第16話

翔とレイシアはコカトリスの卵を採集しに行った。


「レイシアさん、大丈夫ですか?」

「ああ、人の心配をしている場合か? 翔、息が上がってるぞ」

レイシアがそう言うと翔は笑って答えた。

「大丈夫です」


「城の方は、ミスティ王国の旗色が悪いな」

「そうですね」

翔はレイシアの顔色をうかがったが、よく分からなかった。


「そろそろ岩場だ。ここにはオオトカゲも居るから気をつけろ」

「はい、レイシアさん」

そう言っていると、オオトカゲが現れた。


「行くぞ、翔」

「はい、レイシアさん」

翔とレイシアはオオトカゲに戦いを挑んだ。


オオトカゲは尻尾を大きくふり、翔とレイシアは吹き飛ばされた。

「鋼の剣!」

翔がそう叫ぶと、ヒノキの棒が鋼の剣にかわった。


「風の刃!!」

レイシアが呪文を唱えると、オオトカゲの動きが止まった。

「翔!」

「はい!」

翔は動きの止まったオオトカゲの首に剣を突き刺した。


「ぐえええ」

オオトカゲは息絶えた。

すると、オオトカゲから転げ落ちた大きめの魔法石がきらめいた。

「よし」

翔はその魔法石を鋼の剣にかざすと、剣がきらめいて石を吸い込んだ。


ミスリルナイフ LV1


剣のステータスが変わった。

「ミスリルか。強くなったな」

「そうなんですか?」

「ああ」


オオトカゲを倒した翔とレイシアはコカトリスの巣にむかった。

「ここだな」

「薄暗いですね」

コカトリスの巣は洞窟の中にあった。

幸い、卵だけが巣に残っていた。


「それじゃ、一つ卵を持って帰ろう」

「はい、レイシアさん」

翔たちは無事コカトリスの卵を手に入れた。


そのとき、洞窟の外から魔物の泣き声が聞こえた。

コカトリスが帰ってきたらしい。

翔とレイシアは注意深く、コカトリスに見つからないように洞窟を後にした。


「危なかったですね。レイシアさん」

「ああ、コカトリスは石化の爪を持っているからな」

翔とレイシアは街に帰っていった。


「早かったね」

冒険者の館に行くとアニスが翔とレイシアを出迎えた。

「アニスさん、この卵で大丈夫ですか?」

「ああ、上出来だよ」


「ミスティ王国はどうなった?」

レイシアがアニスに不安そうに聞いた。

「ああ、女王と王様が復権されて、街は平和になったらしい」

「よかった」


翔が続けてアニスに訊ねた。

「ミシェルとミケーネは?」

「ああ、オクの村に逃げていったらしい」

「そうですか」


レイシアはため息をついた。

「わがまま三昧のミシェルが、村の暮らしをやっていけるだろうか・・・・・・」

「レイシアさん、心配すること有りませんよ」

「そうだな・・・・・・」


アニスが会話に割って入った。

「そうそう、最近ドラゴンが増えて居るらしいから気をつけた方がいいよ」

「そうなんですか?」

翔が訊ねるとアニスが小声で言った。

「なんでも、北の国で封印されていたキングドラゴンが復活したらしい」

「なんてことだ!」

レイシアは机を叩いた。


「キングドラゴンってやっかいなんですか?」

翔がレイシアに聞くと、代わりにアニスが答えた。

「沢山の勇者がキングドラゴンの前に倒れたんだよ」

アニスは話し続けた。

「たしか、ミスティ王国に封印された剣で魔力を押さえられていたんだよね」


レイシアは何も言わず頷いた。

「じゃあ、僕が封印を解いちゃったんですか?」

翔がヒノキの棒に戻った伝説の剣を見つめていった。


「翔のせいじゃないよ」

レイシアはそう言った。

「でも、キングドラゴンは倒さなきゃいけないな」

「地道にレベルアップしていくしかなさそうですね」

翔も真剣な表情で答えた。


「とりあえず、10000ギル。コカトリスの卵の代金だよ」

「ありがとう」

アニスから渡された10000ギルをレイシアは受け取った。


「これでしばらく宿に泊まれますね。レイシアさん」

「ああ、翔」

翔とレイシアは宿に移動すると、荷物を下ろした。


「さて、これからどうするか・・・・・・」

「ミスティ王国に戻って見ますか?」

「それもいいな」

レイシアは頷いた。

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