2.チートコードでで脚の長さを書き換えて見た結果
「……いたた」
目を覚ますと、そこは見慣れた部屋。
何度も飲み物を溢して、ちゃんと拭かなくて、所々ギトギトになったテーブルを見て気分が下がる。
そして前の持ち主が貼りまくったステッカーの跡が残った中古のノートパソコン。
これは見ると気分が上がる。
やたらとタバコで焦げた(僕はタバコは吸わないけど、いじめっ子のアイツはいつも楽しそうに火種をワザと落としていた)絨毯。
それらを総合して、僕はこの部屋が嫌いだ。
焦げた絨毯は見るたび、惨めな自分をおもいださせてくるし、ベッタリとしたテーブルは、僕の全くサッパリとはしていない人間性を連想させる。
見るたび自分を嫌いになる。
そしてなにより、そんな部屋を片付けもせずそのまま放置してしまう自分が、まるで不都合だらけの人生に、文句だけは言うくせにまるで何もせずに甘んじてばかりいる自分と重なって辛くなる。
「……ふぅ」
そんな時、決まって始まるルーティーン(逃避行動と言った方が的を得ているかも)はパソコンの起動から始まる。
酒もタバコもやらない僕が、何かから逃げたい時の依存先はもっぱらインターネット。
思いつくまま、見たいものを見て、気に食わなければすぐさまアドレスバーを違う検索内容に書き換える。
すると瞬時に見せてくれる。
僕の見たかった世界(世界遺産からエログロまでなんでもアリだ)を。
それは僕の無軌道かつ際限のない、
「どうして?」
にずっと答え続けてくれる。
それはきっと、下手な人間よりも優しくて。
なのに何故か満たされない(この理不尽な『どうして?』を何度小さく呟いたことだろう)。
「……よし」
パソコンの画面が企業ロゴからデスクトップに変わる。僕はこの瞬間がとても好きだ。
ようこそデジタルの世界へ、さようならクソったれな現実!
2021/6/21/12:18
いつも通りのデスクトップ。
っていうかもう昼だ。
学校は完全に遅刻。
「あれ?」
見慣れたデスクトップ画面(エロサイトとゲームへのショートカットばかり)に紛れて見慣れないアイコン。
「【World of Cheats】? なんだこれ?」
ダブルクリックしてみると、そこはシンプルな灰色のウィンドウが一つ。
その真ん中にはテキストを打ち込めるボックス。
「……うーん、何かしらのデータをチートに書き換えるアプリなのかな?」
確かに僕は色んなゲームでチートを使いまくってきた。
ゲームの世界(特にオンライン)は理不尽だらけ。
僕の方が上手いのに、キメれる時以外隠れてるような卑怯者にポイントで負けたり、僕の得意武器がアプデで弱体化したりね。
だからそれを書き換えた。
それはいわば調律。
不協和音を奏でる音痴な世界を、あるべき姿に戻してあげるだけ。
カタカタ。
【僕の足の長さ】
とか入れてチート出来たら面白いだろな。
短足をバカにする世界も間違っている。
ピコン!
【パラメータ(cm)を入力してください】
ならば書き換えてしまえばいい。
【200cm!】
なんてね。
そホントにそうなったらきっと『化け物!』とか言われるんだろうな。
ピコン!
【コードを承認しました。要素変更まで残り5秒】
ま、ホントにそんな長さの脚を生やした奴がいるなら、僕だってバケモノだと思うけどね。
ピコン!
【物理的障害を確認、事故防止のため環境を最適化します】
ずぅーん。
……ヒュン。
「……え?」
あれ? 僕、浮いてる?
あぐらをかいてたはずなのに、どうしてパソコンがあんなに下の方に?
あれ? ん? ……イタタタ!
ドシン。
思わず尻餅をついてから足元を見る。
「……うわぁ」
僕の脚が、まるでカマキリみたい。
💻次回、イケメン過ぎるルックスで散歩してみた結果w💻
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