第2話 なんで?

明日はもう文化祭当日だ。一昨日悠里に頼んで正解だった。清書は2日で終わり、今日は鉛筆の線を消して細部を仕上げるだけだ。終礼が終わった直後に私は朱里の元に向かう。


「おーい朱里! 早く要るもの持って悠里捕まえるよ! 」


「うん! 」


教室を見渡しても既に悠里の姿はなかった。慌てて廊下に出ると悠里の後ろ姿を見つけた。私は咄嗟に鞄を掴んだ。まさか掴まれるとは思っていなかったのだろう。悠里は呆気に取られたような顔をしていた。


「ごめん悠里 今日までお願いしていい?」


「ん〜...」


いつもなら仕方ないなどと言いつつもすぐに返事をしてくれるのに今日は違った。勿論予定がないことは最初に頼んだ日に確認済みだ。まぁ仕上げだから朱里と2人でもさほど時間はかからないだろう。


「まぁ好きにしていいよ」


この一言が後に大変な事の引き金となる事など私は考える筈もなかった。とりあえず朱里と一緒に解放されている教室に移動した。模造紙を広げてから朱里が徐ろに


「ねぇ 千歳さっき怒ってた?」


と聞いてきた。勿論怒っている訳もないので


「怒ってないよ笑 どうしたの?」


「いや 好きにしていいよって言ってたから」


「ふふっ笑 私が怒ったら選択肢与えないよ」


「そうなんだ笑」


誤解が解けたところで作業を始めた。消しゴムをかけて細かい所の着色をする。時間がかかっていないように感じていたが昨日、一昨日と同じく約1時間半経っていた。既に5時半過ぎである。早く片付けないと。


「ペン片付けといて 先に模造紙置いてくる」


「はいは〜い」


模造紙を持って教室に行く。もう既に薄暗い廊下を歩き教室のドアの方を見た瞬間、心臓が跳ねるような感覚に陥った。外のロッカーに人が伏せている。近づかないと教室に入れない。後方のドアは中からしか鍵の開け閉めが出来ないようになっている。つまり、鍵で外から開けられるのは前方のドアだけだ。誰かも分からないが近づくしかない。一呼吸置いて近づくとそれが誰かはっきり分かった。なんでとっくに帰ったはずの悠里が居るんだ。伏せていて顔は見えないが立ち方と後ろ姿で十分わかる。とりあえず鍵を開けて模造紙を置き、ダッシュで朱里の元に向かった。


「ねぇ朱里! 悠里まだ居たんだけど!?」


「えっ嘘でしょ!? もう鞄ないよね?」


「自転車に置いてきたっぽい。早く来て!」


朱里が慌ててマッキーを掴んで後ろから着いてくる。私の後ろから覗き込んだ朱里が「ひっ」と小さな悲鳴をあげた。


「本当だ。 寝てるのかな?」


「多分ね。とりあえずマッキー片付けよ」


そう言ってドアを開けようとしたが開かなかった。鍵は開けて行った筈。念の為差したままの鍵を回すとガチャっと言う音を立てた。もう一度ドアを開けようとすると今度はすんなりと開いた。


「えっ... 私開けたままにしてたのに」


「じゃあ悠里が閉めたって事?」


「うん。という事は起きてるよね?」


とりあえず教室に入ってマッキーを片付ける。さて、問題はここからだ。



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