第9話 有言実行!! 契約履行はジョーシキデヤンス!!
撚糸町でのお正月は実に平和な時を過ごせた。
病院のベッド以外で過ごす正月休みは久しい……だがしかし、僕はそのせいで窮地に追い込まれていた。ギャフン。
「離してくれユキテル君! 僕は約束を守る男だ!」
「や、止めてよマモル君! 誰もそんな事望んでいないよ!」
僕を玄関で羽交い締めにして必死に止めるユキテル君、気持ちは嬉しいが自分のソウルに嘘をつく訳にはいかない。
でも……誓った相手が止めてくれるならセーフだよね? それにしても僕はそんな約束したっけ? 言ってない気がするな? 僕は嘘つきじゃないし、そんな下らない事は言わないよな? うんうん、そういえば僕は約束なんてしていないよね。
もう少しアピールしてから納得した感じで事を収めればいい、そうすればみんなも何も言わないだろう。僕も鼻からスパゲッティを食べずに済む。町内を逆立ちで一周せずに済む。
「パスタ麺がキッチンに無かったから蕎麦の残りを持ってきたわ! 仕方ないからこれで許してあげるわマモル!」
『それ茹でて無い乾麺だろ? えげつねーなイズナ』
え? マジで? マジでやらせる気なの?
「おいおい、マモルの奇行を近所に見られたらヨリイトストリンガーズに更に変な噂が流れるぞ?」
「うーん、僕達がシーツとかで隠しながらサポートするしかないでやんすね……」
止めてくれるんじゃないの!? そんなに僕が鼻に蕎麦突っ込んで逆立ちするとこ見たいか!?
自身の発言に後悔している僕に、玄関が開かれる音が飛び込んで来た。
「おや、随分と賑やかだなマモル? 友達と遊んでいるのかい?」
「あっ、父さん! 帰ってきたの!?」
流石父さんだ! 普段は微妙だけどいざと言う時には役に立つ! 僕の窮地を救ってくれるぅ!
イズナちゃんも、流石に父親の目の前で僕の鼻に蕎麦を突っ込む気は無かった様だ。
父さんが僕達に話がある事を伝えると、大人しくそれに従った。命拾いしたぜ……
「マモルのチームメイトである君達にも無関係ではないからな、みんなにも聞いてもらいたい。マモル、来年度はまた新しい町に引っ越す事に決めた。お前が撚糸町で過ごせるのは3月一杯までだ。すまない……」
リビングに移動した後に、僕達の前でそう切り出した父さん。
またかよ! と、思わない訳でもないが逆らうつもりは無い。
確かに普段から家に居らず、父親としての役目を果たしているとは言い難い父さんだが、それでも父親で家族だ。
僕の修行を密かに継続させている疑惑もある。僕には未だに役目とか、病院で言っていた育ち過ぎるとヤバい話とかの詳細を教えてくれない。なかなか酷い仕打ちだ。
でも、養って貰っている身としてはその決定に異は唱えられない。大人しく従おう。
それに、父さんは僕に構えない代わりに望んだ物は与えてくれる。あんなに仲の良かった母さんと離婚してまで僕の修行したくないという意思を尊重してくれた。
父さんは不器用だけど、僕の事を息子として大事に想ってくれている。それだけは確かだ。
そして一番の根拠は……ソウルギアを通せば友達はすぐに出来るって教えてくれた父さんの言葉だ。あれは正しい教えだと思う。
確かにソウルギアを通して出来た友達は、一癖も二癖もある問題児が多かった。
僕を危険な目に誘い、ソウルのバトル漬けの日々へと導き、悪の組織との戦いへと強制連行する様な奴ばかりだ。僕にとって何より大事な安心と安全を脅かす危険な奴らでもある。
だけど、みんなと出会わなければ良かったなんて思ったことは一度も無い。
少し刺激的な友達とソウルバトルで共に戦う日々は悪くなかった。僕の主義とは反するが、危険なのは嫌だが……それでも楽しいと思える日々だった。
そんな大事な事をを教えてくれた父さんの言葉だ。僕はそれに従おう。父さんは僕の事を考えて引っ越しを決めたと信じている。
そして何よりも大事な事がある! これが一番大事な事だ!
最終決戦が起こらなかったこの撚糸町では!! 月のソウルが手に入らない!! 不老不死が手に入らない!! 実に由々しき事態だ!!
だから引っ越しは仕方ないよね? みんなには申し訳無く思うけど、それはソレでこれはコレだ。
出会いがあれば別れもある。人生とはそういう物だ……
すまない……僕は新しい町へと向かわなければならないのだ。夢を叶える為に……すまぬ……すまぬ……
くくっ、待っていろよまだ見ぬ悪の組織共め! 貴様等の計画を利用してこの僕が不老不死へと至ってくれるわ! この田中マモル様がなぁ! まったくCC団にはがっかりだぜ! ショボい悪事ばかりしやがって! ペッ、使えねぇーな!
うんうん、新しい町へと元気よく笑顔で引っ越そう。
ヨリイトストリンガーズのみんなも家庭の事情なら納得して送り出してくれるはずだ。別れは惜しいがそれは……
突然隣から、ドンっ、とテーブルを叩く音が聞こえた。
「ほゎっ!?」
「そんなの! そんなのは嫌です! マモル君は撚糸町に残るべきです! その方がいいに決まっている! そうするべきです!」
ゆ、ユキテル君? 急にどうした!?
『お、おい……ユキテル……』
「マモル君のお父さんは全然家に居ないじゃないですか! 新しい街でもそのつもりなんでしょう!? それなら撚糸町に残るべきです! 僕達はマモル君を孤独にさせたりしません! アナタには1人で家に残される子供の気持ちが分かりますか!?」
おいおい……ユキテル君? もしかして大晦日にみんなを泊まらせたのは僕が寂しがっていたからだと思ってるのか?
僕の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、それは勇足だぞ? とちりしているぞ?
どうやって誤解を解いたもんか………そんな想いを含めつつ父さんに視線を向ける。父さんが僕の視線に気付いて頷きを返す。
おお! 流石父さんだ! やっぱり頼りになるぜ! 人生経験豊富な大人のトーク力でユキテル君を説得してくれ!
「君の言いたい事はわかったよユキテル君。父親として、マモルの事を考えていてくれるのは本当に嬉しい。マモルはこの町で良い友達が出来た……ありがとう」
おっ、良い感じの切り口だ。
「マモルも君達と同じ様に特殊な事情を抱えた子だ。私はその事情を解決したい、その為に引っ越しを決断したんだ。詳しい事情は話せないが……」
「そんな! そんな言い分で!」
「ああ、分かるよ。言葉だけで、大人の都合を押し付けられるのはツライよな……だから、私はユキテル君が納得出来る方法を提案しよう。君達はストリンガーだからな」
ん?
「僕が納得する方法……ですか?」
「ああ、ここに未契約のソウルストーンがある。これに誓約を立ててユキテル君とマモルがソウルワールドでストリンガーバトルするんだ。ソウルストーンを使ったバトルによる結果は絶対遵守、木星の一族に連なる君ならよく知っているはずだろ? ユキテル君が勝ったらマモルはこの町に残る。マモルが勝ったら町を出ていく事を許可して欲しい」
ホワイ!? 何で僕なの!? 父さんじゃねえのかよ!? しかもソウルワールドで勝負ってダメージがフィードバックするじゃねえか!? そんなもん子供に勧めんなよ!
「僕と……マモル君が戦う? ソウルワールドで?」
「ああ、どうやらユキテル君とマモルの間には少し齟齬があるようだ。言葉を尽くすのもいいが、やはりソウルとソウルがぶつかり合えばより深く分かり合える。どうかなユキテル君? 勝負を受けてはくれないか?」
断るんだユキテル君! 僕はキミと本気のバトルをしたくない! やり過ぎ止める為に何度か立ち向かってるけどガチで勝負するのは絶対に嫌だ! あんな恐ろしい技を食らいたくない!
「分かりました。その条件で勝負を受けます」
ぐふっ……
「そんな……ユキテルとマモルが……」
「ちっ、これもストリンガーのサガか……」
「複雑でやんすがそれで2人が納得するなら……」
『仕方ねえよ、言葉で止まらねぇなら後はバトルしかねぇ』
止めてくれよ! 何で容認ムードなんだよ!
「ありがとうユキテル君、それじゃあ二人ともソウルストーンに触れてくれ。誓約を立てよう」
い、嫌じゃ……ガチのストリンガーバトルなどしとうない……しとうないが……ユキテル君に勝たないと不老不死への道が閉ざされる? どうする? この空気でいまさら戦わないと言ってもユキテル君は納得しないだろう。最近のユキテル君は見た目と違って頑固な性格だ。
僕が自分の為にユキテルを前向きボーイに変えてしまったからな……僕がヤンスヤンス言って焚き付けたからユキテル君はこんなバトルモンスターに育ってしまった。
しゃーない、最後に責任を取るか! ユキテル君が納得出来る様にボコボコにしてあげよう!
ふっ、やるからには加減はしないぞ? 覚悟してくれよユキテル君。
そして一週間後、撚糸町のバトルドームで向かい合う僕とユキテル君が居た。
ドームには僕達の2人の他には、チームのみんなと父さんしか居ない。
父さんは今日の勝負の為にドームを貸し切った。アホか? 金銭感覚ガバガバかよ。
「では、私が審判を務める。私はソウルギアによる治療を行えるから安心して戦いなさい、悔いの残らない様に互いに全力を尽くすんだ」
治すからセーフ理論はやめろ、ケガ前提じゃねーか。
「全力で行くよマモル君! 君はこの町で暮らすべきだ! 僕達と一緒に!」
ま、いまさらジタバタしてもしゃーないか……本気を出そう、加減して勝てる相手では無い。
「僕も全力を出す! 覚悟してくれユキテル君! ……でヤンス!」
「二人とも構えてくれ! ソウルセット! ストリンガーバトル!」
「迸れ蒼き雷光! 鳴り響け“ジュピター“!」
「黄昏に浮かべ! トワイライト・ムーン!」
「ファイトォー!!」
「ライトニングフラッシュ!!」
「ストリングプレイスパイダーベイビー!!」
戦いの合図と同時に、ユキテル君とマモル君のオリジナルトリック同士がぶつかり合う。
ソウルによる雷撃とソウルによる爆撃、性質こそ違うがどちらも開幕と同時に放つ事が多い速攻と奇襲用の技だ。両者のトリックはほぼ同時に発動してフィールドの中央で激しい火花と衝撃を炸裂させた。
そして、すぐに別の音が聞こえて来る。
互いの機体の本体同士が衝突する音だ。更にはフィールドの所々でソウルの糸が光を放って切れていく。互いに相手の陣を成立させない様にソウルの糸を切り合って妨害している証拠だ。
ソウル体の防御が厚く、基本的な糸や本体での攻撃が致命傷になりにくい上級者同士の戦いはたった一つのトリックの成立が勝敗を分ける。
なので、互いに1歩も動かずに糸を手繰り操って攻防を成立させる。いかに相手のトリックを発動させずに自分のトリックを成立させるか、レベルの高いバトル程こういった張り詰めた展開になる事が多い。
初心者同士の戦いの様にバタバタと走り回ったりはしない。ストリンガー本人は静かにその場に立ち、代わりにソウルの糸と機体がフィールドで激しくせめぎ合う。
このレベルのストリンガーになると、機体の操者を繋ぐ糸は一本ではなく、手の指以外の身体の部位からもソウルの糸を伸ばす。
伸ばせる糸の本数と量は、基本的にはストリンガー本人のソウル保有量と比例する。
そして、ユキテル君もマモル君もソウルの保有量はAAクラス。到達出来るのは一千万人に1人とも言われ、国内では二十数人しか存在しない選ばれた存在だ。
ソウル量は一般的には18歳頃まで伸びると言われており、二人は更に上のクラスに至る可能性もある……末恐ろしい才能だ。
その潤沢なソウル量が、このフィールド一杯を所せましと埋め尽くすソウルの糸を生み出している。ここまで規模の大きいストリンガーバトルは滅多に見られるものじゃない。
実にレベルの高い攻防、ジュニア部門では間違いなく頂点におり、規模で言えばトッププロと比べても遜色ないストリンガーバトルだ。
たが、糸捌きだってソウル量によるゴリ押しでは無い、まるで意思を持ったかの様に縦横無尽に張り巡らされては消えて行く。
絶え間ない陣取り合戦だ。光をチラ付かせて偶に目に映るのは機体本体同士の激突、僕には速すぎて目で追う事が出来ない。
拮抗した攻防が続く、勢いが衰えることなく。むしろ時間が経つに連れて激しさを増すストリンガーバトルがフィールドで繰り広げられていた。
どちらが有利なのか……それすら分からない。ぼくの目にはまったくの互角にみえる。
僕は、僕たちはどちらに勝って欲しいと思っているのだろう? どちらを応援すべきなのだろう?
「なぁお前ら……どっちが勝つと思う?」
ガミタ君が僕達に問い掛ける。自分では決められない答えを出して欲しい、そんな気持ちが込められている気がした。
「そんなのはユキテルに決まってる……そう言いたいけど、正直分からないわ。どっちが勝ってもおかしくない、本当に生意気よマモルは……」
イズナちゃんは僕と同意見らしい、どっちが勝ってもおかしくない。それ程に二人の技量とソウル量は拮抗している。
ならば、勝敗を分けるのは……
『勝つのはマモルだ』
ユピテル君がはっきりと断言した。その発言に僕だけでは無くイズナちゃんもガミタ君も驚いている。
誰よりもユキテル君に近しいユピテル君の発言、ならば確かな根拠がそこにはあるのだろう。僕達では見えない何かが彼女には見えている。
それは一体何だ? ユキテル君の事が分からないのが悔しい、どうしても知りたい。イズナちゃんとガミタ君の表情にもそんな気持ちが浮かんでいる。
「ユピテル君? どうしてそう思うでやんすか? 何でマモル君が勝つと断言できるでやんす?」
僕はユピテル君に問い掛ける。知らない事を知らなければ、あの二人に少しでも近付く為に……
『この勝負で、ユキテルはストリンガーバトルを楽しんでねえ。ソウルで繋がっている俺にはよく分かる。それに比べてマモルの表情を見てみろよ』
ユピテル君に促されるままにフィールドのマモル君に目を向ける。
ああ、マモル君。君は……
「楽しそうでやんすね……マモル君は笑っているでやんす……」
『ああ、ストリンガーバトルは楽しんでいる奴が一番強え。お前らだってそれはよくわかってんだろ? この1年でお前らは以前とは比べ物にならないくらいに強くなったよな? それは何故だ?』
何故かって? そんな事は決まっている。
「………楽しかったからだよ。またユキテルと一緒にストリンガーバトルが出来て、新しくマモルが加わった。そんな毎日が楽しくて仕方なかったからだ」
「そうね、アンタの言うとおりよユピテル。ストリンガーバトルを心の底から楽しいと思えたから私達は強くなれた。バラバラになっていた私達がまた1つになれたのは……その楽しさを再び与えてくれたマモルよ……分かってるわ」
ああ、やはり2人も同じ気持ちなのだ。僕と、卑怯者の僕とは違うのだろう。身勝手だけど、それが凄く羨ましい
「そうでやんすね、みんなの言う通りでやんす。ユキテル君は焦りと悲しみでそれを見失っている。だからこそ勝敗は……」
「くっ!? デウエス・ティタノマキア!!」
「行くよ! トワイライト・シンドローム!!」
フィールドで、二人の最強のオリジナルトリック同士が激突した。
蒼き雷と淡き月の光が激突する。余波で凄まじいソウルの奔流がドームを中に広がり僕達の所まで届く。
「うぉ!?」
「きゃ!?」
「ううっ!?」
『決まったな』
思わず目を瞑る、衝撃と余りの眩しさに目が眩んでしまう。
「そこまでだ!! 勝負あり!! 勝者田中マモル!!」
開けた視界に入ったのは、仰向けに倒れたユキテル君と立ったままのマモル君。マモル君のお父さんがユキテル君に駆け寄って治療を始めている。
「ユキテル! マモル!」
二人の名前を呼びながらフィールドへと走るイズナちゃん達、僕はそれを立ち尽くしたまま眺めている。
僕に……僕にはあそこへと駆け寄る資格はあるのか?
卑怯者の僕に、嘘つきの僕に、最低な裏切り者の神立ビリオはあそこでみんなの輪に加わる事が許されるのだろうか?
再びユキテル君に興味を持ち出した本家へと情報を流し、CC団にも尻尾を振る節操なしの恥知らず、それが僕だ。
ユキテル君を監視して本家に情報を流し、信用を手に入れて儀式の情報を手に入れた。
そして、その儀式の情報をCC団に横流しした。CC団がその情報を利用すれば、彼等独自のソウル技術なら彼女が復活する可能性がある。
実際に似たような境遇だった金星家の彼女は復活を遂げた。ユキテル君より前に儀式で肉体を失ったはずの金星アイカは再びこの世に舞い戻った。
今では自らの意思でグランドカイザーの元で力を振るっている。金星本家に、ひいてはプラネット社に、そして惑星を冠する一族の頂点に立つ者、太陽の力を持つ盟主を倒す為だと言っていた。
あの技術の為に僕はCC団に頭を垂れる。CC団に積極性が無いと言っていたマモル君の直感は正しい、僕が予めヨリイトストリンガーズの情報を流して襲撃をリークしていた。
末端の戦闘員には知らされていないが、CC団としては襲撃されても問題無い様に立ち回っていた。通報しているのも嘘ではないが、あれも組織の息がかかった者達だ。戦闘員は秘密裏に開放されて再び組織へと合流している。
要塞の件だって間違いではない、本来なら“湖上要塞マルドゥーク“が出現する予定だったが……PTAの襲撃によりそれが不可能になった。
ムーンリバースとマーズリバース、非常に強力な二人のストリンガーがこの町で暗躍している。糸造博士は二人に敗北した。
撚糸町をソウルワールドと化し、ソウルを集めて巨大なソウルの糸を作り月と接続させる“コネクトムーン計画“は失敗どころか部分的に乗っ取られたらしい。完全ではないが月のソウルが一部奪われたとの情報もある。
撚糸町でのCC団の活動は終了せざるを得ないだろう。後片付けや監視などの細々とした活動はあるだろうが、表立った作戦行動は今後は行われない。
だが、僕の活動が終わるわけではない。CC団との、グランドカイザーとの契約はまだ続いている。
マモル君はこの町を出るが、ユキテル君の監視はまだ続けなければならない、僕はこれからもユキテル君の様子を組織に流し続ける。
いかなる理由があろうとも、それが誰のためだとしても許されるべき行為ではない。友達を欺き嘘を重ねる僕は救いようの無い屑だ。
でも、だからこそ、屑だからこそ最後まで嘘を貫き通さねばならない。みんなが笑顔のままで居られる様に、失われた存在を取り戻す為に。かつて果たせなかった約束を果たす為に。
ユピテル君を……いや、ユピテルちゃんを元の姿に戻す為に。
全てが終わった後に罰を受けよう、事が終わればあの輪の中に僕の居場所は無いだろう。
それまで僕は、嘘を吐きつづける――
「ユキテル君! マモル君! 大丈夫でやんすか!?」
救いようの無い道化だ。ソウルとソウルギアを私利私欲の為に汚す僕は地獄に落ちるだろう。
自身の欲望の為に友を欺き利用する。そんな奴はストリンガーの風上にも置けない。
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