第18話

夜が明けた。

久しぶりにベッドで熟睡できたせいか、翔は体が軽くなったのを感じた。

「おはよう、翔」

「レイシアさん、おはようございます」


先に目を覚ましたレイシアは、ブラックコーヒーを飲んでいた。

「翔も飲むか?」

「いいえ、大丈夫です」

翔はまだコーヒーは苦くて苦手だった。


「さて、大広間に行ってみるか」

「はい」

二人は身支度を調えると、大広間に移動した。


大広間には、王と女王が座っていた。

何やら困った顔をしている。

レイシアが訊ねた。


「どうなされましたか?」

「いや、ドワーフの村から、ドワーフの少女が誘拐されたと相談を受けたのだ」

王が答えた。

「ドワーフの村には世話になっているから、助けに行きたいのですが、丁度いい人材がいないのです」

女王が続けて言う。


「それなら、僕たちが行きましょう!」

翔が元気よく答えた。

王と女王の顔が明るくなった。


「それは助かる。レイシアもかまわないか?」

「はい、父上」

レイシアはそう言うとお辞儀をした。


「それでは、二人にはドワーフの村に行ってもらう」

「場所はレイシアが知っています」

女王がそう言うとレイシアは頷いた。

「はい」

翔とレイシアは、城を出る準備を始めた。


「ドワーフってどんな感じの生き物なんですか?」

「小柄だけど、頑丈な肉体を持っていて戦闘能力もほどほどにある」

「へー」

「さらわれたというのが気がかりだな」

レイシアはそう言って鎧を身につけた。


翔とレイシアはドワーフの村に移動した。

オクの村と反対側に歩いて行くと、獣道のような道が続いていた。

「翔、この道は時々モンスターが出るから気をつけろ」

「はい、レイシアさん」

そうはいったが、あまりモンスターに遭遇することもなく、翔とレイシアは無事ドワーフの村に着いた。


「こんにちは、レイシアです」

村長がその声を聞き、家から出てきた。

「おお、久しぶりだな! レイシア! そちらの方は?」

「翔といいます」

「そうか」


村長の目には、クマができていた。

「王から聞いたと思うが、うちの娘がコカトリスにさらわれたのじゃ」

「なんですって!?」

レイシアの言葉と翔の言葉が重なった。

「コカトリス!?」


「ああ、この近くの岩場にもコカトリスが来てしまって」

村長はそれだけ言うと涙をこぼした。

「うちの娘を救ってくれ!!」

「・・・・・・分かりました!!」

レイシアは翔を見た。翔はレイシアに頷いて見せた。


「それでは岩場に行ってきます」

「その前に、その装備では心許ない。うちの村の防具を身につけていけ」

村長はそう言うと、鍛冶屋にレイシアと翔を連れて行った。

「ミスリル製の鎧と鎖かたびらだ!」

翔がそう言うと、村長は頷いた。

「これをやろう、着てみるがいい」


レイシアと翔は着替えると少し動いてみた。

ミスリル製なのに軽かった。

「それでは、コカトリス退治に行ってきます」

レイシアと翔は岩場に向かった。


コカトリスは、岩場にいた。

その巣の中に、ドワーフの少女がいるのが見えた。

「おびき出して倒そう」

「はい、レイシアさん」


翔はヒノキの棒を変化させた、ミスリルソードを手にすると、コカトリスに躍りかかった。

コカトリスは巣を離れ、翔に襲いかかる。

その隙に、レイシアがドワーフの少女をたすけた。


「レイシアさん、歯が立ちません!」

翔はコカトリスの首を狙って剣を振り下げた。

しかし、剣ははじかれてしまう。

「翔、剣を突き刺す感じでやるんだ」

「はい、レイシアさん」


翔はコカトリスの石化の爪を器用に避けながら、その首に剣を突き刺した。

そのとき、レイシアは炎の魔法を唱える。

「バーニングソード!!」

レイシアの剣が燃えさかる。


レイシアはコカトリスの頭に、炎の剣を突き刺した。

「ぎゃああああ」

コカトリスが倒れた。


「やりましたね、レイシアさん」

「ああ、翔も強くなったな」

そう言いながら、レイシアは魔石を探した。


ようやく見つけた魔石は大きかった。

翔がそれを剣に吸わせる。


伝説の剣は、コカトリスの剣に変わった。

特殊能力で、石化と表示されている。


「やりました、レイシアさん! 剣が強くなりました!!」

「ああ、そうだな」

レイシアと翔はドワーフの少女を連れて、村に帰った。


村では、村長が首を長くして三人の帰りを待っていた。

「ただいま戻りました」

「おお! 我が娘!!」

村長は少女を抱きしめると、涙を流して喜んだ。


「レイシア、翔、ありがとう。お礼にその装備は持って行くが良い」

「ありがとうございます」

翔とレイシアは礼を言い、村を後にした。

「やっぱり、強い魔物が増えてるんですね、レイシアさん」

「ああ、そうだな翔。ドワーフの村にコカトリスが現れるなんて思いも寄らなかった」


翔とレイシアは城に戻ると、コカトリスを倒し、ドワーフの少女を救ったことを報告した。

「でかした、レイシア、翔」

「今日は疲れたでしょう、もう休みなさい」

王と女王はねぎらいの言葉をかけた。


翔とレイシアはそれぞれ、シャワーで汗を流すと部屋に戻った。

「レイシアさん、キングドラゴンを倒しに行きませんか?」

「まだ早いだろう」

レイシアは冷静に答えた。

「だって、コカトリスを倒せたんですよ!?」

「運がよかっただけだ」

興奮する翔をなだめるようにレイシアが言った。


「明日はオクの村に行ってみよう」

レイシアが言った。

「ミシェルさんとミケーネさんの様子を見に行くんですか?」

「ああ」

レイシアが頷くと、翔は浮かない顔をした。

「あんまり、会いたくないなあ」

「まあ、もう悪巧みもできないだろうから、上手くやってるか見るだけさ」


二人はもう眠くなっていた。

こうして、コカトリスの剣を手に入れた翔は、ベッドに剣を持ち込んで抱きしめて眠りについた。

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