第8話とうとう

今日が来てしまった。今日の放課後に私は告白をしようと思っている。そう考えていたら授業なんて殆ど上の空だ。やけに時間が経つのが早く感じて気がついたらもう放課後だ。いつも通りに私と朱里は掲示物を作る準備を始める。悠里はいつも通り頭からすっぽりと学ランを被って机に突っ伏している。朱里には悟られてはいけない、そう思いつつ昨日の色塗りの続きを始めた。他愛もない話をしていたせいか時間と緊張を忘れていた。ふと外を見ると12月ということもあってか真っ暗だ。作業ももうそろそろ終わるだろう。急にドクドクと心臓がうるさくなって来たが勢いをつけて


「あっそういや悠里に言いたい事あったんだった 悪いけど朱里先に帰っといて〜」


と一気に言いきった。朱里は何やらぶつぶつ言っていたが帰ってくれるらしい。まぁ今度ちゃんと謝っておけばきっと許してくれるだろう。出来た掲示物を朱里と配置を決めて悠里に壁に貼ってもらった。貼り終わったら朱里はちゃんと帰ってくれた。恐らく私が何をするかは薄々分かっているだろう。私も早く帰ってしまいたかったがああ言ってしまった以上は帰れる訳がない。悠里がもそもそと動き出してネックウォーマーと手袋を付け出したタイミングで私もカバンからマフラーを出して顔を隠すように巻いた。まさかすぐに言い出せる訳もなく窓から真っ暗になっている空を見つめて少しの間悶えていた。覚悟を決めて後ろを向くと意外と近くに悠里が居てびっくりしてしまった。どうしよう。なんて言い出せばいいんだ。悶々と考えていたが先に保険をかけてから本題に入ろうと決めた。


「ねぇ 今からとんでもない事言うから引かないでね」


「ん」


恐らくもう悟っているのだろう。やや俯きながら発された短い返答を聞いてからこの一言を言うかどうか、一切迷いはなかった。


「好き」


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