記憶を失くした青年である翔は、深夜に行くあてもなく彷徨っていたところでミナという少女に声をかけられる。最初はミナを邪険に扱っていた翔も、その天使のような愛らしい容貌と優しさに触れるうちに次第に心を開いていく。だが、ある日ミナが暴漢に襲われる事件が発生し、翔は彼女を救うために暴漢に立ち向かう。しかし丸腰の翔では暴漢に太刀打ちできず、絶体絶命と思われたその時、どこかから聞こえた銃声が暴漢を貫く。闇の中から現れたのは、金色の瞳を持つ謎の男だった。
錯乱の中で意識を失った翔。彼が次に目を覚ましたのはとある事務所で、そこにはミナと金色の瞳の青年がいた。立花と名乗るその青年は自分を殺し屋だと称し、昨日の現場に居合わせたのも仕事の一環だと言う。そんな立花に翔はある依頼をする。それは、自分の家族を殺した人間を殺害してほしいというものだった。
殺し屋の秘密を知った翔を見張るという体で始まる3人の共同生活。そこには死の匂いが充満する一方で、不思議と家族のような温かみがある。食卓を囲んで料理を箸でつつき、軽口を飛ばして笑い合う。殺伐とした世界観とアットホームな空気が同居しているのが本作の大きな特徴である。
善悪の境界が曖昧になった世界で起きる数々の事件は救いようのないほど不条理で、読んでいて何度も心を抉られそうになる。だけど、それでも彼らは運命に屈さず、少しでもマシな未来を見つけるために足掻き続ける。その姿は読者に勇気を与え、どこかに救いはあるかもしれないという希望を抱かせる。登場人物は一人一人信念を持って行動していて、迫真の台詞や描写が彼らの生き様をこれでもかというほど伝えてくる。
この地獄のような世界の中で、果たして彼らは花を咲かせることができるのか。
80万字超えの超大作。だけど字数で臆するなかれ。冒頭を読むだけで間違いなく惹き込まれる、心を震わせる物語がここにあります。
迫力満点のガンアクション!!
緻密な設定と、鮮やかな描写!!
スタイリッシュな文章が紡ぐ物語!!
復讐を請け負わない殺し屋、立花。記憶を失くした復讐者、翔太。死後の世界を信じない子供、湊。この三人を軸として展開される、心震える群像劇です。そして、中心となるテーマは、「善悪とは何か」でした。
善悪の判断なんてものは、人が変われば、住んでる場所が変われば、時代が変われば、易く変わってしまうもの。――ああ、そんなこと知ってるさ。けれど、本作品は、もっとその先。善悪を越えた先にあるものを見せてくれるような作品でした。
……とはいえ、これは小説なのか? 作中では、テロ、宗教、カルト、核戦争など様々な暗い話題が登場します。しかし、そのどれもが、いまの世界で起こってる、様々な不穏な出来事そのもの。これは、小説というより予言書なのではないか? そんなふうに読んでいて悪寒が走ることが度々ありました。
地獄にも花が咲くってことを知ってるか?
なら、その花が咲くところを見に行こう。
たとえそこが、地獄だとしても。
そんでもって、早く書籍化されてください。
「地獄にも花が咲くことを知ってる」。これはこの作品のキャッチコピーなのですが、ホントカッコいいですね。こんなの見てしまったら、思わず読んでしまいますよ。
作品の中身といえば、キャッチコピー以上に引力がありました。
そして読み終えて思ったのは、この作品には、このキャッチコピーしかないってことでした。
こちらの作品、「地獄」とある通り、読者のメンタルを削るほどのパワーを持っています。
殺し屋や殺人者などがたくさん出てきます。おぞましいシリアルキラーや、人の道から外れた人たち、常軌を逸した価値観を持つ人々、そんな怪物のような悪役が次々と現れます。主人公の一人がまず殺し屋で、主要登場人物はみんな仄暗い過去を持っています。
ですが、登場するキャラクターの背景や心理描写などが、本当に丁寧に描かれていて、好きなキャラクターや感情移入できるキャラクターを必ず見つけられると思います。特に主要人物たちは、話が進むほどにだんだんと、持っている信念を感じられるようになってきて、愛着がわいてくると思います。
基本的には、容赦ない展開の続く、血生臭く、シリアスで、重厚な物語です。
そしてそれ以上に、愛や命の尊さ、希望にまつわる物語でもあります。
一見、正反対の要素のようですが、自然に噛み合っていて、まるでもう一つの現実を見ているような気がするほどでした。
ボリュームのある物語ですが、だからこその面白さ、だからこそ得られる感情があります。
また、大枠のストーリーがありながらも、一つの章で切りよく事件が解決しますし、込められたテーマも章によって様々ですので、最後まで飽きることなく読むことができると思います。むしろ後半になるにつれて、「もっと続いてほしい」と思えてくるんじゃないかと思います。
魅力的な登場人物たち、群像劇としての面白さ、親しみやすい日常描写、迫力のアクション、謎めいた陰謀、明かされていく過去、都会的でクールな会話、とことん硬派ながら時に感傷的な文章、知能戦や泥臭い肉弾戦、荒廃した世界の細かな描写、などなど様々な魅力にあふれた作品です。
読んで間違いなしの傑作だと思います。ぜひ一度読んでみてください!
ご縁があり、この物語に出会いました。読み終えましたので、レビューさせていただきたいと思います。
殺しを生業としている男性、立花と彼に同行している幼く美しいミナ。そんな彼らが公園のベンチにて記憶をなくした一人の男性、翔と出会うところから物語は始まります。拾われた翔は、彼らの仕事を目の当たりにします。しかし何故か、立花とミナの仲は、あまり良くはなさそうでした。
人を殺すことを頼んでくる人間に、ロクな奴はいません。殺し屋である立花は、復讐だけは受け付けないという信念こそあるものの、それ以外は全くの無頓着。その為、例え依頼主が間違っていようと、それこそ相手の方が殺されるべきだと思ってしまおうと、立花は容赦なく頼まれた相手を殺します。善も悪もなく、後に残るのは死体という結果だけ。しかし、それだけでは終わりません。
皆さんは地獄にも花が咲くことを知っていますか? 私はこの物語を通して、初めて知りました。
作者様の類まれなるセンスによって紡がれる、彼らの会話の数々。決して難しい言葉を並べている訳でも、長々と語っている訳でもありません。短い中に込められた彼らの感情と、そこから垣間見える、彼らの本当の望み。
記憶、復讐、あるいは救い。この物語から、あなたは何を感じられるでしょうか。様々なキャラクター達が織りなす群像劇。
他の皆様も、是非読んでみてください。
まず、この作品のレビューを書ける事を嬉しく思います。
真に名作と呼ばれる作品は、生涯、読者の記憶に残り、その思考や行動に影響を与え続けます。
この作品もそうです。
下手すりゃ読者の人生観が変わったり、その後の人生が変わったりするかもしれない。それぐらいの影響力があります。
内容は、ハードボイルドでいて繊細さも兼ね備えており、読み進める程に面白さが増してゆき、キャラクターの魅力から逃れられなくなってゆきます。厳しくて残酷な場面が多々ありますが、それは現実でも同じ事です。
名作を読んだ事がないなら、まずはこの作品を読んで見て下さい。
良い意味で、殴りつけてくれます!
時は近未来の日本
怠惰と諦念、放漫と享楽の果てに輝きを失い、目的を失った人々が蠢く淀んだ世界の中で、殺し屋として生きてきた立花蓮治はひとりの子供を預かる事になる。
華奢な身体に可憐な容貌
それは取るに足らないちっぽけな存在だった。
少なくとも、この地獄の様な世界の闇の中で、ひとり生き抜いて来た立花にとって、それは吹けば消し飛ぶほどくだらない存在の筈だった。
だが、この時、まだ立花は知らなかった。このちっぽけな存在の奥底に何が棲みついているのかを……
立花が拾ったこのちっぽけな存在は、天翔ける龍の類だったのかもしれない。
血と硝煙の匂い。
妄念と欺瞞が降り積もり、汚泥に満ちた世界の中で、時に可憐に舞い、時に泥臭く地を這う人々の織りなす群像劇。
手をのばせば塵と消えゆく希望と、濃厚な血だまりの中、その子供はただ進む。真っ直ぐに。
そこには善も悪もなく、あるのは意地と信念のゴツゴツとぶつかる音。
その中で、ただ進む。真っ直ぐに。
その先にあるものを自らの手で掴むため。
「I know that flowers will bloom in hell」
地獄にも花が咲くことを知っているから
素晴らしい作品です。
元々は『エンジェルリード』という続編から知った作品ですが、読み始めて本当に驚きました。文章力、背景設定、そしてキャラクターの魅力。そのどれもが一級品です。
読み進めていくうちに登場人物たちの背景が明かされ、様々な視点から物語を眺めていくうちに、徐々にその表情が変化していきます。見事と言う他ない。
とても長い作品ですが苦も無く読めました。毎日読み進めるのが楽しみで仕方がありませんでした。
この作品の奥底に流れるテーマは、今現在私たちが直面している問題にも通底するのではないかと思います。
扱うテーマの豊富さもひとことで言い表すことは出来ません。
是非ご一読を!
自分とは関わりのない世界のはずなのに、その世界で息をして、現実のあまりの残酷さに叩きのめされ、主人公とともに苦しんでいるような、そんな没入感があります。本当は最後まで読んでから書こうと思ったのですが、もっとたくさんの人に読んでほしくてレビューを書いています。
素晴らしいの一言です。
ここまで没入感のある作品を、私は他にカクヨムで見たことがありません。
研ぎ澄まされた表現力、過不足ない描写。地獄に生きる「正常な神経を持った人たち」の、苦労。
苦しみの果てに救いはあるのか。
この先も見届けて行きたいと思います。
(第三章 地獄に咲く花の途中までで書いています)
(5章「夜のパレード」まで読了しています)
圧倒的筆力の高さから紡がれるこの物語は、すべての描写が細やかでかつ臨場感があり、まるで映画を鑑賞しているかのような感覚に陥ります。
登場人物たちがそれぞれの信念に基づいて行動し、苦悩し、葛藤し、懸命に「生きて」いる姿は、もはや読み手に傍観者であること――高みの見物を許さないような切実な迫力があります。
ただ物語として面白いだけでなく、善悪とは何か?正義とは?など、通り一遍の価値観を強く揺さぶるように、深く考えさせられる内容です。
どれだけ言葉を尽くしても、本作の良さ・面白さを表しきれそうにありません……ので、ぜひ、一人でも多くの方に実際に読んでいただいて、『Ace in the hole. ―最後の切り札―』の魅力に触れていただきたいです!
冷酷な殺し屋と謎の多い子どもがいる世界は、人の醜さや汚さ、欲のうずまくダークなところ。
物語は、殺し屋と行動をともにする子どもが記憶喪失の男を救い、一緒に生活することになった三名を中心に展開していく。
それぞれ暗い過去があり、つらい目に遭っていても信念を持ち、生き抜こうとする者たちのサバイブストーリー ――
ダークな世界を頭脳と凄腕で切り開いていくアクションシーンは爽快で、登場人物たちの信念の強さに感動し、友情や家族愛のすばらしさが光ります。
ストーリーが進むにつれて登場人物たちは成長し、たくましくなっていくところが見どころです。
この作品が何故正当な評価を受けずに埋もれているのか……ネット小説サイトという場は、真の才能を燻らせる場所ではないはずです!
と、心に溜まった怒りを消化したところでレビューです。
とにかく「素晴らしい」の一言。世界観は非常によく作られていますし、何より登場人物は皆キャラが立っていて所謂『覚えられないキャラ』がいません。かと言ってテンプレ的な特徴かと言えばそうではない。リアルで世界観にマッチした『生きている』特徴です。
そして、私が特に褒め称えたいのが文章。語彙力ありすぎ、会話のテンポ上手すぎと本作は非常に読みやすいのです。商業作品にも引けを取らないクオリティです。
このまま製本してカバーと帯をつけて本屋さんに並べましょう!私からは以上です!
これはもっと読まれて、もっと評価されないとおかしい!ってイチ読者の私が憤慨してしまうくらいには面白い作品です。
物語の中心人物となる三人組は、互いに謎が多いです。
語り部になることが多い翔なんかは自分のことですら分かっていません。彼は常識はありますが、過去の記憶の一部がすっぽり抜けています。
そんな翔が出会った二人は、記憶のない翔以上に変な奴らでした。
殺し屋である立花に、何故か立花の事務所で生活している様子の子供ミナ。ミナはペラペラと流暢な英語で喋ります。
翔は二人を(なんだコイツ…。)と思いながら、一緒に生活していくことになります。
ミナの台詞の英文を見て、苦手意識を覚える人も多いかもしれません。
私も英語は得意ではないので、その気持ちはよく分かります。主人公っぽい立ち位置の翔でさえ聞き取れてなかったり、分かってなかったりします。
でも大丈夫。
立花が日本語に訳してくれるし、読み進めるうちに英文は減ってきます。
だから途中で読み進めるのをどうかやめないで…!
この作品の最も魅力的なところは立花・ミナ・翔の三人の、徐々に明らかにになってくる人間性と過去、そして変わってくる彼らの距離感です。
その過程が丁寧に丁寧に、この作品では描かれています。
加えて完結されているので、安心して最後まで読むことができますよ!
ダークな世界観だからこそ、引き立つ深さ。そこに垣間見える三人の日常。
是非たくさんの人に読んでもらいたい作品です!