第11話 新生爆走!! ソウルランナーズEE!!

 


 月が照らす夜の工場地帯を走る。出口も分からないままひたすらに走り続ける。


「ガキはそっちに行ったぞ!! 絶対に逃がすな!!」


 追跡者の怒号が聞こえる。侵入者である俺を逃がすつもりは無いようだ。


 ここはEE団のアジトの一つで、ソウルワールドと化した工場地帯だ。


 侵入者対策に現実世界からの入口とソウルワールドからの出口が別に設定されているらしく、出口を探して走り回る羽目になっている。

 そして、外から見たよりも数倍は広い敷地が広がるアジトでもあった。おかげで目当ての物は見つからず、探索中に警備システムに引っかかってしまった。


「くそッ!」


 思わず悪態をつく、こんなはずではなかった。誰にも見つからずに、EE団が秘密裏に建設しているとの噂の要塞のデータを手にいれるはずだった。


 そうすれば……あの人も、チームのみんなも俺を見直してくれるはずだった。みんなの役に立てば俺は………


 だが、現実は違った。俺の楽観的で杜撰な計画はあえなく失敗した。肝心のデータは手にいれる事ができず、俺は情けなくアジトを逃げ回っている。


「うわぁっ!?」


 足元を何かが横切り無様に転んでしまう……EE団のソウルランナー!? 追いつかれた!? マズイ!?


「捉えたぞ! 足を止めた! 全員で取り囲め!」


 転倒してもたついている内に、あっという間に戦闘員達に取り囲まれてしまった。

 

 くそっ! どうする!? た、戦うしかないのか?


「おいおい、震えてるのかよ!? 俺達のアジトに侵入しておいてタダで済むと思うなよ? オトナの恐ろしさをたっぷりと教えてやるから覚悟しろや!」


 大柄な戦闘員が、ソウルランナーを足元に待機させながら怒鳴り付けて来る。その威圧感に思わず身が竦む。


「くっ……」


「止めろ! 相手はまだ子供だぞ! ……少年、大人しく投降しなさい。そうすれば手荒な真似はしないと約束する」


 隣の男ほどではないが、大柄で筋肉質な戦闘員が落ち着いた声音で俺に投降を勧めてくる。


「お、俺は……」


 と、投降すれば助かる? 痛い目に遭わずに済む?


 駄目だ! そんな事が許される訳が無い!! 


 俺は……俺はランナーだ! 俺だってウラヌスガーディアンズの一員だ! 一族の誇りにかけて組織に屈する訳にはいかない!


「こ、断る! 俺だってランナーだ! そ、組織に屈したり……しない!」


「……仕方が無い、侵入者を無力化して拘束するぞ」


「ハハッ、言うじゃねえか! そうこなくちゃつまらねえよなぁ!?」


 震える手でホルダーから相棒を取り出す……俺を取り囲む戦闘員は十人以上は居る。時間が経てばもっと増えるだろう……それでも俺は!


「す、全てを凍てつかせろ!! サテライト・オベロン!!」


「なっ!? サテライトシリーズ!? 惑星の守護一族か!?」

「へっ! 少しは楽しめそうじゃねーか!」


 やって見せる! 俺だって出来るんだ!






 ……戦闘が始まって10分程は経っただろうか? 


 身体中が痛い、何とか姿勢を保っているが意識が痛みで朦朧としてきた。

 粘ってはみたが敵の数の前にまったく歯が立たない……ソウル体にダメージを負い過ぎてしまった……肉体的にもソウル的にも限界が来ている。


「ちっ、弱い癖に粘りやがって……鬱陶しいガキだぜ!」


「もう十分だろう! ソウルワールド内でこれ以上のダメージは危険だ! 諦めなさい!」


 知っていたさ、俺がこの人数に勝てる訳がないなんて自分が一番分かっている。それでも俺は……


「ま、まだだ……まだやれる……」


 サテライト・オベロンに意識を集中する。弱々しいがまだ操作出来る。ゴメンな……俺がもっとお前の力を引き出してやれば……


「まだやる気か? 見てられん……」


「雑魚の癖に見苦しいんだよ! この弱虫野郎が!」


 俺は! 俺は――


「弱虫? 私はそうは思わない。劣勢でも闘志を失わない彼のソウルはとても勇敢で美しい」


 声が聞こえて来た。戦場には似つかわしくない鈴を転がす様な静かな声が戦場に響いた。


「誰だ!? 何処にいる!?」


 戦闘員達が声の主を探そうと慌ただしく辺りを見回す。 


 俺はなんとなく……予感がするままに月を見上げた。


 そこには美しい白金があった。月灯りに照らされたプラチナブロンドの幻想的な美しさが俺の視線を釘付けにした。

 

 痛みすら忘れ、呆けた様にそれに目を奪われる……俺と同じ位の年齢の女の子が工場の鉄塔の上に立っていた。


 細かな装飾の黒いゴシックドレスを身に纏った彼女は、月を背に美しい白金の髪を靡かせて俺達を見下ろしていた。


「また子どもか……何者だ? この少年の仲間か?」


「フフ、残念だけど悪の組織に名乗るつもりはないの」


 そう言うと彼女はふわりと鉄塔から身を投げ出した。


「危な……い?」


 俺の心配をよそに、彼女はまるで重力の影響を受けていないかの様に軽やかに着地した。

 戦場の中心へと、彼女はまるで俺を庇うかの様に戦闘員達の前に悠然と立ちはだかる。


「ナメるなよガキが!! EE団のアジトに侵入してタダ済むと思うな!」


「君が何者かは知らないが無駄な抵抗は止めなさい、このアジトには百人以上の戦闘員が居る。見たところ手練のようだが数の前には……」


「あら、気付いていないの? このアジトで意識があるのはこの場に居る人間だけよ? 他は全て私が無力化した。仲間のソウルを感じ取れないなんて薄情ね」


「な!? くだらねえ嘘を吐くんじゃねえ!」


「っ!? 応答しろ! 監視室応答せよ! 現状を報告するんだ!」


 男が必死に無線に呼びかけるが返事が聞こえて来ない……まさか、この女の子が……本当に?


「後はアナタ達だけ……安心なさい、痛みすら感じずに一瞬で終わらせる」


「っ!? 全員防御態勢を――」


「夜に瞬け、プラチナ・ムーン」


 それは一瞬だった。


 彼女が機体の名を呼び、ソウルランナーを起動させたと思った次の瞬間には十数人の戦闘員達は地に倒れ伏していた。


 一瞬だけ光の軌跡が見えた様な気がしたが……まさかあれが彼女のソウルランナーによる攻撃? そんな……速すぎる……


「顔、血が出てる……痛むでしょう? じっとしていて」


「あっ、えっ?」


 いつの間にか俺の目前に立っていた女の子が、俺の頬に手を伸ばしてくる。

 白い指と手のひらが優しく俺の頬を包む、見た目に反して温かな感触にムズムズとした気持ちになってくる。


「て、手が汚れるから……」


 気恥ずかしくて思わず変な事を口走ってしまう……違う、もっと聞くべき事が……


「フフ、汚くなんてないから大丈夫……はい、これでお終い。もう痛まないでしょう?」


「えっ? ほ、本当だ……まさか! ソウルギアを使った治癒!?」


 ソウルギアによる治癒は、世界的に見ても物凄く希少な能力だ。

 スピナーに発現する事が多いとは聞くけど……この女の子はランナーだよな? 俺を取囲んでいた戦闘員達を一瞬で倒し、さらには治癒の能力まで持っているなんて……この子は有名なランナー? 

 いや、国内外問わずに有力な選手はチェックしている。こんな綺麗で目立つ子がいたら忘れるはずが……


「この道を真っ直ぐ行って、大きな建物が見えたら赤い扉を潜りなさい。そこが一番近い出口、ソウルワールドから抜け出せる」


「えっ?」


「通報は侵入前に済ませてあるから、もうすぐ警察がやって来る。捕まったら面倒でしょう? 早く逃げた方がいい」


 そう言って、彼女は出口とは反対方向に歩いて行く。


「ま、待ってくれ!」


 思わず呼び止める。今後の為に色々と聞き出さなくては……君は何者なのか? いったいどこの所属なのか? このアジトに侵入した目的は……


「どうしたの?」


 彼女が僕の声に反応して振り向いた。僕の頭の中が真っ白になる。まるで雷にでも打たれたかの様な衝撃が全身を駆け巡る。


 俺を真っ直ぐと見つめる青い瞳、それがあまりにも神秘的で、あまりにも美しくて……チームの為とかそういう合理的な思考が吹っ飛んでしまった。


「そ、その、君はなんで俺を助けたの? 弱い俺にはそんな価値なんて……ないのに……」


 口から出たのは、自分でも心底嫌になる卑屈な問い。

 でも、それが俺の偽らざる本音だった。心の内の疑問をそのまま彼女にぶつけてしまった。


「確かにEE団に囲まれて涙目で戦うアナタは格好悪かった。それが憐れで同情したのが理由の1つ……」


「ぐっ……」


 自分で聞いといて勝手にショックを受ける。そうだよな……


「けれど、それだけじゃない。泣いていても、みっともなくても、アナタのソウルは輝いていた。決して諦めない強さを見せてくれた。助けたのはそのお礼、素敵な可能性を見せてくれてありがとう」


 ああ、自分でも単純だと思う。強くて神秘的な彼女に少し褒められただけで……俺の心は喜んでしまった。自分の抵抗は無駄では無かったと思えてしまった。救われた気持ちにはなってしまった。


「アナタなら私の願いを叶えてくれるかもね……また会いましょう、凍咲トウヤ君」


「あっ? 待っ、君の名前は……」


 止める間もなく、彼女は軽やかに飛び上がって工場地帯の奥へと消えて行った。


「あれ? 何で俺の名前を……」


 訳が分からない。だけど、俺の心は何故か予感と期待で一杯だった。


 彼女とはまた会える、俺のソウルがそう教えてくれた気がした。






 次の日の朝、俺のコンディションは最悪だった。


 重い足取りで小学校への通学路を歩く。昨日の疲労と眠気が抜けきらない身体はダルくて仕方がない。

 でも、傷は完治している。俺の体にはかすり傷一つ残っていない、その事実が昨日の出来事を夢では無かったと証明してくれている。

 いや、傷がないなら、潜入そのものが夢だったのではないか? でも、そんなはずは……それ程に昨日の出来事は現実感が無かった。


 正直に言って、昨日の帰り道の記憶は殆ど残っていない。

 興奮したままの心持ちで自宅まで辿り着き、そのままベッドに飛び込んだらすぐに眠ってしまった気がする。治癒能力は傷は塞げても疲労までは回復出来ない……そうだよな?


 けど、いくら疲れていても学校を休む訳にもいかない、チームのみんなに色々と詮索されたくない。昨日EE団のアジトに勝手に潜入したなんてバレたら何を言われるか……


「おはようトウヤ君。その……昨日は何で同盟の集会に出なかったの? 電話しても返事をくれなかったし……」


 後ろから声が聞こえた。姿を見なくても誰だか分かる。幼馴染みで同じチームの仲間で、共にウラヌスガーディアンズに所属している白神ヒカリだ。


「おはようヒカリ。昨日集会は……その、体調が悪かったんだよ。それに俺が居なくたって問題ないだろ? 誰も気にしないさ」


「そんなことないよ? 私もヒムロ君も、トウカ様だって気にしていたよ?」


「嘘つくなよ! あの人が俺の事を気にする訳がないだろ!」


「ご、ごめんねトウヤ君……でも……」


「おいおい? 朝から夫婦喧嘩か? 朝っぱらから元気だな」


「ヒムロ……おはよう」


「あっ、おはようヒムロ君」


 俺とヒカリの後ろから声が聞こえて来た。


 それが誰だか見るまでもない、登校中に声を荒らげる俺を見かねて声をかけてくれたのだろう。

 俺のもう一人の幼馴染みである氷見ヒムロはそういう奴だ。いつだって明るく場の空気を和ませようとしてくれる。


「おう! おはよう! トウヤ、ヒカリが言ってるのは嘘じゃないぜ? トウカ様がトウヤは居ないのかって呟いてたのを俺は聞いたからな。それに、ヒカリはお前が電話に出ないからってアワアワと心配してたぜ?」


 そうだな、何も言わずに集会に出なかったら心配させちゃうよな……


「ごめんヒカリ、俺が悪かった……」


「ううん、私の方こそごめんねトウヤ君」


 八つ当たりしたのは俺の方なのに……ヒカリ……


「はいはい! お互いに謝ったんならこれで終わり! もっと楽しい話をしよーぜ! 実はビッグニュースがあるんだ! 聞きたいだろ!? 聞きたいよな!?」


 せっかく明るい話題を振ってくれたんだ。ここは話に乗ろう。


「ビッグニュース? いったいなんだよヒムロ?」


「へへ、なんと! 今日は俺達のクラスに転校生がやって来るんだ! 昨日先生から直接聞いたから間違いないぜ! ちょっと特殊な事情があるから仲良くしてくれって頼まれたんだ!」


「転校生? 6月にやって来るなんて中途半端だね? 外国から来た子なのかな?」


 特殊な事情? それはまさか!?


「まさか一族の人間か? 新しい奴が舞車町に……」


「それはねーよ、そっち関係だったら昨日の集会で紹介するだろ。天王家関係でもそれ以外の家でもトウカ様に話がいかない訳ねーからな、特殊な事情ってのはそういうのとは別モンだと思うぜ?」


「そっか、そうだよな……」


 出来損ないの俺の代わりの人材が本家からやって来る……そんな早とちりをしてしまった。それを恐れているからだ。


 俺の所属するチーム“クリスタルハーシェル“は、天王家で最も期待されている天才少女、天王トウカをリーダーとしたソウルランナーのチームだ。


 リーダーで小学六年生の天王トウカ、同学年の守護一族の女子が4人、そして……俺のもう一人の幼馴染みがチームのレギュラー、俺とヒカリとヒムロは補欠であり予備の人員だ。


 トウカ……様、あの人はもちろん別格の強さを誇っているし、取り巻きの4人もウラヌスガーディアンズとして十分な実力を有している。

 もう一人の幼馴染みは俺と同じ年齢でありながらチームでは2番目に強く、ヒカリは白神家らしく治癒の能力を有している。ヒムロだって最近能力で氷を生み出す事が出来る様になった。


 俺だけだ。俺だけがチームの足を引っ張っている足手まといだ。

 生まれだけが理由で、このチームに所属している俺は実力が伴っていない。とてもAランクトップのチームに見合ったランナーとは言えない。

 クリスタルハーシェルを中心として、十六のチームからなる同盟では……実質クリスタルハーシェルの傘下となっているチームの奴らは……よく俺の陰口を叩いている。

 俺に直接嫌味を言ってくる奴も多い、俺をチームから抜けさせた方がいいとトウカ様に提案しているのを聞いた事もある。


 それに反発する気持ちはもちろんある。悔しいとは思っている。

 だが、それ以上に自分が嫌になって来る。言い返せない自分が、それを事実だと認めざるを得ない自分の弱さがたまらなく嫌になる。


 その結果が昨日の独断専行……勢いに任せた無謀な潜入だ。


 反プラネット社を掲げ、俺達のチームとも敵対しているEE団、奴等のアジトから重要な情報を盗み出せばチームの役に立ち、他の奴らを見返せると思っていた。その考えが甘かったのは痛みと共に痛感した。

 でも、あの子に……あの不思議な女の子に会えて……助けられた。それを喜んでしまっている自分が居る。


「どんな子なのかな? 楽しみだねトウヤ君、仲良く出来るといいね?」


「えっ、ああ、そうだなヒカリ」


 転校生か……そうだな、みんなとスタートがずれてしまっていたらきっと友達が出来るか不安だろう、なるべく親切にしてあげよう。






 そのまま通学路を3人で話をしながら登校し、自分達の教室へと辿り着く、俺達は3人とも5年5組だ。

 着席して朝のホームルームを待つ。教室の雰囲気が何時もより浮ついている。ヒムロの言っていた転校生の話をみんなも聞き付けたのだろう。


「楽しみだよなトウヤ? 女の子かな? カワイイ子かな?」


「もう、ヒムロ君ったら……」


 前の席のヒムロも、隣の席のヒカリも、転校生が気になる様だ。もちろん俺だって気になる。


「まあ、女の子でも男の子でも困っていたら助けてあげなきゃな。中途半端なタイミングで転校なんて本人一番不安だろうし……」


 ん? ヒカリとヒムロがニコニコしながら俺を見ている。何だ? 何が面白いんだ?


「へへっ、そうだなトウヤ! 俺達で舞車町を案内してやろーぜ! この町の良い所を教えてやらなきゃな!」


「ふふっ、そうだね、舞車町を好きになってくれると嬉しいね」


 なんか釈然としないけど……まあいいか、悪い雰囲気ではない、


「そうだな、そうだと――」


「はいはい、お前ら静かにしろー、ホームルーム始めるぞー?」


 担任の小林先生の声が聞こえて来た。お喋りをやめて姿勢を正す。


 そして次の瞬間、俺の視線は釘付けになった。


 小林先生にではない、その後ろに居た白金の輝きに目を奪われたのだ。

 教卓へと向かう先生の後ろに昨日のEE団のアジトで出会ったあの女の子が居たのだ。


 朝の教室の中にも関わらず、昨夜と同じように神秘的に光るプラチナブロンドの髪が俺の眠気の残って居た脳を覚醒させる。服装も黒いゴシックドレスでまったく同じ姿だ。


 間違い無い……あの子だ!


「き、君は!?」


 思わず席から立ち上がって叫んでしまう、自分の衝動が抑えられなかった。


「なんだ凍咲? 朝から元気一杯だな? 可愛い女の子に慌てる気持ちはわかるが席に着いてくれ、今から紹介するからな」


「えっ……す、すみません……」


 我に返って恥ずかしくなる。クラスメイトがクスクスと笑っている。


 あの子は……俺を見詰めていた。間違い無い、昨日と同じ青い瞳が俺を見詰めている。


「トウヤ君? あの女の子を……知っているの?」


「えっ、ああ……昨日の夜に……」


 ヒカリが俺に何か聞いて来るが上の空だ。教卓の隣でこちらを見つめる彼女から目が離せない。意識を逸らせない。


「おいおい! 本当にカワイイ女の子だな! 凄い格好だな! 人形みたいだぜ!」


「昨日の夜? トウヤ君があの女と? へぇ……」


 ヒムロとヒカリが何か喋っている。クラスメイト達も騒がしい、あの子の姿を見れば当然か……本当に奇麗な髪だ……


 パンパンと手を叩く音が聞こえた。


「ほらほら、静かにしなさいお前達。転校生の紹介が出来ないだろ?」


 小林先生の注意で教室が静かになる。静かになった教室で、あの子に注がれる視線と興味がより強くなったのを感じ取る。


「よし、知っている奴も多いだろうが今日から5年5組に新しい生徒が加わる……それじゃあ自己紹介をしてくれ」


「はい、小林先生」


 昨日と同じ、やっぱり奇麗な声だ。


 あの子は電子黒板の前の踏台に乗り、自分の名前をそこに書き出す……想像より乱暴な筆跡で彼女の名前が書き出された。


 ……えっ、これは?


「初めましてみなさん、私の名前は田中マモコです。父の仕事の都合で舞車町にやって来ました」


 な、名前が神秘的なイメージと違うな? 田中? 田中か……それにマモコ……


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