第11話 モヤモヤ

桜の花が綺麗に咲いて暖かい風が教室を通り抜ける。3年目ともなるとセーラー服も大分体に馴染んでいる。白いスカーフももう結び慣れたものだ。殆ど意味が無い自己紹介が暇でしかない。自己紹介している人を見るふりをして悠里の方を見た。うちの学校は先生との面談で名前を上げた仲がいい人と同じクラスになるように編成されている。悠里と仲が良さそうな人は見当たらないが私が知らないだけで悠里にも仲が良い人ぐらいいるのだろう。自己紹介が終わったら教科書の配布をして終わりらしい。今年もそこは例年通りだ。違うことと言えば全員マスクを着用していることぐらいであろう。一体今年はどうなる事やら。そう思いつつ配られた教科書にひたすら名前を書いた。

外は尚更暖かい。昼寝日和という言葉がこの世にあったら正に今日の事だろう。それを考えていたのも校門で朱里と分かれるまでだ。1人になってからはモヤモヤしている。なんで今年も同じクラスなんだろうか。実のことを言うともう返事は殆ど想像がついている。多分悠里は私が問い詰めるまでそれを言うつもりはないだろう。だからせめて違うクラスだったら諦められたのに。今年は振られるのを待つ1年になるのか。中々に酷な話である気がする。別に恋愛対象として見れないならはっきりそう言ってもらった方がいい。ハグされて自分の気持ちに気づいて告白して振られるなら本望だ。ふわりと吹いてきた風が身体を包み込んだ。まるであの時みたいに。桜の花びらが風に乗って飛んでいくのが視界に入って我に返ったら一気に恥ずかしくなってきた。今年は自分との戦いが2つになりそうだ。

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