第4話 ごめんね...
悠里の手をみる限り立つように促しているのが分かる。とりあえず立ち上がったが、悠里が本当に怒っていないと素直に思えなかった。人間という生き物は残酷だ。仲が良かったはずなのに平気で裏切る。自分より弱い立場の人を作りたがる。他人を信じ過ぎていると自分が痛い目を見る。そんな過去が私になければ悠里の事を疑わずに済んだのに。罪悪感に似たよく分からない不思議な感情が心を支配していた。疑う事の心苦しさ行動にハッキリと出ていた。ブラウスの胸の辺りをきつく握りしめていた。思い切って顔を上げ悠里の目をじっと見つめた。先程の「怒っていない」がもし嘘だとしたら目が泳いでしまったり曇った様な表情になるだろうと考えたからだ。じっと見つめた数秒後にそんな事を考えた自分が馬鹿である事に気づいた。悠里の目は真っ直ぐとこちらを見据えている。その目は綺麗で僅かな曇りすらなかった。勿論表情にも曇りなんてなかった。むしろ誠実な雰囲気が感じられる。本当に怒っていない事を確認できたのだからその時点で目を逸らせば良かったのだが、それは出来なかった。偽りや曇りのない綺麗で鋭い視線を向けられると人間は動けなくなるとその時初めて知った。そんな状況の中で心の中は悠里への罪悪感で一杯になっていた。なんで疑ったのか、なんで信じられなかったのか。悠里は嘘なんてつく人じゃないのに。そんな事ばかり考えていたら徐々に息が苦しくなってきた。肩に今までに感じたことの無い変な力が入っている。じわりと変な汗が出て心臓が五月蝿くなってきた。何も悪い事をしていない人を疑った罰か何かだろう。私は視線も体もそこから動かせなかった。
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