根っからの本好きなら読まない手はない

一度この作品を読み、スピンオフ作品を全て読み、現在、二周目を読んでいるところです。
一度読むだけではこの物語の真の良さは分からないかもしれません。

一筋の明かりも見えないような真っ黒な世界の中の「地獄にも咲く花」の正体とは?
読み手によって解釈が何通りもあると思います。

「ここはまだ地獄じゃない」
作中に幾度も出てきたキーワードですが、本当にその通りだったと思います。
誰かを想う故の行動で救われることもあれば、傷つけることもあり、思わぬ選択が誰かを救うことにもなり得る。

ここまで、それぞれの登場人物を「生きた人間」として描き、更に深く、多角的に描いた作品にはなかなか出会えないと思います。
物語というより、日頃生活している中の隣にひっそりと佇んでいそうな世界。
私が平和に生きていられるのは作中の人物のお陰なのかもしれません。
そう思うほどに、文章に凄みと説得力があります。
生きていていつでもハッピーではいられない。
その中にある小さな幸せを見つけて、そうやって人は命を紡いでゆく。

地の文で世界観を読み手に焼き付ける文章力、表現力、素晴らしいです。
最近ありがちな会話文が多く、読み手に親切な文章に飽きている人には是非読んで欲しいなと思います。
根っからの本好きなら読まない手はないです。
埋もれた名作、もっと評価されるべき作品、他のレビューにもありましたが私も正しく同じ気持ちです。
もっと、色んな人に読んで欲しい。
読まれないのは本当に勿体ない。
紙で手元に置いておきたい、そんな作品です。

蛇足ですが、私の推しはワタルです(笑)