第13話 憧れのあの子と無駄に謝りあった結果w
「……っていうワケなの、ゴメンね? こんな用事で呼び出しちゃって」
梶尾さんは微笑む。
まるで自心を打ち捨てるかのように。
「そんなこ! ……と」
思わず声を荒げる。とても恥ずかしい。
梶尾さんがどうして笑ったのかなんて知らない。
けれど彼女は何かよくない勘違いをしている。
そんな気がして、そうであって欲しくて、僕は死にたくなる。
「……ゴメン、そうだね」
そういってまた微笑む彼女には、もう先程の退廃的な自虐はない。
ただ、急に声を荒げた僕に恥をかかせないよう、疑問を押し殺して、合わせる。
それを優しいと思うと同時に、悲しくもなる。
「いや、その、僕の方こそごめん」
そして空白が生まれる。
僕は空白が嫌いだ。
空白が出来るたびに間を詰める。
そう、本能が急き立てるようプログラムされた生物として僕は生まれ落ちたのだろう。
「で、話って?」
そしてまた僕は空白を埋める。
そこに偶然、都合よく転がっていたもの(梶尾さんの涙の理由)を使って。
「うん、昨日のことなんだけど……」
梶尾さんはポツリ、ポツリと話し始める。
僕がいじめられてるのがずっと心配だったこと。
それを助けなかったのは怖かったからってこと。
自分もそういう立場になるのが怖かったから。
そしてそんな保身的な自分から目を逸らすために心の中で僕を何度も、何度も貶したこと。
『広瀬くんは可哀想だけど、生理的に関わり合いにはちょっと……』
そう何度も、無理矢理心で呟いたこと。
「……ごめ、ぐすっ、……ごめ、……ねぇ」
それを涙と共に全て吐き出す。
「そっか、それはなんていうか、その……」
僕はそれを訊いて、心の底から。
「ありがとう」
そう思った。
「へ?」
梶尾さんは全力で顔に疑問を浮かべる。
「なんていうか、その……」
僕は一度小さく深呼吸してから言う。
「こんな僕を気にかけてくれてありがとう」
そして。
「こんな僕に心を動かしてくれて、本当にありがとう」
「僕の悲しみを想像して、形作って、寄り添ってくれて本当に……」
心からのありがとうは、涙と共に空白に消えた。
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