伝説の剣は抜いたらヒノキの棒でした
茜カナコ
第1話
「どういうこと、ミシェル? 」
「聞きたいのはこちらですわ、レイシアお姉様」
宮殿の大広間、食事の最中に事件は起きた。
「どうして私の食事に毒が盛られていたんですか? 」
「知りません、私の分だって怪しいじゃないですか」
メイド長が言った。
「毒味係が当たったのはミシェル第二王女様のお食事です」
「私が居なくなれば王位継承権を狙う物は居ませんからね」
「ミシェル、そんな、私はそんなことしていません」
ミスティ王国の第一王女レイシアは、ミシェルに毒を盛った疑いで離れの塔に幽閉された。
「こんなことって・・・・・・」
レイシアはほこりだらけの塔の部屋を掃除しながら涙をこらえた。
「ミシェルには嫌われてると思っていたけど、まさかここまでとは・・・・・・」
レイシアは、本棚に本をしまおうとすると一冊の古い絵本を見つけた。
「この本は? 」
本を開くと、絵本にはこの塔に隠された一本の剣について書かれていた。
「伝説の剣? 」
レイシアは本に書いてある呪文を唱えてみた。
「まさか、なにか起こるわけも無いか」
一人笑っていると、塔の上の方で何かが光った。
「何? まさか! 」
塔の最上階に行くと、そこには輝く剣と15,6歳の男の子がいた。
「貴方は誰? 」
「ここ何処ですか? 」
「ここはミスティ王国、私はレイシア第一王女」
「俺は高槻翔たかつきかける。高校一年生」
レイシアは翔をまじまじと見つめた。高校とは何だろう?と思いながらも翔の身を案じた。
「ここは危ないわ、逃げましょう翔」
「え? どこへ逃げるんですか? 」
「その前に、この剣、輝いていて綺麗ですね」
翔は伝説の剣に手を触れると、いともたやすく抜いてしまった。
「あ、あれ? 」
翔の手の中で、豪奢な剣がみるみるただの棒に変わっていく。
「これ、一体なんですか」
翔が棒を握りしめ、集中するとステータスゲージのようなものが現れた。
伝説の檜の棒
攻撃:10
魔力:20
特殊効果:なし
「一体何だって言うの? 翔は何者なの? 伝説の勇者? 」
レイシアの質問に翔はきょとんとしたまま答える。
「すげー、まるでゲームの世界だ」
翔はレイシアの狼狽ぶりに気づきもせず、周りをキョロキョロと見回している。
「レイシア様、いかがされましたか? 」
「いいえ、何でもありません」
レイシアは翔を背後に隠しながら、兵に答えた。
「翔、私は今あらぬ疑いをかけられて幽閉されてるの。ここから逃げ出す手伝いをしてもらえないかしら」
「いいですよ。っていうか俺はどうやって元の世界に戻ればいいんですか? 」
「それはわからない。この絵本で、私が翔を召喚してしまったようね」
レイシアは言った。本を読んだが、本の後半は破れてしまっていて読めなかった。
「近くにウィンディ城があるわ。そこのミケーネ王子に言えば私の無実が晴らされるはず。」
「そうですか、じゃあ、俺もついていけば帰る方法を探してもらえるんですか? 」
「ええ、約束するわ」
こうしてレイシアと翔は塔から逃げ出すことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます