、二つの王朝の破滅を目撃する。
数奇な運命を巡りながらも、知られることも語られることもないこの男が、主や故地を持たないその身で何を想い戦い続けたのか？

混沌の世の先触れとなったその半生にクローズアップした、硬派にまとめながらも知識ゼロから没入できる非常に得難い、中編の名…続きを読む

三国時代から隋唐までは東アジア史の中でも結構ややこしいんですが、
その乱れまくった時代の、知られざる一人の英雄を史書から読みおこし、
小説化したのが本作品。

この手の歴史小説好きには、たぶん堪えられない中編です。
主人公がまた、無頼派なのに戦上手でかつ情に厚い、という、
やや珍しいパターンのキャラ。
孤高の武人・北宮純に入れ込んで読むもよし、
クセだらけな人々のせめぎあいを堪能するもよし、
国とは、歴史とは、と遠い目で惚けるもよし。

ぜっっっっったいに後悔しません。

大雑把な何かではなく、名前の意味をしっかりと捉えて使っている感じがしました。
時代背景を調べて、きっちりと文化を重ねている、濃度が高い作品。
私はそういう下地があって読みましたが、知らない人には堅目かも知れません。
ファニーよりはインタレスティングな感じの面白さがあり、出来ればゆっくりじっくりと楽しむような内容でしょう。
落ち付いて一人で邪魔されずに。
地図とか一瞥してから読めば、不明の方も少しは理解が進むかもです。
軍同士のちょっと詳細な戦争模様が出てきたら……大期待です。