ガラスの恋心

千莉

第1話 秋のある日

11月。長袖ブラウスにジャンバースカートの制服ではまだ暑さを感じる。もうとっくの昔に夏も終わってしまったし、体育祭も終わって行事は一段落着いたはずだった。なのに私 青葉千歳あおば ちとせと親友の一之瀬朱里いちのせあかりはバタバタしていた。去年、1年生の時もこうだったようなデジャブ感を感じるのは気のせいだろうか。広報委員会というのは忙しいもので体育祭の学級旗を作り終えたと思いきや今度は学級新聞を作らなければならない。しかも委員会のメンバーの2人は部活。もう一人いるが扱いが面倒なのでさっさと帰ってもらった。


「ねぇ千歳どうする? 多分終わんないよ?」


「ん〜どうしよ とりあえず梨花りかに相談だね」



終礼前に委員長であり友達である梨花に相談してみると


「あ〜確かに人手足りないだろうね。悠里を好きに使っていいよ」


と部活着に着替えながらサラッと言い放った。梨花と加賀宮悠里かがみや ゆうりが幼馴染であるからこその発言であるということぐらいは察しがつく。悠里とは今年仲良くなったばかりだが気軽に話せるいい男友達だ。



「ん じゃあ悠里を使わせもらうね」


「勝手に決めちゃっていいの?」


と朱里が笑いながら聞いてきた。 そんな事お構い無しに

「決まったら捕まえに行くよ!」

そう言い終わるのと悠里の元に行くのとが殆ど変わらなかった気がする。


「悠里ちょっと待って! まだ帰るな!」


「え 言い方酷くね? 」


「んなもんどうでもいい。放課後空いてる?」


「空いてるけどなんよ? 」


「委員会の仕事するのに人足りないから来て」


「ちょっと千歳言い方があれだよ?」


ふんわりと朱里からのツッコミが入ったがまぁそんな事はどうでもいい。今重要なのは人手が確保できるかどうかだ。


「ん〜 しゃーねーな 手伝うわ」


「っしゃあ 何日か連続でお願いするからね」


「じゃないと終わらないもんね〜」


「嘘だろ!? まぁ手伝うけどさ」


「「ありがとう!! 」」


まぁそんなこんなで人手は確保出来たし後は期日に間に合わせればいいだけだ。広報委員会が作る新聞に委員以外の人が関わるのは少し違和感があるが今はそんなこと言ってる場合じゃない。


「とりあえず悠里は鞄を適当な所に置いて。じゃ私らは書きかけの模造紙とマッキー取りに行こうか。」


必要な物を持って悠里の背中をグイグイと押しながら作業の為に解放されている教室に入る。机を2つ向かい合わせになるように向きを変えて下書きが終わった模造紙を広げる。丸めていたせいで端が丸まっているのを筆箱で適当に押さえる。


「よし 時間ギリギリまでやるか」


「とりあえず字はなぞっちゃうね」


「で 俺は何すればいいの? 」


「タイトルの縁どりお願い 黄色でいいよ」


「うぃ〜」


こんな会話を何度か繰り返しつつ1時間半で半分ぐらいは清書を終えた。下書きは朱里と2人でやって2日もかかったのに1人増えるだけでこんなに進むものなんだと思った。


「結構進んだね〜後どのぐらいかかるかな?」


「多分悠里が後2日来てくれたら終わるね」


そう言ってちらりと悠里を見る。悠里も察しがついたのか諦めたような顔で


「分かったよ やるよやりますよ...」


「「お願いね」」


作り終わるまでの人出の確保が出来たところで作業に使ったものを片付ける事にした。教室にマッキーと模造紙を置いて施錠する。


「鍵は私が返しとくね」


と言ったのだが朱里も悠里も


「一緒に行く」


の一点張りだったので諦めて一緒に返しに行った。返すと言うよりかは所定の場所のロッカーにぽんと置くだけだから別に1人でも良かった気はする。まぁ薄暗い校舎を1人で歩くよりかはいいか。


「じゃ悠里明日もお願いね」


「はいはい分かったよ じゃあな」


「「じゃーね〜」」


と言って私達は下駄箱を後にした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る