3、表の裏側 Ⅳ
しかし、家に帰れば、親からのキツい暴言、暴力に怯えなくてはならなかった。そしてまた、ボロボロになるまで殴られる蹴られる。鋭利な言葉で、グサグサと刺される。それも両親の勝手な憂気晴らしのためにだ。漱哉には関係のないことで、凄まじい八つ当たりに見舞われている。そして、痛み苦しみに悶える日々。あまりにも残酷な日々だと、改めて思った。もうウンザリだった。漱哉は疲れ果てていた。この、家でのことを、康次に打ち明けてみた。
漱哉のする話は、カタコトで口下手な話ではあったが、彼がつらい思いでいることは確信できる。康次は真剣に聞いていた。そして、深い悲しみの表情になった。
「つらいね。ものすごく……
そして、康次は漱哉を自分の家に呼んだ。母親に説明すると、すぐに理解し、動いてくれた。これに漱哉は驚いた。あんな子ども思いで、優しい母親が、この世に実在したんだ、と、
康次の母親は、すぐに動いてくれた。児童相談所に相談し、漱哉は保護された。そして、養護施設に入所。施設にいるときは、読書をしたり、康次に勧められて、自分で小説を書いてみたりして、空いた時間を潰していた。
完成した、オリジナルの小説を康次に見せた。
「す、すごい! プロを超えるんじゃない?」
と大絶賛をもらった。漱哉は強く感動した。うれしかった。こんなに大絶賛をもらったのは、生まれて初めてのことだ。小説を読んでいる時でも、体感できなかった音だ。この強く受けた感動を、初めて感じた体感を、原動力に変えて、漱哉は、小説の執筆に多くの時間を注いだ。学校にいるときも、朝や昼の休み時間などの空いた時間には、専用のノートに、短い小説を書き、康次に見せる。すると、いつも大絶賛をもらった。初めて何かに打ち込むことができた。とてもよろこばしく思った。毎日がずっとずっと素敵なものに思えた。しかし、すこし前までのあの惨たらしい日々の記憶が、ふとした時に
高校への進路決めの際、善美高校の文芸部が
「今は、まろかちゃんや
「そうなんですね」
まろかは、悲しげにぽつり。漱哉の過去の話があまりにもつらすぎてじんわりと涙が出てくる。
「じゃからこそ、漱哉さんには、前を向いて欲しいし、空を見上げて欲しい。そしたら、少しは、つらいのが軽くなると思うじゃけぇ」
その言葉を聞いた康次は、やさしくほほ笑んだ。
「ありがとう、まろかちゃん。でも、今はそっとしてあげた方がいいかも」
「……そうですね」
まろかは、肩を落として言った。少し歯がゆく思うも、漱哉のことを考えて、そっとしておくことにした。
漱哉の抱えていた、闇につつまれているであろう事情が明らかになった。それはまろかの想像を大きく絶する、
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