概要
恋は盲目なんて言いますがね、では失恋は?五里霧中じゃあないですか?
二〇二〇年、世界は赤く微発光する霧に覆われた。霧は電波を遮断し視界を染める。霧発生から五年が経ち高校教員となった本田和明は、同僚の櫻井花音と学校に内緒で、霧に隠れて交際している。職員全員が集う忘年会の席で、後輩は「花音と付き合っている」と発表した。突如知った花音の浮気。本田は花音に真相を聞くことができないまま、誰にも打ち明けることが出来ずに思い悩む。そんな中、本田が出会ったのは小説家だと名乗る近藤玲であった。
※ 本文、あとがきはフィクションです。
※ 本文、あとがきはフィクションです。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「不親切」や「わかりにくさ」の中にも、物語の魅力は創造しうる!
話の構造といい、リアルティのある細やかな情景描写のもと語られる恋愛模様の行く末といい、それは全て霧の中とばかりに、読者をぽんと突き飛ばすようなある意味まったくもって「読み手に親切でない」作品です。
だけど、そのスタイルから、わたしは大きな感銘を与えられました。本来、ものがたり=「物」を「語る」とは、文字通りその話のなかでの事象の、最低限の描写が求められるものでしょう。ですが、その「最低限」のラインをこの作品はきちんと計りつつ、きちんと話を展開させて見せているのが、非常に巧みとしかいいようがないです。大変刺激を受けました。お勧めです! - ★★★ Excellent!!!興味深いSF設定の中で繰り広げられる現実
『君は霧中』と聞いてどう思うだろうか。
『君は夢中』の言葉遊びかなと思うかもしれない。
否、それならば『君に夢中』というものの言葉遊びで『君に霧中』であるべきだ。
なぜ、君「は」霧中であるのかという答えは結末で全て判明する。
人生とは暗中模索、作者の言葉を借りれば五里霧中とも言えるだろう。
和明と花音の住む世界は赤く微発光する霧に包まれていた。
このSFともとれる設定が作中の舞台装置としてうまく作用しており、ただの思いつきではなく、ちゃんと霧に包まれた世界という世界を物語に落とし込めている点は非常に評価できる。
霧があるからできること、できないこと。
もちろんここでは読む楽しさを損なわせな…続きを読む