混沌の時代の始まり、その先駆けとなった主無しの流星

五胡十六国時代。
三国志の時代より司馬氏の内紛を経て始まった、異民族入り乱れる暗黒時代。
だが、そこには愚将ばかりが我欲で跋扈していたわけではなく、むしろ数多の名将や傑物たちが溢れ出した世であった。

本作の主人公、北宮純もその綺羅星のごとき将星の一筋だ。
羌族である彼は、零落する漢民族の晋王朝に与し、そしてまた匈奴漢に転じ、二つの王朝の破滅を目撃する。
数奇な運命を巡りながらも、知られることも語られることもないこの男が、主や故地を持たないその身で何を想い戦い続けたのか?

混沌の世の先触れとなったその半生にクローズアップした、硬派にまとめながらも知識ゼロから没入できる非常に得難い、中編の名著です。

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