彼方にある希望。それは果てしなき妄執と絶望の果てに咲く一輪の花

時は近未来の日本

怠惰と諦念、放漫と享楽の果てに輝きを失い、目的を失った人々が蠢く淀んだ世界の中で、殺し屋として生きてきた立花蓮治はひとりの子供を預かる事になる。

華奢な身体に可憐な容貌

それは取るに足らないちっぽけな存在だった。

少なくとも、この地獄の様な世界の闇の中で、ひとり生き抜いて来た立花にとって、それは吹けば消し飛ぶほどくだらない存在の筈だった。

だが、この時、まだ立花は知らなかった。このちっぽけな存在の奥底に何が棲みついているのかを……

立花が拾ったこのちっぽけな存在は、天翔ける龍の類だったのかもしれない。



血と硝煙の匂い。

妄念と欺瞞が降り積もり、汚泥に満ちた世界の中で、時に可憐に舞い、時に泥臭く地を這う人々の織りなす群像劇。


手をのばせば塵と消えゆく希望と、濃厚な血だまりの中、その子供はただ進む。真っ直ぐに。

そこには善も悪もなく、あるのは意地と信念のゴツゴツとぶつかる音。

その中で、ただ進む。真っ直ぐに。

その先にあるものを自らの手で掴むため。


「I know that flowers will bloom in hell」


地獄にも花が咲くことを知っているから




素晴らしい作品です。

元々は『エンジェルリード』という続編から知った作品ですが、読み始めて本当に驚きました。文章力、背景設定、そしてキャラクターの魅力。そのどれもが一級品です。

読み進めていくうちに登場人物たちの背景が明かされ、様々な視点から物語を眺めていくうちに、徐々にその表情が変化していきます。見事と言う他ない。

とても長い作品ですが苦も無く読めました。毎日読み進めるのが楽しみで仕方がありませんでした。

この作品の奥底に流れるテーマは、今現在私たちが直面している問題にも通底するのではないかと思います。

扱うテーマの豊富さもひとことで言い表すことは出来ません。

是非ご一読を!

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