2、最初と最後の「葱頼」Ⅲ
……何故、まろかはこんなにもそれに
真っ先に浮かび上がってきた答えが、彼は昔の自分と重なっていたから。昔と言っても少し前までだ。それ以前の自分は、まさに漱哉と同じような状態に置かれていた。
まろかは、中学時代の先輩、
「うわあ! トイレの花子じゃあ!」「近づきんさんな!!」
「キャー、気持ち悪い!!」「怖い!!」
「われみたいな暗い奴がおると他のやつらに悪影響が出るけぇ、目障りじゃ。見よるだけで
それらの言葉は、まろかの心の中にある箱の底に、ふつ、ふつ、積み重なっていく。それが
そんな苦しい中、心の支えは、カープと小説だった。選手が必死で勝とうと頑張っている姿や、小説の中の主人公が困難に打ち勝つ姿が、まろかの日々の原動力の源になった。授業の合間の時間は、大好きな小説を読んでいた。その時に、よくものをぶつけられた。皆に
そんな状況が永遠と続く。毎日が苦しい。早く終わって欲しいと切望するほどだ。
しかし、小学校を卒業し、中学生になっても、メンバーはあまり変わらないから、苦しい状況は変わらない。小学校の卒業式が終わったあともそう思って、絶望した。
中学校生活の
その肩に、暖かな何かが置かれた。まろかは振り返ると、目をまるくした。強力な目力。大人程の高身長。堂々たる姿勢。パッと一目見ただけで強く印象づけられた。強烈なの彼。これが
「よろしくな。これから共に頑張ろう!」
声の威勢も堂々としていた。彼は、文芸部じゃなくて、野球や剣道とかが似合うのではないかと、まろかは少し思った。だが、そんなことよりも、まろかは大きな衝撃を受けた。今までこんな人に出会ったことがなかった。これまで人に励まされたり、暖かい声をかけられた記憶がなかった。王雅のこの一言で、まろかの不安な先がガラリと変わった。
王雅は、何故かまろかによく声をかけてくれた。一年生の中で一番目をかけてくれた。まろかはそれが不思議で仕方がなかった。まろかの書いた作品を一番読んでくれたのも、
「
「え〜、いえ、私なんて、まだまだ下手くそで……」
「それなら、まだまだ伸びる可能性が十分にあるってことじゃな。君はまだ入りたてだし、この先、極める時間は
「はい」
まろかのいつの間にか極寒と化していた心の中の箱は、じんわりと温められていた。そして、彼を見る目の瞳は、尊敬に満ちた光がかすかに輝いていた。
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