-再びの木曜日、マコトとアキヒコの「破壊の破壊」上映会、骰子の破片(1)-
相模原の山中に分校などない
昨日の記憶も、今までの記憶も、水曜日の記憶も丸々ある状態だ。
学校で流れていたという月光の第三楽章、そして今日は放課後ユウナと美術準備室で話し込んでると鳥の王に
そうベッドで
「マコト君、
「メフィスト! 協力してくれるか!」
「悪魔に二言はない、行くぞマコト君」
忘れてたが今朝は
階下に降りて母が話しかけてきた。
「マコト、今日はカブはやめておきなさい」
朝食には塩鮭と焼き海苔。
母にはメフィストは見えないのだ。
「路面が
の一言で軽自動車に押し込まれてしまった。
車は平坦な緑の中をくねくねと走り続ける。
「君のお母様、
メフィストは耳元で
「迎えに来るからちゃんと連絡を入れるのよ!」
まるっきり記憶通りの木曜日だ。
これでびしょ濡れになって帰り、風邪をひくのだ。
とりあえず鮮明に記憶にあるのは放課後からなので、それまで何をしていたか記憶を
だがテスト関連のことしか思い出せなかったので、どうしようか
「マコト君、先ずは音楽室で聞こえたという、月光の第三楽章について検証してしてみてはどうだね?」
「音楽室か……入ったこともないけど休み時間に行ってみるか」
二時間目の休み時間、マコトはコッソリ教室を抜けだすと、一度も入った事もない音楽室にやってきた。
壁面には歴史上の偉大な作曲家たちの
「マコト君、この部屋のオーディオを調べて
「オーディオ?」
確かに音楽室には相応しい立派な再生機器があった。テープからCD、レコードまで再生できる多目的オーディオだ。立派なスピーカーまで
「凄いな」
「感心してないでCDプレイヤーの中を見てご
するとどうだろう、ベートーベンの月光のCDが入っているではないか!
「なになに、ピアノ・ソナタ 第14番
マレイ・ペライア……」
「やあ、ペライアは大家だよそんな
「しかし鳥の王はどうやって?」
「マコト、音楽準備室へおいで、証拠がある」
マコトとメフィストが準備室へ入るとそこにはオーディオのリモコンが転がっていた。
「あっ! 鳥の王はこのリモコンでCDを操作していたのか!」
「ご
「しかしなぜ第三楽章を流したのだろう?」
「そこに意味があるのだよ、マコト君」
「月光はベートーベンがあるピアノの音を聞いてそれが、盲目の少女によるものだったことにいたく感動し、それを思い出しながら作ったものなのだ。だがそれはわたしは夢に
「盲目の少女の夢……」
「
「う、うん……」
やがて昼食の時間となった。
「マコト君今日は一人食べ給え、不都合がある」
メフィストははっきりと言った。何故だろう?
「不都合?」
「食べればわかる」
昼食はユウナに誘われていたのだが……
「ゴメン、ユウナ。今日はちょっと一人で食べたい気分なんだ」
そう言っていつもの屋上へ続く階段の踊り場へやって来た。
マコトの昼食は大抵
卵サンドと生クリームと缶詰の果物を挟んだパン。
「んじゃ、いただきま……ぶふぉっ!?」
マコトは思わず卵サンドを吐きだした。
「まっず! なにこれ!? 味しないんだけど???」
「
「でも朝食は普通だったぞ!?」
「君は一度目の木曜日朝食を食べたかな?」
「あ……食べてない」
「経験は二度できないんだ、マコト君」
マコトはしぶしぶ昼食を片づけて教室に戻る準備を始めた。
「そのうち、アキヒコが呼びに来るだろう」
「なぜわかる?」
「悪魔は何でもお見通し」
「またそれかい?」
すると階段をアキヒコが昇ってくるではないか!
「なあ、マコト」
「アキヒコ、どうした?」
「放課後ヒマかい?」
このまま美術準備室でユウナ話し込むとタケシに襲撃される。これは未来を変えるいい手かも?
「別段予定はないけど、どうした?」
「『
「ええっ!? テスト前に?」
だがメフィストは
「行ってきたまえ、マコト君得る物は多いだろう」
「アキヒコはテスト勉強いいのかい?」
「マコトと同じくらいどうでもいいさ」
「それなら放課後待ってる」
そう言ってアキヒコは階段を降りて行った。
武井メモ
感覚質:心的生活のうち、内観によって知られうる現象的側面のこと、とりわけそれを構成する個々の質、感覚のことをいう。
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