第5話 悲願達成!? 地上要塞ヴィヌス!!



「では爆破しますねマモル殿! ミカゲの活躍をご覧ください! ニンニン」


 そして轟音、衝撃、爆風、粉塵。

 

 目の前にそびえ立つ要塞の壁が一部崩壊する。


 爆発の威力高すぎない? 欠片が近くの建物に降り注いで潰して行く、ソウルワールド内だから後で直るけどさぁ……


 爆発する要塞の外壁、中から溢れ出して来るシャドウとSS団の戦闘員達。

 おっ? 雑魚共がワラワラとやって来たな? 雑魚を見ると安心するな、狩りたい。


「ここは俺達が引き受けます! カイテンスピナーズの皆さんは要塞の中へ!」

「SS団を倒せるのはあんた達しかいねえ! 悔しいが俺達じゃ無理なんだ……頼む! 焼き尽くしてくれ!」

「あなた達なら出来ます! SS団を! 廻転町の平和を乱す奴等を爆破してください! 僕の通う西小学校をそうした様に!」

「毒を持って毒を制す! 悪には悪を! ヤベー奴等にはヤベー奴等をぶつけるんだよ!」


 ここぞとばかりに湧いて出てくる廻転町のスピナー達、各々が好き勝手にここは俺に任せて系のセリフを叫びだす。一部悪口も混じってる気がするぞ?


 いいなあ、僕もあの集団戦に混じりたい。雑魚狩りしたい、弱い者いじめして勝ち誇りたいよぉ……


「頼んだぜみんな! SS団は今日でお終いだ! この要塞は俺達が焼き尽くすぜ!」 


「先ずは水攻めかな? 四天王達は耐えるだろうけど雑魚をいちいち相手取るのは悪手だ。金星アイジと戦う前に消耗したくない」


「はいはーい! 拙者はソウル爆弾をたっぷり用意して参りました! 爆殺しましょうマモル殿!」


「ヘヘっ……、頼むぜマモルゥ……言ってくれよォ、殲滅しろとォ……皆殺しの許可をくれェ! 暴れたりねぇんだァ……」


 こ、こいつらは……血に飢えてやがる。頼れる仲間だよまったく。


「聞けェい! 建物を燃やすな! 水攻めはするな! 爆殺もするな! 皆殺しは不許可!」


 不満気に僕を見つめる4人、慌てるなよ……


「だが全力で潰せ! 死なない程度にぶち殺せ! 今日は新春SS団解散パーティじゃい! 派手にやるぞオラァ!」


 僕の平穏を取り戻すぞコラァ!! 諸悪の根源SS団はぶち壊しじゃい!! カイテンスピナーズを敵に回した事を後悔させてやるぜェ!


「任せろマモル!」

「了解だよリーダー!」

「合点承知ですマモル殿!」

「ヒャハア!? たまらねェぜ!」


 僕を含めたそれぞれがソウルスピナーを発射、自分達を囲む様に動かして力場を展開、そのまま要塞内部へと走り出す。


 終わらせてやる……絶対に今日で終わりにしてやるぞSS団共が!




 要塞内部を走る。チームのみんなと走る。湧いて来るシャドウや戦闘員共を力場で蹴散らしながら上へ上へと進んで行く。


 この要塞やっぱり似てるな……去年の忌まわしい空中要塞と内部構造や様式が似ている。


 やっぱりBB団とSS団は何か関係があるのか? ザコ戦闘員の衣装も真っ黒な全身タイツ、仮面も意匠こそ違うが似てる。使いまわしか?


「そこまでだ! カイテンスピナーズ共め! ここから先は通さんぞ!」


 広い部屋に出たと思ったら、覚えのある声が聞こえてきた。月に一回ぐらいは聞いている馴染みの声だ。


「やはり来たか! SS団四天王!……あれ?」


 何時もの仮面はどうした? 4人揃って顔出ししているぞ? 最終決戦だからか? 初めて面を拝むな、キャラデザの濃い小学生共だ。


「洗脳用の仮面が外れている? なのに何故拙者達の邪魔をするのですか!? もはや貴方達を縛る物はないはずです! ニンニン」


「ふん! アイジ様のおかげで目が覚めたのだ! もはや我等はSS団四天王ではない! 美しき世界を目指すヴィーナスガーディアンズとして生まれ変わったのだ!」


 再洗脳されただけじゃない?


「金星の加護により新たな力も授かった! 咲き誇り回れ! レッドローズ・アキダリア!」


「アイジ様の望みを叶える為に! 咲き乱れ回れ! ブルーローズ・クロアキナ!」


「私達の美しき世界の為に! 咲き狂い回れ! ブラックローズ・エリキュナ!」


「醜いソウルを滅ぼす為に! 咲き荒び回れ! ホワイトローズ・フェリクス!」


 あっ! 四天王まで機体をパワーアップしてる! ずるいぞ!


「ヘヘっ……、今までとは違うみたいだなァ!? 許可をくれェマモルゥ! 白咲ノバラと決着を付ける許可をなァ! 暴れたりねぇんだァ……」


 ん? この流れは……嫌な流れだ。


「なるほど! では拙者は黒咲イバラを潰します! 前から忍者キャラが被っていて目障りでした! ニンニン」


 言う程キャラ被ってるか? 向こうの女の子の方が正統派忍者っぽい、ミカゲちゃん手裏剣とか苦無とか使わないし衣装も向こうの方が忍者っぽいぞ?


「なら僕の相手は青咲ミバラかな? 毎月彼と戦うのも飽きてきたからね、今日で終わりにしよう」


 飽きたとか言う割には毎月ノリノリで虐めてたよねナガレ君? 僕にダメージを肩代わりさせて遺憾なくSっ気を発揮していた。


「なら俺は赤咲ヒバラと決着をつけるぜ! 今日こそ奴を燃やし尽くす! だからマモルは先に行ってくれ! 独楽造博士と金星アイジの元へ!」


 あーやっぱり……こうなる予感はしていた。



 他のみんなは四天王とちょっとした因縁あるもんね、なんかイベント起こしてたもんね、僕だけ仲間外れだったもんね。


 まあいい、今日でお終いなのだ。最後ぐらいは多少の危険を許容する。ラスボスを仕留める役をリーダーらしく全うしよう。


 クククッ……去年の僕とは違う、事態の収拾を人任せにしたのが去年の失敗だった。

 こういうパターンも想定の範囲内だ。ちゃーんと策は用意してある。要はラスボスさえ倒せればいい、勝てばよかろうなのだ!


「ミカゲちゃん、例の物は?」

「はいマモル殿! こちらに!」


 ミカゲちゃんが近寄ってきて僕に例の物を差し出して来る。褒めてほしそうなので頭をワシャワシャ撫でておく。

 実に安上がりな子だ。尻尾があったらブンブンと振っていそうな忠犬振りだよ。勝手な行動も多いけどね、基本的には有能な忍者ガールだ。


「みんな! 四天王との戦闘を許可する! 僕がいないからダメージには気をつけてね! ここは任せた! 必ず勝利して後を追って来てくれ!」


 みんなの返事を背にその場を駆け出す。


 僕の進路を妨害しようとする四天王達のソウルスピナーを仲間がそれぞれ食い止める。任せたよみんな!


 階段を登る、どうせラスボスは屋上にいるに決まっている。そういう物だ。昔からそう決まっているのだ。まさか地下にはいないだろう。




 ……無駄に長い階段だった。戦いの日々でそこそこ体力が付いたつもりだったが疲れた。ハァハァと息も絶え絶えに屋上へとたどり着く。


 広い屋上の中央に金星アイジは立っていた。僕に背を向けて、遥か上空を見上げている。今は昼だから月は見えないぞ?


 足元にはクソダサヘルメットを被ったSS団の首領、独楽造博士が横たわっている。


「来たね、カイテンスピナーズのリーダー田中マモル。君とは前から話がしたいと思っていたよ」


 振り向いて僕に話しかけて来た金星少年、ミカゲちゃんの渡してきた資料通りの金髪イケメン男子だ。


 僕と同じ小学3年生のはずだ。それにしても……


「一つ質問しよう、君はこうは思わないかい? 今の地上は醜い、弱い癖にソウルを扱う有象無象共、ソウルを私利私欲の為に利用する汚い大人達。汚れたソウルで地上は汚染されてしまっている……君なら分かるだろう?」 


 いや、全然分かりません。ラスボスっぽい思想だとは思うけどさ、それよりも気になるのが……


「いや、残念だけど分からないよ。僕も一つ質問していいかな?」


「ふふっ、何だい? この美しき僕が何でも答えてあげよう」


 両手を広げる金星少年、様になっているがどうしても気になる。


「君は……君は何で上半身裸なの? 寒くない?」


 元旦の昼にその格好はねえだろ。天気予報でも厚着して下さいって言ってたぞ? 少し鳥肌立ってるじゃん。


「ああ、これかい? 月から降り注ぐソウルを肌で感じたいんだ。それに寒くなどないよ? これから始まる美しい計画の前に僕の美しい身体は高揚して火照っている。この“地上要塞ヴィヌス“は廻転町から集めたソウルで巨大なソウルスピナーになるんだ」


「あっ、はい」


「ソウルスピナーと化したヴィヌスが発生させる力場は引き寄せる力を持つ。その力によって月を地球に落下させる。それこそがSS団の“ムーンアトラクト計画“だ。まったく美しくないよね」


 美しさ以前に地球滅びるだろ……ん? ソウルワールドと化しているからセーフ? 後で元通り? 

 でも、それは廻転町限定だよな? やっぱり世界が危ない? 僕の命も危険か?


「だから僕が美しくアレンジしてあげるのさ! 僕の愛機“ヴィーナス“でヴィヌスの制御を乗っ取る! 元々は同じソウルストーンで作られたソウルギア同士だ! 親和性は高い! 美しき僕とヴィーナスの魅力でSS団の全てを頂く!」


 計画をべらべら喋ってくれるのはありがたい。だけど知らん設定を畳み掛けないでほしい。


「僕は月の封印などに興味はない! 引き寄せるのは月のソウルのみさ! 手に入れた莫大な月のソウルでこの世界を美しく創り変えてみせる! 美しき僕が! 美しきヴィーナスと共に! 美しきソウルで地上を満たしてみせる!」


 美しさが大渋滞を起こしている……美し過ぎる男だ。


「君も共に来い田中マモル! きみのソウルは美しい! きみの仲間達も一緒さ! 美しい者同士が手を取り合って美しい楽園を創ろう! それこそが僕達の使命だ! 美しくない一族の役目など捨ててしまえ! この僕の様に美しくね!」


 勧誘されちゃった♡ 一度言われてみたくはあった。


 でも、どうなんだろう? この金星少年はSS団とは違って物理的に月をどうこうしようとしている訳じゃないようだ。むしろ僕達が来る前にSS団を退治したようなものか? 

 でも、元旦早々に要塞を起動したのは許せん、ご近所にとってはお騒がせ過ぎる。ホットカーペットを弁償してもらいたい。


「えーと……金星君? 美しい世界を創るって具体的に何をするの? 僕に何をさせたいの?」


 一応ね? 一応聞いておく、邪な気持ちとかじゃなくてね?


 もしかしたら今よりも待遇がいいかもしれないし、話し合いで解決出来るかもしれない。


「ふふっ、ソウルを醜い奴等から、弱い奴等から取り上げるのさ。月のソウルの恩恵は様々な効果をもたらす。操者のソウルを莫大に成長させる力、美しき肉体を永遠の物にする不老不死の力、あらゆるソウルギアを進化させる力、より根源的な魂魄獣を創造する力、それらを使ってね」


 ん? 今こいつ……不老不死って言ったよね!? マジで!?


「ほ、本当に!? 月のソウルにはそんな素晴らしい力があるの!?」


 一生死なずに生きていける!? 最高じゃねえか!! あの恐ろしい孤独な暗闇から永遠に遠ざかる事が出来る!! 最高の力だよ!! 僕の望みそのものだよ!! 凄い! 凄いぞ!


「もちろん真実さ。僕はその力を独占したりはしない、美しき仲間達と分け合うつもりだよ。君は僕の右腕として是非とも同士として迎え入れたい、一緒に永遠の美しさを手に入れよう」


 か、金星少年……いや、金星様!


 なんてお美しいお人だ……後光が差して見える。この人に仕える事が僕の役目だったのかもしれない。


「美しい僕と共に、弱い癖にソウルを浪費する奴等を殲滅して、醜いプラネット社と戦おうマモル。プラネット社は醜いが強大でもある。僕には強い同士が必要なんだ。ソウルを使った奴らの兵器は容易く人を死に至らしめる。でも、不老不死の力を獲れば何度死に落ちたとしても問題ない、いずれは奴等を打倒出来るはずだ」


「……えっ! 何度も死ぬ!?」


 ふざけんな! それなら寿命で死んだ方がまだマシじゃねーか! あんな恐ろしい体験を何度も繰り返して貯まるか! 


 弱い者いじめは特に反対しない。プラネット社と世界の美しさはどうでもいい。

 だが、月のソウルの力は欲しい。その為に金星少年は邪魔だな……やはり予定通り潰すか。


「君の理想は確かに美しいのかもしれない、崇高なのかもしれない」


「分かってくれるかい? ならば僕とヴィーナスと共に……」


「だけど! 地上は醜いだけじゃない! 美しくなくても足掻く! 弱くても強くあろうとする! それは君が知らないだけで強さであり美しさだ! 君はソウルを1つの側面からしか見ていない! 懸命に生きる事を否定する君の思想には賛同は出来ない!」


 とりあえずそれっぽい感動的な理由で断ろう、もしかしたら説得出来る可能性もある。

 そして、後でこっそりと月のソウルを頂いて……ぐへへ、僕の夢が叶うかもしれない、不老不死、なんて素敵な響きだ。


「残念だよマモル、君なら分かってくれると思っていたのに……四天王達の様に平和的に説得したかったけど、君には操り人形になって貰おう」


 金星少年がソウルスピナーを発射して力場を展開した。流石のプレッシャーだ。四天王達とは比べ物にならないソウルの波動を感じる。こいつはやはり卓越したスピナーだ。


「知っているかい? 金星では常に自転の60倍の速度で風が流れている! 僕のヴィーナスは空間内に風を生み出して循環させる! 相手を吹き飛ばし自身の回転を促進する無敵の能力だ!」


 こいつ……風使いか!? 


 ……思ったよりチートじゃねえな? 割とポピュラーな能力だ。時とか止められたらどうしようもないから安心した。


「そして! 美しき僕とヴィーナスは金星の美しき愛の加護によって魅了の力を持つ! バトルに勝利して精神的に屈服させた相手を意のままに操る事が出来る!」


 せ、洗脳能力!? 例の北小を支配下に置いたっていうのはその力か!? 卑劣な能力だぞ!


「白銀に輝き回れ!! シルバー・ムーン!!」

「愛で美しく回れ!! ヴィーナス!!」


 僕と金星少年のスピナーが生み出す力場が激突する。衝突の余波で独楽造博士がゴロゴロと転がっていくが仕方ない、因果応報だ。


「ははは! 君のシルバー・ムーンの能力は知っているよ! 引力だろう? 君があの女に諜報をさせていた様に僕も君の情報を集めていた! 君は防御に主軸を置いたスピナーだ! 一対一では防御力と持久力で相手の回転が止まるのを待つ! それが君の戦法だ!」


 うっ、タイマンは滅多にしなかったのに僕の戦い方を知っている。僕の情報を集めていたのは嘘ではないな、よく調べている。


「だが残念だね! 僕のヴィーナスは自身が生み出す風で回転が止まる事は無い! さらに廻転町から集めたソウルで普段とは比べ物にならない程にパワーアップしている! ソウルが尽きることも無い! 攻撃力に欠ける君では僕を倒す事は不可能だ!」


 ふふ、間違ってはいない。正確な指摘だ。


「その通りだね、これがランク戦や公式戦なら僕に勝ち目は無い。君の言う通りだ」


「ん? 何を言って……」


 だがこれは実戦だ! ルールは俺達を守ってくれねえぞ! ヒャハア! 


「シックス・オン・ワン!!」


 腰に隠していたピース・ムーンから神速の抜き打ちを放つ! 6つのソウルの弾丸が金星少年の頭部に飛んでいく!


「なっ!? ヴィーナス!」


 ソウルを纏った風が弾丸を防ぐ……ちっ、いい反応速度だ。


「馬鹿な!? この町でこれ程の威力でソウルシューターを操るだと!? いや違う! ソウルギアを2種同時に使用している! この力はまさか……」


 くっくっくっ……動揺しているなぁ? 金星少年? スカしていても所詮は小学3年生のお子ちゃまよ……お行儀の良いスピナーバトルしかしてこなかったのかな?


「醜くても足掻かせてもらうよ! 僕は必ず君に勝利する!」


 直接ソウル体を打ち合うシューター操者に比べて、スピナー操者は自身へのダイレクトアタックに鈍感だ。

 当たり前だけど、自身のソウル体へ飛んでくる攻撃なんて基本的には想定はしない。あくまでスピナー同士をぶつけ合うのがスピナーバトルだ。廻転町でスピナーバトルに明け暮れていた僕はそれをよーく知っている。

 

 だからこそ、そこに勝機を見出した。


 自分がタイマンでは決め手に欠けるのはもちろん理解している。だからこそ自身の身の安全の為に切り札を隠し持っていた。こういう避けられない一人きりのスピナーバトルがやって来る事を想定していた。


 日々コソコソと練習を重ねた。ミカゲちゃんに協力してもらって、人払いをしながらスピナーを展開しつつのシューターを放つ練習だ。かなり苦労したが最近になってようやく実戦投入が可能なレベルに達した。

 この戦い方が知れ渡ったら対策されてしまう、実戦投入は今回が初めてだ。この戦法は、奇襲することで最大限のアドバンテージが得られる。


 最終決戦だから出し惜しみはしない、僕の持てる全てを使って相手をする。

 だからこそ、みんなが四天王の相手をするのを許可したのだ。これがなかったら意地でも5人で屋上まで来ていた。


「くっ! 風よ美しく吹け!」


 金星少年が風で瓦礫をこちらへと飛ばして来る。  


 対応するのは流石だが遅い! そんな速度では僕を捉えきれない!


「ファントム・ステップ!!」


「は、速い!?」


 必殺技を利用した高速移動で金星少年から少し離れた背後に移動する。慌てて接近してはいけない。近づき過ぎると手痛い反撃を受ける可能性もある。

 マウントをとりつつ精神的に崩し、確実に勝てるチャンスで仕掛けるのだ。


「動揺しているね金星君! ソウルが乱れているよ! 僕は持久戦に持ち込むつもりなんてない! 持てる全てを使って君とヴィーナスを打ち砕く!」


 ふひっ、マウント取るのは気持ちが良いねえ〜。


 スピナーバトルもシューターバトルも一緒で、気持ちで負けるとソウルは弱くなる。ソウルバトルにおいて精神状態は勝敗に大きく作用する。

 舌戦で相手を言い負かして精神的に優位に立つのは重要だ。ソウルバトルとはマウント合戦でもある。


 さらに! 僕が強気なのにはもう1つの理由がある! 


 先程ミカゲちゃんから受け取ったソウル爆弾の起爆装置! 突入前にこの屋上の足元にも設置されているのをちゃんと設計図で確認している!


 早く爆発させてやりたいけど位置が悪い、上手く爆弾の真上まで移動した所で起爆するんだ。確実にソウル体が吹っ飛ぶタイミングでなあ! 


「くっ……だが僕は負けない! 一族の役目に抗ってみせる! 姉さんを追い詰めた醜い世界を創り変えるんだ!」


 ん〜? 何か言ってるなぁ? だけど先程の余裕が無くなっているぞぉ? 美しさはどうした?


 くくっ、勝てばよかろうなのだ!! 勝利の前には矜持などゴミカスのようなものだぁ!!


 君を倒して!! 月のソウルを手に入れ! 僕は素晴らしき不老不死を手に入れる! 永遠の安心と安全は僕の物だ! ついでにホットカーペットも弁償してもらう!!

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