第21話 救援要請!! 即時応答パーフェクトレスキュー!!
懸賞金が掛けられてからの舞車町での生活は、広まっていく田中マモルの悪評とは裏腹に目立った争いもなく平和に過ぎて行った。
だが、夏休みが近付くにつれて、町には見慣れぬランナーやカタギとは思えない輩がうろつくようになった。
トウヤ君曰く、田中マモルの情報を得ようとしている賞金稼ぎに加え、同盟会儀に乗じて一族の情報を得ようとする輩が集まっているそうだ。少数ではあるが、前乗りしている同盟会議の参加者もいるらしい。
チームで町をパトロールして分かったが、賞金稼ぎ共は厳つい見た目に反して意外な程に騒ぎを起こさない。
主に町の賞金稼ぎ向けの酒場(ノンアルコール飲料のみを提供)でたむろっており、たまの喧嘩もルールを守ったソウルバトルで決着を付けてるので健全過ぎるくらいだ。
レイキ君曰く、トウカさんの縄張りで騒ぎを起こすような輩は三流、もしくは余程イカれた奴のどちらかだと言っていた。
僕の中でのトウカさんのイメージは、座られたガールで縛られたガールとして固定されているが、対外的にはカリスマに溢れ、確かな実力を兼ね備える舞車町の女王。惑星の一族を代表するNo.1ランナーだ。賞金稼ぎ達が恐れる程に影響力があるらしい。
だから町は平和……そう、平和だ。
別に平和な事に文句はない、むしろ平和は大歓迎だ。
だが、とにかく町に人が多くなったのだ。人が多くなったと言う事はその分視線も多くなる。
正体が15億の首を持つレアキャラの僕としては非常に心の休まらない状況となった。
なので最近は恐ろしいので自宅でもソウルメイクアップを解除しない。就寝時でも解除せずにで24時間田中マモコだ。
チームのみんなにソウルメイクアップを使いまくったので、息をするように自然にソウルメイクアップが可能な程に熟練度が上がってしまったのは幸か不幸か……
ユピテル君は「はは、最近マモルの姿を見てないから忘れちまったぜ」なんて笑っていたが、僕としては笑い事では無い。父さんが言っていた戻れなくなる発言が恐ろしい。
こういう時に相談したい父さんは家にいない……つーか舞車町に引っ越して来てソウルメイクアップの訓練してからは一度も家に帰って来ない。
放任主義オヤジめ……母さんも電話にも出ないしメッセージにも既読がつかない。
まだ星乃町で暴れているのか? いい加減にしておくれよマミー。
なあマモル、最近いつも一緒だったお前を遠く感じるよ。会いたくて震えるでヤンス……ウゴゴ。
もしかして僕はこのまま田中マモコとして生きなければならないのか? そんな不安が頭をふとよぎる。
ははっ、そんな訳が無い。きっと来年の夏まで我慢していれば全て解決している。なぜなら僕は母さんを信じている!!
……来年には懸賞金が倍になっていたりしないよね?
そして、遂にかったるい終業式が終わり、みんな大好き夏休みへと突入した。
同盟会儀は8月に入ってから開催されるので、もう少し時間があるのだが……舞車町の賑わいは夏休みに突入して更に勢いを増した。ちょっとしたお祭りの様な雰囲気が町に漂っている。
そして、中国を満喫しているであろう仲間達からはまったく連絡が来ない。ミカゲちゃんですら連絡しても繋がらない、まさに音信不通だ。
例の新しい仲間の連絡員はどうした? 誰でもいいから状況を説明してくれ……
そして、クリスタルハーシェルでの活動だが、夏休みに入ると流石に訓練する余裕は無くなった。
クリスタルハーシェルはこの町を取り仕切るチームでもある。イベント事の前は非常に忙しい。
トウカさんは言うまでもなく責任者なので、同盟会議に向けての様々な事柄を取り仕切ったりであちこちに引っ張りだこ。四天王達もその補助をして駆け回っている。
僕、トウヤ君、ヒカリちゃん、ヒムロ君、レイキ君は基本的に町をパトロール、たまに6年生組の補助が仕事だ。
パトロールは基本的に二人一組での巡回だが、僕以外の5年生組が他の仕事で手が空かない時、ユピテル君が共に居る僕のみで町をパトロールしたりもする。
事件が発生したのは、ちょうどそんな日だった。
ソウル体は調整しておけば汗をかいたりはしない。
なので、クソ暑い夏真っ盛りでも、真っ黒なゴシックドレスで全身をバッチリと決めて、日傘を差しながらパトロールするのが僕のスタイル。
そんな格好で、ユピテル君と共にアイスを食べながらパトロールしていた僕に、緊急事態を告げるメッセージが届いた。
みんなでカラオケに行く何時ものビルに、EE団が出現して暴れている。クリスタルハーシェルの全てのメンバーは至急現場へと向かえと指令が入ったのだ。
緊急事態なので、お行儀は悪いがトワイライト・ムーンを使ってソウルの糸を建物に繋いで引き寄せる高速移動をしつつ現場へと向かう。
飛んで行けるユピテル君には先行してビルの偵察をお願いした。
現場のビルの周辺には遠巻きに野次馬と避難客らしき人混みが出来ていた。
人混みの先、ビルの入口付近に十数名のランナー達が見える。彼等は確かクリスタルハーシェルの下部チームのランナーのはずだ。現場の対応に当たっているのだろう。
トワイライト・ムーンを使った高速移動の勢いそのままに人混みを飛び越え、その集まりの側に降り立つ。彼等は急に飛んで来た僕に驚いた様子だ。
「おまたせ。連絡を受けて到着したわ。状況を教えてちょうだい」
「た、田中さんでしたか……EE団の連中は一時間程前にこのビルを中心にソウルワールドを展開、内部の従業員や利用客達を次々と追い出し、またたく間にこのビルを占拠した模様です」
「避難して来た利用客の証言によると、偶然現場に居合わせた“ビックアイス“のメンバー達がEE団に応戦したらしいのですが……奴等はかなりの人数らしく、敗北して捕らわれてしまった様です」
「EE団はビックアイスのメンバー6人を人質として、彼等を解放する代わりにトウカ様の身柄を要求しています……クソ! 卑劣な奴等め!」
「なるほど……状況は把握したわ」
ソウルワールドならビルごと潰してやるのが一番手っ取り早いんだけどな……人質とはなかなか厄介だ。
説明を受け、改めて5階建てのビルを見上げる。
周囲一帯は既にソウルワールドと化している。これは間違いなく悪の組織の技術、犯行はEE団の仕業で間違いないだろう。
悪の組織の犯罪行為は、思ったよりは施設に被害が及ばない。
奴等が活動する時は大体ソウルワールドを展開するので、派手に暴れても解除すれば建物は元通りとなるからだ。
とは言っても、迷惑で悪質なのに変わりは無い。そんな事実は僕が奴らに手加減する理由にはならない。
ぐるっと辺りを見回す、クリスタルハーシェルのみんなが駆け付けてくる様子はない。僕とユピテル君がチームで一番乗りのようだ。
うーん、どうしたものかな。
ビックアイスはクリスタルハーシェルが従えてるチームの一つ、僕のクラスメイトで初日に屋上へ案内してくれた鈴木さんも所属しているチームだ。
早く助けてあげたいけれど、人質が絡んでいる以上あまり勝手な真似は出来ない。多少無茶すれば速攻で終わるんだけどなぁ。
悩んでいると、ビルの中から人がすり抜けてこちらへと飛んで来る。
正体はもちろんユピテル君だ。周囲のランナー達はその光景に驚かない。ユピテル君の姿が見えるのはこの場では僕だけだからだ。
僕以外にユピテル君が姿を見せてるのは、舞車町内ではクリスタルハーシェルのみんなと……後は父さんと地杜さんかな?
『おいマモル、調べて来てやったぞ。ちょっと耳を貸せ』
僕の隣にやって来たユピテル君がコソコソと耳打ちしてくる。
いやん♡ ちょっとくすぐったい。ふむふむ、なるほどねえ。
「フフッ、人質の人数は間違いなく6人。全員5階に集められて拘束されているようね。そしてビル内部のEE団員は総勢34人、内2名が推定Aランク相当の準幹部級かしら? そして5階では妙な装置を組み立てているみたいね」
ユピテル君に偵察してもらったので内部状況の把握はこれでバッチリだ。余程ソウルの扱いに長けた奴じゃないと、意図的に姿を消したユピテル君を見る事は疎か気取る事も出来ない。
ククッ、EE団のアホ共は僕に一方的に位置情報を知られた。さてさて、どう料理してやろうかな?
フヒヒ、久しぶりだからじっくり痛めつけるのも悪くないでヤンス。
「外から見ただけで分かるのか? これが噂に聞く青き魔眼の力……」
「ああ、トウヤの奴が言っていたぜ。田中さんには全てを見通す力があるってな」
「そんな訳ねえだろ、適当言ってるに決まってるぜ」
「あの人学校でもたまに一人でブツブツ言ってんだろ? そういう人なんだって」
僕の発言に周囲がざわつく。
くそ、トウヤ君適当な噂を流しやがって……それに悪口も聞こえているからな? 言った奴の顔は覚えたぞ?
『天王トウカはまだか!? 早く出てこい!! 人質を助けたいのならば早くしろ!!』
内部から拡声器越しの怒鳴り声が聞こえて来る。
トウカさんの身柄? 人質を取るパターンだとソウルギアを寄越せって言ってくるケースが多いので珍しい要求だ。責任者のトウカさんが居なくなれば同盟会議を潰せると思ったのか?
「田中さん! トウカ様達がこちらへ向かう途中でPTAの襲撃を受けた模様です! トウカ様はこちらの事態の収拾は田中さんに一任すると言っています!」
くそ、PTA共め。こんなタイミングでちょっかいをかけて来るとは……だが、トウカさんから現場を任すとの許可が出た。ならば手早く解決しよう。時間を掛けると不味い事になる。
ユピテル君の言う妙な装置、意識を集中してソウルを探ると正体が分かる。
この独特な歪んだソウルの感覚は転移装置で間違いないだろう。過去の組織との戦いで、何度か使われた事があるので知っている。
ソウルワールド内限定だがワープを可能にする夢の様な装置だ。
あれは、この場に展開されているソウルワールド内のみならず、他所で展開されているソウルワールドへの転移も可能だったはずだ。
それはつまり、あの装置の組み立てが終了すれば人質達を遠方へと連れ去る事すら可能と言う事、あまりぐずぐずしている時間は無い。
人質達は不安よな。田中マモコ動きます。
「田中さん、ビル内部の情報が真実ならやりようはあります。ここはセオリー通りに交渉に応じる振りをしてその間に別働隊を……」
「いえ、早く助けないと不味いわ」
「は、はあ? それはどういう……」
悪いけどじっくり説明している暇はない。
「瞬け! プラチナ・ムーン!」
流れる様な動作でソウルをチャージしつつ、愛機をビルの入口へと放つ。我ながら良いチャージインだ。
そのまま光の軌跡を描きつつ、ビル内部のプラチナ・ムーンで1階の戦闘員を次々と貫く。ソウルランナーを通じて敵のソウルを感じ取れば見なくてもこれくらいは遠隔操作で余裕だ。
そして、2階、続けて3階、更に4階の戦闘員共を次々と撃破して行く。
残りは人質も居る5階……おっ、一撃で倒れない奴が2人、準幹部級だな?
でも、2人とも良い位置だ。僕から見て直線上に並んでいる。腰のホルダーからピース・ムーンを素早く抜き放つ。
「ペネトレイト・バレット!!」
連射は出来ないが貫通力に特化した必殺技だ。雑魚をまとめて貫くと気持ちがいいぞ!
ピースムーンから飛び出るソウルの弾丸が光の線を描きつつビルの壁面と床を貫通、5階に居るEE団の2人を一度に貫く。
ソウル体を破壊した手応えバッチリ、これでビルの内部のEE団は全滅だ。
「終わりよ、人質達を迎えに行きましょう」
髪をファサッとかきあげて言い放つ……フッ、決まったね。
「い、今ので終わった? 本当に?」
「そ、そんな訳ないだろ!? 何人か倒しただけのはずだ!」
「田中さん! アンタ何やってんだよ!? 人質がいるって言っただろ!?」
「半端に刺激してどうするんだ!? 馬鹿なのかアンタは!?」
あ、あれ、なんか評判悪いぞ?
しかも馬鹿呼ばわりされている……くそ、確かに正論ではあるから言い返せない。
ぐぬぬ、僕の神業が理解出来ない凡人共め。敵を倒した事ぐらいソウルを感じ取って把握しろよ。
仕方がない、彼等にも分かりやすくしてやろう。
「シックス・オン・ワン!!」
神速の抜き打ちで六つの弾丸を放つ。弾丸を炸裂させ、ビルの壁面に6つの大きな穴を追加する。
うん、これくらいの大きさの穴なら十分だろう。
「真昼に浮かべ! シルバー・ムーン!」
上方へとシルバー・ムーンを放ち、空中で激しく回転させる。
順回転により引き寄せる力場を展開、先程倒した時にマーキングしたソウルの持ち主だけ、つまりはEE団のみが力場の対象になるように調整を加える。
シルバー・ムーンに向かって、先程開けた壁の穴から気を失ったEE団の戦闘員達が次々と引き寄せられて飛び出して来る。ちょっとシュールな光景で笑える。うぷぷ。
「ストリングスパイダープリズン!!」
続けてトワイライト・ムーンを起動してオリジナルのトリックを決める。
僕の左手から放たれる機体と複数のソウルの糸が縦横無尽に迸る。それらはまたたく間に蜘蛛の巣の牢獄を形成、気を失ったEE団共を次々と中空に拘束する。
えーと、捕まえた奴等は……ひぃふぅみ……ほら! 34人居る! ちゃんと数えたぞ! これで全員だぜ!
いやー、ソウルランナーに特化した舞車町のソウル傾向でここまで他のソウルギアを使いこなせるのは僕だけじゃないかな? やはり天才か……
「これで大丈夫。さあ、人質達を迎えに行くわよ」
口を開けて驚いている周囲のランナー達に声を掛け、返事を待たずにビルへと歩みを進める。
「い、行くぞみんな! 田中さんに続いてビルに突入する!」
「け、警戒を怠るな、まだ敵が潜んでる可能性もあるぞ!」
困惑しながら僕へ付いてくるランナー達、もう敵は居ないって……まあいい、納得するまで調べるといいさ。
エレベーターを使って5階へとたどり着く、
装置の前でビックアイスのメンバー6人が困惑した様子で集まっていた。
戦闘員を倒すついでに拘束しているバンドをプラチナ・ムーンで切っておいた。自由に動けて当然だ。
「みんな、ケガはないかしら? 痛みがあるようなら治療するわよ?」
困惑気味の6人に声を掛ける。
ふむ、見たところ癒やすなら手首の拘束された跡くらいかな? 他にケガはなさそうだが念の為に聞いておく。
「だ、大丈夫だよ田中さん。急に光が走ったと思ったら敵が倒れて、ビルの外へ飛んで行ったから驚いたけど……あの光は屋上でも見たからね。田中さんのソウルランナーだって分かった。私なんかを助けてくれたんだね……ありがとう」
鈴木さんとは、転校初日以来微妙に距離がある。例の呼び出しは気にしていないと伝えたが、僕を騙した事を後ろめたく思っているようだ。
ちなみに、指示を出した四天王共と黒幕のヒカリちゃんはもはや一ミリも気にした様子は無い。
それどころか人を勝手に創作のモデルにしたり、上手なソウルストリンガーによる亀甲縛りの方法を尋ねてきたりとやりたい放題だ。もうちょっと気にしろや。
「私は鈴木さんの事を、クラスメイトで友達だと思っている。それにビックアイスのみんなは舞車町で共に平和の為に戦う仲間、助けるのは当たり前よ」
そう言いながら、鈴木さんの手を両手で優しく包む。拘束バンドで圧迫された手首に癒やしの力を施す。赤くなった跡はすぐに消えていった。
「た、田中さん……」
涙ぐんで僕の言葉に感動した様子の鈴木さん、僕の真心が通じた様で良かった。
他の5人も順番に手を取って癒やす。みんな僕へと感謝の言葉を口にしてくれた。
「た、田中さん、ビルの内部をくまなく確認しましたが敵は見当たりませんでした。先程田中さんが倒して拘束した戦闘員で全員だった様です……」
癒やしの力を施す僕の元へ、下の階からランナー達がやって来た。
代表して僕へと声を掛ける坊主頭の男の子は、どこか気まずそうな雰囲気を醸し出している。後ろで僕から視線を背けている他の人も同様だ。さっき僕の行動を咎めた事を気にしているのだろう。
「あっ……それが装置ですか。その、申し訳ありませんでした。田中さんの発言を疑うような事を言ってしまって……」
おっ、転移装置に気づいたね? しかもちゃんと謝ってくれた。偉いぞ。
「いえ、私の方こそ勝手な行動をしてごめんなさい。この装置は組織が使う転移装置、以前奴等のアジトを襲撃した時に同じ物を見た事があったからすぐに分かった。これを使われたらビックアイスのみんなが遠くに連れ去られたかもしれない、時間を掛けるのは不味いと思ったの」
「こ、これが噂の悪魔の発明。そんな理由があったとは……」
「くっ、確かに時間をかけていたら取り返しのつかない事になっていた」
「そうか、だから田中さんはあんな強引な方法で解決を急いだのか」
「人数も合致して装置も実在した。間違っていたのは俺達の方か……」
口々に後悔と反省の言葉を口にするランナー達、凄く悔しそうだ。
やれやれ、圧倒的な僕の実力に自信を喪失してしまったかな? フォローしてやるか。
「みんな、嘆く事は無いわ。私がビルをスムーズに制圧出来たのはアナタ達が簡潔に情報を伝えてくれたおかげよ」
「田中さん……ですが俺達は――」
「それに、交渉するのが正解なケースだってある。その分野で私は活躍することが出来ない。その時はアナタ達の様な冷静な判断が出来る仲間がいると心強いと思うの。その時が来たら、その力で私を助けてね?」
「俺達が田中さんを? 田中さん程の力があれば助けなど……」
いや、僕は出来るだけ人の力を当てにして生きて行きたいと思っている。
「私達は共にトウカさんの元で舞車町を守る仲間よ。それぞれ得意な事や出来る事、知っている事も違う。でも、それらを持ち寄って力を合わせる事が出来る。そうやって束ねた力を……私は絆と呼べると信じている。私はこの町でアナタ達とも絆を紡ぎたいと思っているの、これからも一緒に舞車町の為に戦いましょう?」
「た、田中さん。そんな風に思って…」
「そうだな、俺達の力だって無駄じゃない!」
「ああ、やろうぜ。これからも舞車町を守ろう!」
「そうだ! それにこの町にはトウカ様と田中さんが居る! 組織なんかには負けない!」
僕の言葉に元気を取り戻すランナー達。先程の暗い雰囲気は無く、やる気に溢れた様子で僕を尊敬の眼差しで見て来る。
んほぉ〜♡ 下々の称賛の眼差しが気持ちいぃ〜♡
もっと尊敬して? もっと褒めて? もっと讃えて? 慈悲に溢れる女神の様な僕を崇め奉って?
これでコイツ等はカワイイと強さを両立するこの僕に夢中だろう。圧倒的な実力と癒やしの力まで兼ね備えた僕はまさに完全無欠、舞車町のランナーサークルの姫に相応しい。
ウェヒヒッ、こうやって徐々に下部チームの奴等を助けて信頼を勝ち取れば、普段からコイツ等にスムーズに指示を出してコキ使える様になる。いざという時には向こうも助けてくれるだろう。
舞車町で当初想定していたポジションとは少しズレた気もするが……今の立場は悪く無い。町の頂点に立つチームに所属しているが、責任を取るリーダーではない立場は気楽で素敵だ。
しかも、チームが同盟により高度に組織立っているから雑事は下部チームに任せる事が出来る。
クリスタルハーシェルのみんなからの信頼は勝ち得た。次は下部チームのみんなにもよく思われたい。
いくら命令が出来る立場とは言っても、嫌われていると居心地が良くない。こうやって信頼ポイントを積み重ねるのは大事だ。まだ他のチームのランナー達とはあまり交流が出来ていない。これから好感度を稼ぎまくるぞい♡
ソウルワールドを展開する装置の捜索、警察への通報に周囲への説明、その他諸々の雑事は面倒臭いから張り切ったランナー達へと一任した。
僕は5階の装置の前でユピテル君と共に、ビルの正面に吊るして捕えているEE団を監視しながらみんなを待つ。
ぼちぼち意識を取り戻したEE団の奴等がピーチクパーチク騒いでいる。ププッ、逆さ吊りで凄んで騒ぐ様子は滑稽だね。
少しうるさいので、ソウルの糸に振動を加えてやり、少し自由落下させて脅す。
慌てふためく姿が面白い。何回か繰り返すと大人しくなった。
そして、ユピテル君としりとりをしながら大体三十分程待った後、トウカさんとトウヤ君達5年生組がやって来た。四天王達は向こうの現場の後処理に残ったらしい。
「フフッ、そっちはPTAの相手に忙しかったようね。問題は無かった?」
「すまねえマモコ、バッチリ解決と行きたかったんだけどよお、PTA達には逃げられちまったぜ……」
「途中までは良かったんだけど、ヴィーナスリバースにマーキュリーリバース、マーズリバースまで現れたんだ。あのクラスの相手に時間稼ぎに徹されると難しいね……」
「チッ、しかも奴等はトウカ様を誘拐するなんて抜かしやがった。ふざけやがって、俺達の前でそんな事させるはずがねーだろ」
「うーん、なんか今日のPTAは変な感じだったね? なんかいつもと伝わってくる望みが違ってた。ソウルランナーの破壊よりもトウカ様を攫う事に固執していたし……」
うわ、PTAの幹部が増えてない? 何人居るんだ?
でも、やっぱり母さんは居ないみたいだな。まだ星乃町で田中マモルネガティブキャンペーン中のようだ。
しかし、赤神先生よお、誘拐ってのはアウトだろ。遂に女の子にまで守備範囲を広げたのか? やっぱり通報した方がいいのかな……
「………………」
あれ? トウカさんが黙ったままだ。
なんだか元気が無いな。そんなに逃げられた事がショックだったのか?
そっか、同盟会議は近い。逃げられたのを自分の失態だと思っているのか。
仕方がない、最近忙しくて疲れているだろうし……僕が元気付けてやるとしますか。
「ほら、トウカさんビルの外を見て? 私のオリジナルトリックの拘束技、ストリングスパイダープリズンよ。上手く縛れているでしょう?」
ほらほら食い付け、我ながら芸術的な縛り具合だぞ? こういうの大好きだろう?
「……ん、見事だなマモコ。それに、こちらは一人も逃さずに捕まえたらしいな。キミに任せたのは正解だったよ」
は、反応が薄い? いつもなら興味深々で自分も縛って欲しいとか言ってくるのに……本気でヘコんでいるのか?
くっ、他になにか食い付く話題……これにするか。
「トウカさん、この装置を知っている? ソウルワールド内でのみ使える転移装置よ」
かなりレアアイテムだと思う。カイテンスピナーズ時代に、自分達で利用しようと思ってアジトを襲撃して漁ったけど滅多にミツカラナカッタ。
しかも、ソウルワールドから移動させると壊れるし、解析しようとしても壊れる。こんな美品は滅多にお目にかかれんぞ?
「これが例の装置か……EE団は私の身柄を要求していたらしいな。なるほど、こんな物まで持ち出して来るとは本気だったのか」
うーん、食い付きが悪い。これは重症かもしれん。こんなに元気の無いトウカさんは初めて見た。そんなトウカさんの様子に、トウヤ君達も少し戸惑っている。
「これが噂の転移装置なんだねマモコさん。プラネットラボから離反した最悪のドクター4人組が開発した解析不能な悪魔の発明。これのせいで数多くのソウルギア使いが誘拐されたとか……初めて見たよ」
トウヤ君が気を使って話に乗ってくれたようだ。
しかし、そう聞くと恐ろしい装置だな。確かにそういう用途で使うなら悪魔の発明と呼ばれるのも納得出来る。その技術をもっと平和的に利用しろよジジイ共め。
「へえ、もしかしてその4人のドクター、玉造博士とか独楽造博士とか呼ばれてる人達の事かしら?」
あの変なヘルメット被ってテンション高いジジイ達だろ? それぞれBB団とSS団を率いていたマッドサイエンティストには会った事がある。
確か更に上になんたらカイザーとかいうボスか居るとかも言っていたな。
「うん、そうだよ。玉造、独楽造、糸造、道造。伝統あるソウルギアマイスターの中でも最高峰の名を襲名しておきながらプラネットラボから離反した4人のドクター達だね」
へえ、元はプラネットラボの人間だったのか。ありがちな感じだね。
「歴代のマイスターの中でも最高の頭脳の4人が揃った奇跡の世代が一変、最悪の世代と呼ばれる様になった“星乃町の悲劇“ってやつだな。あの博士達が居なくなった事で、プラネット社のソウルギア研究は50年遅れる事になったと嘆かれているぐらいだぜ」
うそ臭え……あのジジイ達がそんな凄い人物には思えない。年寄りの癖に変なテンションだし、正月に要塞を出現させる迷惑者だし……独楽造博士なんてアイジ君にやられて床で無様に転がっていたよ?
「あのドクター共にはそれぞれ、プラネット社から40億以上の懸賞金が掛けられている。アイツ等の頭脳を求める組織は多い、アングラな方面に引き渡せば100億は下らねえって噂もあるな。へっ、この町にちょっかいをかける道造のジジイは是非とも突き出してやりてえよ」
け、懸賞金でジジイ共に負けた……くそ、ちょっと悔しい。
ん? つまりミナト君と戦った空中要塞マキュリイでも、アイジ君と戦った地上要塞ヴィヌスでもついでに捕まえておけば30億ゲットチャンスだった?
裏なら100億!? 倍プッシュで200億か!?
うわーもったいねえ……あっ、僕が気絶している間にミタマシューターズとカイテンスピナーズのみんなは博士達を捕まえたんだよな? あれって警察に引き渡したのかな……
「フッ、そうだな。この舞車町の平和を脅かす奴等は許せない、それが私の役目だ……」
うーん、トウカさん本当にどうした。もしかして服の下で自分を縛ってて苦しいとか言わないよな。
「トウカ様、最近忙しくて疲れているんじゃないですか? 今日は私達に任せて休んだ方が……」
「いや、大丈夫だヒカリ。同盟会議の目前に騒ぎが起きて少し弱気になってしまってな。フッ、責任者として情けない姿を見せてしまった……すまない」
「そんな事無いよ姉さん! 姉さんの働きはこの町のみんなが知っているよ!」
「そうそう、トウカ様が情けないなら俺達なんて立場が無いぜ」
「アンタは胸を張っていればいいんだよ。もしも情けないなんて言う奴がいたら俺が黙らせてやる」
「トウカ様……」
トウカさんは慕われてるなぁ、麗しいチームの絆だね。
はあ、辛い時に励ましてくれて、ちゃんと言う事を聞くチームメイトは羨ましいでヤンス。
クリスタルハーシェルはホウレンソウがしっかりしているし、海外へと違法賭博に行ったりしない……素敵やん?
久し振りに騒ぎを起こしたEE団とPTA。
同盟会議に向けて警戒を強めたが、それ以降はまったく出没する事もなく日々は過ぎて行った。
そして、いよいよ同盟会議を明日に控えた8月の午後。ヒカリちゃんとパトロールをしていた僕に、トウカさんから呼び出しが入った。
パトロールの続きをヒカリちゃんとユピテル君に任せ、僕は中央小学校の生徒会室へと向かった。
すっかり馴染みが深くなった生徒会室のドアの前に立つ。ほんのり嫌な記憶をリフレインさせつつ、トイレノックを叩き込む。
「トウカさん、私よ、開けてちょうだい」
「ああ、パトロール中に呼び出して悪かったなマモコ。周囲に人は居ないか? 確かめてから入ってくれ」
ドアの向こうから聞こえて来るトウカさんの声。なんか警戒してる……また自分を縛っていたりしないよな? 呼び出しておいてそれはマジで怒るぞ?
とりあえず指示通りに周囲を確認した後、扉を開けて中に入る。
生徒会室の中でトウカさんは正しく椅子に座っていた。縛られていたり、自分が椅子になったりもしていない。なんだよ、やれば出来るじゃねえか……
「ふう……それで、いきなり呼び出してどうかしたのトウカさん? なにか秘密の企みかしら?」
わざわざ僕一人を呼び出したって事は秘密の話だよな?
「フッ、秘密の企みか……そうだな、その通りだ。マモコ、君に頼みたい事がある。明日の午後、三丁目にあるパーツショップの店長にこれを届けて欲しい」
そう言ってトウカさんは机の上に白い便箋を置いた。
僕はそれを近付いて拾い上げる。特に変わった所は見当たらない普通の便箋だ。
三丁目のパーツショップの店長ってオッチャンの事だよな? ゲスゲスうるさい怪しいヒゲモジャの不審者だ。
最初の案内以降も、何回かみんなとパーツショップに買い物に行っているので顔見知りではある。届けるのは別に構わんけど……
「明日の午後は、第一体育館で全員集合して決起集会があるんでしょう? 私は参加しなくてもいいの?」
この中央小学校の第一体育館は、体育館と言うよりもスタジアムだ。2千人以上が集まっても十分なキャパがある。
公立のはずなのに税金の使い方が狂ってるとしか思えない。僕はまだ市民税を払ってないから許すけどね。
あっ、そういえば不老不死になったら僕は永遠に各種納税を続けなければならないのか? 嫌だなぁ、20歳前で肉体を止めて一生被扶養者で暮らしたいでヤンス。養われてえ。
いや、それだと永遠に年金が貰えないかも……悩むなあ。
「その通りだマモコ。君は午前中にタイヨウ達をみんなと一緒に校庭で出迎えた後、昼食会には参加せずにその封筒を届けて欲しい。ユピテルを連れてな」
えぇ? 昼食はJOJO苑の焼き肉弁当が出るってヒムロ君に聞いたから楽しみにしていたのに……ユピテル君も絶対に文句言うぞ? 俺にも焼き肉弁当食わせろって。
「実はなマモコ。プラネットソウルズの他のチーム達、特にタイヨウのサンライズコペルニクスが君がチームに加入した事に異を唱えている。クリスタルハーシェルに相応しい人物ではない……そう言われてな」
「あ、あら? それは心外ね……」
うえぇ!? なんでぇ!? 清廉潔白で品行方正、公明正大にて頭脳明晰、出前迅速落書き無用でカワイイカワイイ僕の存在に異を唱えるだと!?
なんて愚かなんだ天照タイヨウ……見損なったぞ! 僕に後ろめたいことなんて何も無い! 横暴だ! 訴えてやる!
「理由は田中マモルだ。君と田中マモルの関係性をタイヨウは疑っている。君も田中マモルも月読家の人間である事は、タイヨウ程の立場なら知るのは容易いだろうからな」
ふ、ふーん? まあ、そういう説もあるよね……
「もちろん私は反論した。君の存在が月読家に正式に認められている事は、プラネット社を通して月読家当主から確認済みだ。田中マモルの行動は月読家にとっても本意ではなく、何者かにそそのかされて暴走していると正式に答えが出ている。本来ならばキミに関しては文句を言われる筋合いは無い」
「そ、そうね。その通りよ」
あ、危ねえ、母さん良くやったぞ! そうだそうだ! 田中マモコは悪く無い! 悪いのは田中マモルだ! いや!? 悪くねえぞ!? もはや意味が分からん!
「だから、明日の決起集会で君が槍玉に上げられてしまう可能性がある。一族のソウルギア使い達は大多数がタイヨウの信奉者だからな、ああ言った場で問題を提起されれば大多数がタイヨウを支持するだろう。そうなれば、私も庇い切れる自信が無いんだ」
うっ、大勢の前で晒し者にされるのはゴメンだ。
「私もキミを仲間外れにするようで心苦しい。だが、少しだけ我慢をしてくれないか? その封筒には店長へ仕事の依頼書が入っている。君は組織やPTAへの警戒の為に独自に動いている事にしておこう、この会議の期間中に私がタイヨウを説得してみせるから待っていてくれ」
うーん、そこまで言われちゃ断れん、トウカさんは僕の事を心配して色々と行動してくれる様だ。
焼き肉弁当は……ヒカリちゃんに頼んで二人分確保して置いてもらおう。
「そうね、了解よトウカさん。私を心配してくれてありがとう」
「フッ、礼には及ばないさ。これはチームメイトである君を守り切れない私の力不足が招いた事態だ……責任は取る。それが私の役目だからな」
うーん、あの襲撃の日以来トウカさんは元気が無いままだ。
表面上は取り繕っているけれど、チームのみんなや僕はそれに気が付いている。
だが、それを指摘をしても本人は大丈夫としか言わない。最近は今までとは別の方向で困ったちゃんになった。
「トウカさん、そこまで役目や責任を背負い込む事は無いわ。抱えきれない程に重荷になったら放り捨ててしまえばいいのよ。少なくとも私はそうした」
「駄目だ。それは出来ない。私は天王家の娘として生まれ、その恩恵を受けて育って来た。得るものだけを得て投げ出す事なんて出来はしない……それに、お父様や家の人間、惑星の一族はそれを許したりはしない」
まあそう思うよな、だけど……
「でも、私は許す。トウカさんが全部嫌になって投げ出しても許してあげる。それに文句を言う奴が居たら私に言いなさい、ぶっ飛ばしてあげるわ」
トウカさんが逃げ出したいなら、僕はそれを肯定しよう。
「マモコ……ふふ、それは心強いな」
父さんは僕が役目から逃げる事を肯定してくれた。母さんだって最終的には認めてくれた。それによって僕は確かに救われた。
それに、トウカさんは早々に逃げ出した僕と違って今まで立派に役目をこなしてきたのだ。許されないなんて馬鹿げている。
僕だって逃げ出した事を誰かに責められる謂れは……妹だけだな。
マモリだけは僕を責める資格がある。マモリからの責苦は甘んじて受入れよう。
「もちろん、トウヤ君達も許してくれるわ。トウカさんが役目を投げ出したってみんなは必ず味方になってくれる」
「そうだな。みんな優しくて出来た子達だ。きっとそうしてくれるだろう……」
少し特殊な趣味を持っているけど、悪い奴等ではない。約2ヶ月同じチームの仲間として過ごして来たから断言出来る。
「そうね、だから役目とか責任なんて程々に果たしていれば問題無いのよ。失敗しちゃったらごめんなさいぐらいの気持ちでこなしましょう?」
「ふふ、随分と適当なアドバイスだが……悪く無い。私達惑星の一族に必要なのは、ゆとりのある心なのかもしれんな」
おっ、久し振りにトウカさんの笑顔を見た気がする。
やっぱり元気でいるためには悩みすぎないことが一番だ。思い詰めれば身体にまで悪影響を及ぼす。
安心と安全を胸に、伸び伸びと健康に生きるのがこの世で最も貴くて素晴らしいのだ。それが僕にとっての真理、辿り着いた答え。
もちろん、僕は僕が一番大事でカワイイけど……周囲の友達や仲間、家族にだってそうあって欲しいと思っている。
フヒヒ、それにトウカさんには元気でいてもらって約束を果たして貰わないとね?
月のソウルを手に入れる為、僕が不老不死になる為に、トウカさんが僕を助けてくれなくては困ってしまう。
だから、トウカさんには元気で居てもらわないと困る。困ってしまうのだ。
「そうね、辛い時はちゃんと助けてって言いなさい。トウカさんが助けを求めれば私が必ず助けてあげる。私だって失敗しそうな時はトウカさんに助けを求める。それで何も問題は無いでしょう?」
フヒヒ、世の中はギブアンドテイク。トウカさんみたいな有力者に貸しを作れば将来百倍のテイクになるだろう。
「ああ、その通りだ。全てのソウルギア使い達がそうなれば良いな。キミが言っていた平和な世界とは……そうやって助け合える世界の事なんだな」
おっ、ようやく前向きになったな。ソウルの半分が優しさで出来ている僕の優しい心でトウカさんが元気を取り戻した。
重苦しいトウカさんの表情が晴れ、生徒会室にいい感じの空気が流れる。
いやあ、僕は本当に良い事を言うなあ。カワイイと強いを両立させるだけに飽き足らず、心のケアまで完璧だぞい♡
「そうだ。さっそくマモコに助けて欲しいのだが……」
おっ? さっそくヘルプかい? 積極的だね。
「あら、何かしら? 私に出来る事ならなんでもしてあげるわよ?」
「その、キミがビルで使っていたオリジナルトリックがあっただろう? あれで私を縛ってくれ、実は気になってしょうが無くてな……だめか?」
なんでもとは言ったけど……この空気でそれを言うか?
うーん、弱ってて元気無いのは事実だし……
「しょうがないわね。今日は特別よ?」
「あ、ああ! 今日で最後だ! 頼む!」
「ストリングスパイダープリズン!!」
ホルダーからトワイライト・ムーンを取り出して起動、ソウルの糸で描く蜘蛛の巣がトウカさんを縛り上げる。
「こ、この大胆かつ繊細に縛られる感触――んんっ!? す、素晴らしい。やはり信頼する誰かに縛って貰うのは――ひゃん!? じ、自分でやるのとは段違いだ。これで明日は頑張れる……ありがとうマモコ、私はこれで大丈夫だ」
「ど、どういたしまして……」
宙づりになったトウカさんは実に嬉しそうだ。縛りを重ねる度にビクビクと嬉しそうに跳ねる。くっ、いい笑顔しやがって……
ごめんよ僕のトワイライト・ムーン、こんな使い方はしたく無かった。
えっ、あの子が元気になるなら構わない? マジかよ……まあ確かに元気を取り戻したから良しとするか。
明日からいよいよ同盟会議が始まる。今日ぐらいはトウカさんの遊びに付き合ってやるとしよう。
「ま、マモコ? もうちょっと強めに……」
やっぱり良くないかも……
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