第17話 知りたくなかった
荷解きがある程度済んで人が居る感じがようやく出てきた。無事に新居について数日経って少し落ち着いてきた。髪をタオルで少々雑に拭きつつスマホをいじる。朱里が教えてくれた悠里のSNSのアカウントを探すためだ。幸いな事にアカウントを見つけるのにさほど時間はかからなかった。ネットでの姿がその人の素の姿だと言うのを聞いてから悠里の本性が気になっていた。だが見る意味はあまり無かった。普段と殆ど変わらなかったからだ。つまらないな。そう思った時考えてもいなかったワードが目に飛び込んできた。
「彼女」
たった漢字2字の言葉がこんなに重く感じたのは初めてだ。その投稿に対するコメントを見てみると彼女らしき人物が甘い言葉で返信していた。悠里の本性を見てみたいという興味で見た数分前の自分に思いっきり平手打ちをしたくなった。何かの見間違いかもしれない。そう信じて取り敢えず髪を乾かす事にした。
結論から言うと見間違いではなかった。何度見てもその2字は変わらない。どうせなら完全に絶望しようと過去の投稿を遡る事にした。最初に食らったダメージが大きくて遡っている間は何も感じなかった。が、それも一瞬の事だった。初めて彼女に関する投稿をしたのが私が告白してからだった。勿論、現時点で告白の返事なんて聞いていない。そもそも1ヶ月以上返事が返ってこない時点で振られている様なものだと思ってはいたが流石に酷い。怒りとも悲しみとも取れる感情がふつふつと湧き上がってくる。冷静さなんてとっくに失っている。どうメッセージを送るかなんてもう決まっている。
「さっさと振ってくれ」
その1行だけをほぼ衝動的に送る。いくら結果が分かっているとはいえ告白した以上返事を貰う資格はあるだろう。よく考えればおかしな文章だ。振ってくれなんて普通言わない。こういう時に笑いが出てくるのは何故だろう。笑いとは言っても乾ききった冷たい笑いだ。
送ったメッセージに既読が着くまで画面を見つめた。
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