4.肌年齢10歳の僕が通学してみた結果w

「はぁ、……やだなぁ」


 数え切れないほど通った道を歩き一人ため息をつく。


 割れたコンクリートに擦り付けられたタバコの吸い殻、壁際で砕け散った蛍光灯の破片。


 僕を歓迎も糾弾もしない無機物に見送られながら、僕は学校へ向かう。


 もっと【W orld of cheats(長いので以降WOCと呼ぼう】で遊んでいたかったけど、生来の真面目さはそれを許さなかったようだ。


 毎日キチンと学校へ行く。


 それは亡くなった両親に対する誠意のルーティーン。


 どんなに虐められても、それは延々と続けている。


 お陰で心は壊れちゃったけど、なんとか挫けず頑張っている。 


 ……あれ?


 ふと、違和感を感じる。


 通り沿いの小さな公園を通過する。学校まであと500mもない。


 けれどいつも感じる鳩尾あたりの痛み(弱い力で永続的につねられているような)を感じない。



 辺りを見回す。


 見えるのは僕と同じように歩く生徒たち。


 みんな生きるのが怖くて、社会から正当に評価されるのが怖くて関係ない場所を無理矢理見つめてる。


 けれどどうだろう? 


 いつもならその逃避先は僕の方に向けられる(侮蔑と嘲笑という形で)はずなのに、今は全くそれを感じない。


 彼らの恐怖心は一点に絞られることはなく、それぞれが個々の方向を向いている。


 どうして?


 答えはすぐに記憶から返ってくる。


 【WOC】だ!


 そういや昨日、【WOC】で色々書き換えたんだった。


 身長や体脂肪率もそうだけど、肌年齢を10歳(僕は12歳になる頃には月面ばりの激しいニキビ面になるからだ)にしたし、鼻の高さや瞼の角度をミリ単位で調整してハイバランスな左右対称顔も作り上げた。


 そのお陰で殆ど徹夜だったせいでフラついた頭で家を出たんだ。


 なるほど……。


 僕の持つ、数ある嘲笑される部分から容姿に関するものを全て排除したのだ。



 黙っていれば僕は最早嘲笑の対象じゃない。


 いや、僕ですらないのだろう。


 なんだろう。


 変身した?


 というよりこれは……。


 透明人間?


「ふふっ……」


 なんだか、楽しい。


💻次回、前頭葉のニューロン数でいじめっ子にマウントを取ってみた結果w💻

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る