3、表の裏側 Ⅰ
ギラギラとした熱血の陽の下で、じわりじわりと火にかけられているような、
何がこんなに注目されているかって、それはひとりの作品の出来がプロ並みに高い。まだ筆を執って間もない一年生ですら、上の学年にも負けない。一人の女性の
これほどまでに、
「今回の部誌は、とても多くの人から注目を浴びるような、今までで一番最高の作品たちが揃っていて、どれも素晴らしいものばかりでした。これからも、今回のを超えるような、もっと素晴らしい作品を目指して、さらに最高な部誌が読めることを、とても楽しみにしています……」
藤子の目には、涙が溜まった。他の女子部員の涙腺もすでに壊れ始めていた。
「頼りない先輩だったと思うけれど、いつも私を頼ってくれて、あたたかく支えてくれてありがとう。『葱頼』の仲間になることができたこと、とても幸せに感じます」
ありがとう、と一礼。皆の拍手に包まれた。すでに壊れ始めていた女子部員たちの涙腺は、見事に崩壊していた。
そんな中、馬場先生は
「藤子ちゃん。これまで本当によく部長として皆を引っ張ってくれたわね。ありがとう」
「……いえ」
引退式が終わったあとも、皆の涙は止まらない。
「藤子さん、これで終わりなの……」
「そうじゃ……いやだな……」
「わーん、藤子さーん」
「ありがとう、皆」
声を上げて泣いている女子部員たちに、漱哉と康次はかなり気まずそうでいた。
まろかが善美高校文芸部『葱頼』に入部してから、早くも半年程が経つ。しかし、漱哉はまだ、暗くて下を向いたままだ。まろかはどうにか、彼を笑顔にして、前を向けさせたいと思った。自分だって
そのためには、彼とどう向き合おうか。まろかは考えを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。